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愛しい旦那様、裏切りが事実なら辛くても別れます。  作者: もも


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3 一筋の希望

読んでいただきありがとうございます

 セドリックはずっと魘されていた。痛みが酷いのだろう。ハサウェイ伯爵が連絡を取ってから二時間ほどでブライアン先生が来てくれた。

「急なお願いにもかかわらず来ていただきありがとうございます。脚が折れていて高熱が続いておりまして、意識がないのです」

コーンウェル伯爵が縋るように言った。


「さっきまで騎士の怪我を診ておりましてな、丁度手が空いたところで良かったです。王族でも診ていたらこちらには来られませんでしたからな。どれ、包帯を取らせてもらうよ。うん、綺麗に縫ってある。もう一度こちらの薬を塗っておこう」


「先生、消毒はしたのですがそれだけでは駄目だったでしょうか?」

伯爵家の医師ロビンが聞いた。

「化膿止めが入った新薬が手に入ったのだよ。飲む用と塗るようがね。これで破傷風菌が死ねば良いのだが。これで間を空けて薬を飲ませてあげてください。

出回っている物よりきついですがよく効くはずです。痛み止めも二回分置いて置きますので夕方と明日の朝飲ませてあげてください。これで様子を見ましょう。変化があれば連絡をください」


「なんとお礼を申し上げたら良いのか分かりません。診察代はおいくらお支払いすれば良いのでしょうか?」


「薬がかなり高いのですよ、五万ルピアくらいでしょうか」


「ジル、急いで金貨を持ってきなさい」コーンウェル伯爵が家令に言いつけた。


「もっと出回るようになれば助かる命が増えるのですがね。ロビンしっかり診察して差し上げるのだぞ」


「はい、こんな状況ですが先生に思いがけずお会いでき嬉しいです。久しぶりに先生の処置を拝見できて感激しました」


「学生のころよりかなり腕が上がったね。これからが楽しみだよ。私も会えて良かった。こんなことでもないと中々会えないが、まあそれも医師の運命だ。相談があれば何時でも来なさい」


「ありがとうございます。これからも医療の道を極めたいと思います」

ロビン医師は拳を握り締め恩師を見つめた。


隣室で控えていたアレクシアは侍女からブライアン先生が帰ると聞いて挨拶をしようと部屋から出てきた。


「先生、この度は無理を聞いていただきありがとうございました。なんとお礼を申し上げてよいやら。わたくしセドリック様の婚約者のアレクシアと申します」


「ああ、宰相の姪御さんだね。目の辺りが似ているな。顔色が悪いよ、眠れてないんだろう、ハーブティーを飲んで少し休みなさい。大丈夫だ、持ち直すから」


「本当でございますか?先生、ありがとうございます」



ほっとしたアレクシアはブライアン医師に深々とお辞儀をすると、もう一度セドリックの様子を見に部屋に入って行った。

痛みで歪んでいた顔が少し穏やかになったような気がした。


熱もやや下がった気がして思わず手を握ってしまった。


「まだまだですわね。ブライアン先生が大丈夫だと言ってくださったのですが、心配なのでこのままセドリック様の側に居させてください」


「どうぞ、構いません。宮廷で扱われる新薬で息遣いも大分穏やかになられました。峠は越えたと思います。ブライアン先生が来てくださって良かったです」


「多分王族の方専用なのでしょうね。持っておられて良かったですわ」


「奇跡のようなタイミングだと思います」


「本当にありがたいことですわね」


「良いつながりがあって良かったですね」柔らかな口調でロビン医師が言った。






 もう一度見直すと、顔色が大分良くなって呼吸が楽そうになったセドリックが眠っていた。

「もう峠は超えました、良かったです。後は脚をゆっくり治すことです」


「良かった・・・」安心したアレクシアは力が抜けそうになった。

慌てて身体を支えたロビン医師が

「そこへ座って休憩してください」

と言って椅子を勧めてくれた。

アレクシアはベッドの側の椅子に腰を下ろした。


それを見たメイドは

「急いで旦那様にお知らせしてから、ハーブティーをお持ちしますね」と言って出て行った。



 それからセドリックの意識が戻ったのは三日後だった。瞼がピクピクしたと思ったらゆっくり開けられた目がアレクシアを捕らえた。

「いっ痛っ。僕は怪我をしたんだろうか?体中が痛いし脚が特に痛い」


「街中で馬車が何かにぶつかり横倒しになったと聞いています。御者は亡くなってしまいましたのではっきりとしたことは分からないままです。かなり重症だったのですよ。意識が戻られて良かったです」


「ずっと看病を?ありがとう。水を貰ってもいいだろうか」

と言うので急いで水差しに入っていた水をコップに入れ渡した。


「起きれますか?」


「クッションを背中に当ててもらえれば大丈夫そうだ」


手渡した水をごくごく飲むと生き返ったような顔をした。


「何か柔らかいものを召し上がりますか?」


「ああ、お願いしたい」


ロビン先生に聞くと最初は具の少ないスープからだと言われコンソメスープが用意された。


こうして少しずつセドリックは奇跡的に回復に向けて歩みを進めることになった。


5万ルピアは五百万くらいです。なにせ新薬なので高いのです。現代と一緒ですね。

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