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愛しい旦那様、裏切りが事実なら辛くても別れます。  作者: もも


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7 父の怒り

読んでいただきありがとうございます。また長くなってしまいました。

誤字報告ありがとうございます。

 「実は娘宛に君が浮気をしているという匿名の手紙が何通も届いていた。私の所で止めようと思っているのだがここで燃やしてもどうしてか手に渡ってしまうのだ。裏切り者が近くに入り込んでいるが悔しいことに正体が掴めていない。家より力のある諜報がアレクシアに接近していると思われる。

君は治癒師と親しくしていたようだね。話は聞いている。本当ならアレクシアと話させた方が良いのだろうが今は無理だ。これ以上傷つくのを見過ごす訳にはいかない。私は娘が可愛い。

君にとって不利なことは分かるが、娘を泣かすような男を近づけるつもりはない。君のことは期待していた。残念だよ、婿として失格だ。


どうして無理やりでも遠ざけなかったのだ。部下から何度も言われたんじゃないかな。妻がいる身で息子も出来ていると。


ここに離婚届がある。アレクシアのサインはさせてある。君の家の同意も貰った。宮廷には君の帰る場所はない。頑張って戦争に行ってくれたからそれなりの物は用意したよ。これで生き直してくれると嬉しい」


と言ってずっしりとした金貨の入った袋を渡された。


「私はお役御免ということでしょうか。妻に誓って疚しいことはしておりません。身の潔白は周りで見ていた者が証明してくれると思います。記憶が無くなったからといって、心の底から愛している妻を裏切るようなことはしていません」


「頭が良かったはずなのに打ったから弱くなったのかな?お守りに魔法石が入れてあったと聞いたが守られたのは外傷だけだったのか。戦場なのにずっと見張っていられる理由もないだろう。

宝石は君の方から手放したんだよ。拾ったのは道端の屑石だ。女の自白次第では明日にでも出て行って貰う。屑石に会いに行くのは勝手だが二度と顔は見せないでくれ、いいね」


「例え記憶がなくても妻以外は女性だと思ったことはありません。先程顔を見て分かりました。女神はこの人だと。それに屑石を拾ったつもりもありません」


「ではどうして側に近寄らせたのだ」


「勝手に側にいたのです。何度も遠ざけようとしましたが、聞き入れなかった。ただそれだけです」


「近寄らせたのが間違いだったのだ。消せばよかったものを、何故しなかった?それが大きな失敗だ。仮にもしそうだとしてそれをどうやってアレクシアや皆に証明する?何をしていたかなど誰にも分からない」


「あまりにも多くの命が儚くなって手に掛ける気にならなかっただけです。そこに情などありません。なんなら自白剤を飲みます。どうか挽回のチャンスをください。これから消してきます」


「消すのは薬を使って女に自白させてからだ。勝手に手を下すのは許さない。いいね。今日は客間に泊まるのを許そう。見張りをつける。アレクシアに近付くのも駄目だ。君に自白剤を飲ませるかどうかはそれから決める。あれは副作用が強い」







 セドリックはルイという青年に教えられた事を思い出しながら、客間に案内されるまま泊まることにした。豪華な食事と酒が用意されていた。

ぼんやりとした頭で考えてもやはり見知らぬ場所だった。





 自分はセドリックという名前でハサウェイ伯爵家の婿だそうだ。宮廷で宰相室に勤務していたらしい。宰相に目をかけられ姪である妻と結婚し幸せそうだったと。

戦争が起き貴族家や平民からも兵士を募るようになり、騎士達と出征した。


間抜けにも相手の弾を何とか避けて転び頭を大きな石に打ち付けた。外傷は大したことはなかったが記憶を無くした。救護所に女性治癒師がいてどうやら目をつけられたようだった。


清純そうに見えるその女は高位貴族が来ている戦場で男漁りをしていたらしい。それに目を付けられたのがセドリックという訳だ。


側に来るのをもっと強く拒否すべきだったのだ。最初は既婚者だと知らなかったかも知れないが、それでもいいと開き直ったようで、しょっちゅう容態を見るという口実で来るようになった。


