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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第八章
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埋蔵金の説明  肆




 車はそのまま国道五十二号線をひた走り、十島駅を過ぎた辺りで富士川を渡り、稲子駅の方へ進んだ。稲子駅辺りから県道四百六十九号線に入り込み稲子川沿いを北上していく。


 向田、西ヶ谷戸、北ヶ谷戸、大田和という地名を過ぎ、上稲子という地名までくると道はかなり細くなっていた。


 更に進むと、天子七滝散策路と書かれた古びた看板が見えてきた。傍に車が止められそうな空き地がある。


 そこに車はゆっくりと停車する。


「天子七滝はこの先から徒歩で見学していくようですね」


 松子が窓から周囲を見回し呟いた。


 車から降りると、先行していた中岡編集も車から降りていた。私はそそくさと中岡編集の傍に近づく。


 そんな私と中岡編集を尻目に、穴山家の人々は車のトランクから大型バックを取り出し、その中に収められていた登山服に着替え始める。リュックを背負い、ストックを手に持ち、かなり本格的な装いだ。


「中岡様、此処からのご案内宜しくお願いしますね」


 用意が整った静子が聞いてくる。


「ええ、任せてください」


 中岡編集は張りのある声で答えた。


「では向かいましょう」


 用意が出来たのを見計らって静子が声を上げた。


 駐車場から七滝巡りに赴く道中に、朽ちた炭焼き用の石窯と、炭焼きの説明が書かれた案内板があった。


「おお、これがあの写真に載っていた看板か……」


 中岡編集は感慨深げに云った。


「この辺りで炭焼きが盛んだったのは間違いない事のようですね」


 静子も看板に視線を送りながら呟いた。


 それから私達は列になり川沿いを進んでいった。


 しかしながら道中の会話は殆ど無い。普通の家族ならお父さんがどうしたとか、お母さんがこうだったとかの会話が聞こえてきそうなものだが、そんなものは一切無かった。ただ黙々と黒い集団が列をなして進んでいくのである。極めて異質な光景だと思われた。


 更に車に用意されていた登山具は黒っぽい物ばかりである。本当に怪しい集団が渓流沿いを進んでいく感じになっていた。そんな中私と中岡編集だけが普通の服を身に纏って、借りてこられた猫のように列に混じっている。


 しばらく登っていくと最初の滝が見えてきた。滝は落差差十五メートル程あり、傾斜を流れ下るような滝だった。


「清涼の滝ですね」


 中岡編集が云った。皆は小さく頷く。


 滝となっているからには水量も多く、水が落つる場所に滝溜まりが出来ていた。その滝溜まりは一定量の水を受け止めている為か淵というか池のように見える。七面山で見た二ノ池より広い面積を有していた。


 私にはこの滝の水を受けている箇所が池と看做されたのではないかと思わずにはいられなかった。


 続いて観音の滝が見えてきた。


 細く長く流れ落ちる滝だった。この滝の落ち込む場所にも水の溜まった場所が見受けられた。


 似たように細く流れ下る不動の滝、しずくの滝、瀬戸の滝を経て、斜面を流れ下る滝ではなく豪快に落ちる滝である丸渕の滝が見えてきた。中々迫力がある。


 しかし、これだげ美しく感慨深い景観を眺め進んでいるのに、家族達は感嘆の声を上げる事はなかった。滝には興味無さそげに横目でちらっと見るだけである。


 更に進んで行くと、白炭炭と書かれた苔むした炭窯の痕跡のようなものが見えてきた。これがハイキングガイドに載っていた古い炭窯のようだ。


 どういう仕組みなのかは駐車した空き地近くの案内板に書いてあったようだが、地面にぽっかり穴が開いている。石釜の煙の抜ける穴のようだが、窯上部の石の部分に苔が生えているので説明書きがなければ動物の巣穴と間違えてしまうかもしれない。


 そんな穴を、桐子の夫、義景が身を屈め覗き込んでいた。


 炭窯は炭焼き長者伝説には関係があるが、探している龍口ではない。私は周辺の様子を確認するに留まった。



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