第92話 裏社会のドンとの交渉開始!最強の交渉役はビビ(元貧乏神)です
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庭に立てたテントの中。
俺は「カイザー・インダストリー」のアジア統括責任者、リュウ・ロンと対面していた。
彼の背後には、屈強なSPが立っている。雰囲気からして、交渉に失敗すれば命はないという殺伐とした空気だ。
「フッ……。佐藤様。早速ですが、我々が貴方の技術を高く買いましょう。オリハルコンの生産ラインを、我々に独占させていただけませんか?」
リュウ・ロンは、葉巻の煙を吐き出しながら、一枚の小切手をテーブルに置いた。
そこに書かれた額は、**百億円**。
「さすが裏社会のドン。スケールが違いますね」
俺は鼻で笑った。金はもう腐るほどある。
しかし、交渉は受けて立つ。
俺が求めているのは、金ではない。**「面白さと、平穏」**だ。
「報酬の前に、まず貴方の提示する『汚れたビジネス』の価格を査定させていただきます」
俺は隣に座っているビビに目配せをした。
ビビは緊張で顔が青い。初めての本格的なビジネス交渉だ。
「あ、あの……わ、私がやるの?」
「ああ。ビビの『値切りスキル』が、この交渉の切り札だ。存分に働け」
ビビは意を決し、リュウ・ロンを見つめた。
「こ、この人……すごく**『お金への執着』**が強い! こんな人からお金を貰っちゃダメ!」
ビビはそう感じた瞬間、彼の「お金への執着」という心の汚れを、無意識のうちに**『厄』**として吸い取り始めた。
リュウ・ロンは、突然、体の力が抜けたような顔になった。
「うむ。何やら体が軽いような……気のせいか? よし、報酬の話だ。百億円では不満か? では、二百億――」
リュウ・ロンが「二百億」と口にした瞬間、ビビの「強制値切りスキル」が発動した。
「い、いや、その、私どもとしては、**百億円もいりませんで……**」
リュウ・ロンのSPが突然、口を挟んだ。
SPは焦って、上司のセリフを打ち消そうとしている。
「な、何を言う!?」
「いえ、その、どう考えても、佐藤様の技術には**百億円も出す必要はない**かと……。せいぜい、**二億**が妥当かと……」
リュウ・ロンは怒鳴りつけたが、SPはなぜか論理的な計算しかできなくなっている。
俺はニヤリとした。
「ほう、二億ですか。妥当ですね」
(続く)
裏社会のドンとの交渉がスタート。
ビビの「貧乏神の残滓=強制値切りスキル」が炸裂し、報酬が百億→二億に強制ダウンしました。
最強の交渉術は、汚れた欲を消すことにあるようです。
次回、リュウ・ロンが、金銭報酬ではなく「裏社会の汚れ」の処理を依頼してきます。