男だらけの戦場でビッチだったその女は、記憶をなくし一番落としやすそうなセドリックに狙いを定めると近づいて来た。己とは反対の清純さをアピールしたのだ。


傍で見ていたルイでさえ大根役者だと思えるのに、何故気が付かないのか不思議に思ったそうだ。

あのアレクシア様が妻だというのに、何故正体に気が付かないのかと歯ぎしりをしていたと教えてくれた。

主は奥さまのことを忘れてるからなとルイは遠い目になったと言っていた。


セドリックは気が付かないのではなく、部下から聞く妻にしか関心が無かっただけだった。それが傍から見たら隙があると思われ奥様を蔑ろにしているという噂になった。誰かがそれを上手に利用して嵌めたということだろう。

ぼんやりしていた頭がクリアになりつつあった。


自分だけならともかく妻を泣かせるなど許さない。たとえ縁を切られても敵は排除しようと心に誓った。





☆★☆



 有能な騎士の中には戦うことが好きな奴もいた。それに反して自分は何時も神経を尖らせながら剣の才能もないのに戦ってきた。それでも深手を負わなかったのは魔法石の入ったお守りがあったからだ。



 アレクシアは政略だったが素晴らしい女性だったという。上司の姪で入婿だったが、偉ぶったところもなくお守りまで作って持たせてくれた。出征するときは泣いていたと部下が教えてくれた。

心の底から妻を愛していたと思うのに何故もっと強く拒否しなかったのだろう。さっき言われた義父の言葉がセドリックの心を鋭いナイフで抉った。



心の中の柔らかな場所が精神的な癒しを欲しがったのだろうか。部下の騎士が見ているのに報告が行かないと思っていたところが、愚の骨頂だし正常な状態ではない。

自分はこの失敗を挽回できるのだろうか。義父は何もかも見透かしたような目でセドリックを見ていた。背中に冷や汗が流れていた。



妻はとても綺麗な人だった。迎えに出てくれたのに直ぐに足を翻したのは、自分の不用意な一言だった。きっと誤解をさせてしまったのだろう。あれで余計に傷つけてしまった。



このまま女を殺したら何処か遠くに行ってしまおうか。目立たないように暮らせば贖罪にはなるだろうか。記憶が戻った訳では無いが、徐々にに分かることも増えた。

女は娘を愛している伯爵が許す訳もないので行く末は決まっている。自分がその役目を担いたい。


記憶が戻れば愛しいアレクシアから離れるのは身を切られるように辛いだろうが今はまだ実感がない。

戦争が無ければこんなことにはならなかったのにと思うが、全て自分が引き寄せたことだ。大人しく諦めよう。


セドリックは食欲もわかないまま、ベッドに横になると目を閉じた。






☆★☆





「アレクシア、涙は止まったか?勝手に決めて悪かった。愛しているのはお前だけだとほざいていたがな。どうやって証明するか聞いたら自分にも自白剤を飲ませてくれと言っておった。女に自白剤を使って全てを明らかにしてからだが、もう奴のことは忘れてしまいなさい」


「そうですか、セドリック様のことは諦めますわ。昔のあの人はもういないのですね。自分の立場は分かっております。自白剤は後遺症が酷いのですよね。なるべく使わないでいてあげてください。

不幸になって欲しい訳では無いのです。

戦争が悪かったのですわ。普通に暮らしていれば起きなかったことですわ。でもよく事故に遭う人ですわね。せっかく作ったお守りが効きませんでしたわ」

そういうとまたポロポロと涙を流した。


「これからのことは様子を見て決めよう」


「お父さま、本当に手をお出しにならないでくださいませね。仮にもウイリアムの父親なのですから」


「心配するな、手は出さない。見張りもつけている。下手なことをしない限り無事だ。女は消すがな」


「安心いたしました。ごみは目に入れたくもありませんでしたから」


「だからもう泣くな、目が腫れていたら心配になる。我が家を嵌めようとした輩は潰すのみだ」


どこまでも味方である父の言葉にアレクシアは胸が熱くなった。







アレクシアパパは奥様と娘たちを溺愛しています。腹黒の渋いイケオジです。セドリックは挽回できるでしょうか。

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