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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第七章
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私なりの検証  参

 み、見張られているのか……。


 私はそう感じた。いやそうとしか思えなかった。中岡編集も蒼白になりながら私の顔を見詰めている。


 私達はそれぞれフラフラと玄関から、先程座っていた場所まで戻った。そして、お互い座布団の上に、力なく尻餅を突く。


 掛け軸に書かれていた事に対する私の中の疑念が確信に近づいていく。背中に流れる冷たい汗を感じた。


「……い、今までも埋蔵金を見つけ出すことが出来なく、外部の人間を招いて、埋蔵金の場所を探させていたのかもしれないな……」


 項垂れたまま中岡編集が小さく呟いた。


「下手をしたら見つかるまで軟禁していた可能性もありますね」


 私も力の入っていない声で応える。


「……しかし、見つからない場合には、その鍵となる文言の流出を防ぐ意味合いで、解放せず殺していた恐れが……」


 中岡編集の言葉に私は全身に鳥肌が立つ。


「という事は、私達も殺される可能性が高いと云うのですか……」


「……」


 中岡編集は黙ったまま只々首を横に振る。


 救いがたいほどの暗澹たる状況だ。それでも私は少しでも前向きに考えようとする。何とか都合のいい解釈がしたいだけなのかもしれない。


「あ、あの、まだ埋蔵金は見付かっていない訳じゃないですか。見つけられなかった者は利用価値がないと判断され、殺された可能性があると思えますが、埋蔵金を見つけたとしたら殺されずに済むのでしょうか?」


 中岡編集は首を横に振る。


「仮に埋蔵金が見つかっても、結局は殺されるのは止められないだろう。家族の顔を知っている僕達を生かしておくのは盗賊団としてはリスクが高いだろうからね……」


 強張った顔で中岡編集が云った。


 そんな暗澹たる状況に置かれ、私の心には恐怖と共に憤りの心が浮かび上がってくる。


「し、しかしながら、なんでよく調べもしないでこんな怪しげな募集に応募したんですか」


 私は溜まらず云った。


「じ、次作の取材が必要だと思ったし、君が好きそうな題材だと思ったから……」


 さすがに申し訳なさそうな顔で中岡編集が呟く。


「でも、これじゃあ飛んで火に入る夏の虫ですよ、盗賊団のアジトみたいな所に入り込んじゃって……」


 私は強張った顔で訴える。


「君だって喜んで取材していたじゃないか……」


「それは確かに興味深い内容だとは思いますよ、でも命の危険を冒すような事になるなんて……」


「反省してるよ。でもこうなってしまったからには、云い合っていても仕方がないぞ……」



 私達は今や埋蔵金の事など頭の隅に消えていた。この状況から逃げ出すには、どうすれば良いのかという考えを必死に巡らせていた。


「一体、どうすれば……」


 私は溜息混じりに云った


「まず逃げ出す以前に、殺されないようにしなければならないだろう」


「私、殺されたくないないです」


 私は心から云った。


「僕だって嫌だ。君と一緒に殺されでもしたら史実と一緒になってしまう。近江屋の再現だぞ」


「……」


 こ、こんな逼迫した状況なのに、よくまあ龍馬を絡められるもんだ……。


「お、思うに、とりあえず殺されないようにする為には、あと少しで埋蔵金が見つかりそうだという状況が理想だろう。それも、我々にしか埋蔵金の在処が解らないといった状態で……」


「つまり生かしておく価値があると思わせる事が必要だという事ですね」


 私も必死に考えながら云った。


「ただ、それを匂わせるだけでは軟禁され続ける事になりかねない、そのうち埒が開かないと拷問され聞きだされた後、殺される可能性だってある」


「ご、拷問ですか……」


「ああ、そして女性の場合は性的拷問という事だってありうるぞ」


 中岡編集が強張った顔で云った。


「えっ、せ、性的拷問ですか!」


 私は恐ろしいながらも、ついつい頭の中で想像してしまう。


 皆から寄ってたかって、散々体を弄ばれて、あんな目や、こんな目にあわされ、女性としての羞恥心を激しく傷つけられ……。


 想像して蒼白になっている私の顔をまじまじと見ながら中岡編集が云った。


「……い、いや、良く考えたら性的拷問は無い気がする。多分普通の拷問だ」


「なぬ?」


 今の云い回しは、まるで私が女としての魅力が無いような云いざまだぞ。


「まあ、その件は置いておいて、生かしておく価値があると思わせつつ、隙を付きなんとか警察に助けを乞うしかない。殺されそうだから助けてくれ、と……」


 何か腑に落ちないがが、今、そこを追求しても仕方が無い。



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