第90話 【エンチャント】で「疲労回復キャンディ」を開発!激務の官僚が中毒になります
3話更新の2話目です
「マナ・キャンディ」が完成したが、そのまま食べても魔力が回復するだけで、実用性には欠ける。
もっと手軽に、日常生活で使えるものにしたい。
「主様、ここは『疲労回復』の魔法を付与しましょう。現代の過労社会に必須のアイテムです」
リサの提案に、俺は賛成した。
ターゲットは、西園寺さんだ。
「あの人、いつも疲労困憊だからな。このキャンディで救ってやろう」
俺はマナ・キャンディを小さな飴玉に加工し、【エンチャント】を施した。
付与するのは『完全疲労除去』と『活力増進』。
「――【エンチャント】、疲労回復」
完成した飴玉は、見た目は普通のレモンキャンディだが、中身は古代ポーションの比ではない。
◆
内閣府の地下執務室。
西園寺さんは、またもデスクに突っ伏して眠っていた。
俺は静かにテレポートし、机の上にキャンディを置いた。
「ん……? 誰ですか? ……あ、佐藤様」
西園寺さんがゾンビのように目を覚ます。
「お疲れ様です。疲労回復のキャンディです。どうぞ」
「キャンディ……? そんな子供だまし……」
彼女は半信半疑で、口の中に放り込んだ。
ゴリッ。
その瞬間。
彼女の目の下のクマが消え、髪にツヤが戻り、顔がパァッと輝いた。
「な、なんですか、これ!? 疲労どころか、昨日までの睡眠不足の痕跡まで消えた!?」
彼女は立ち上がり、そのまま軽やかにターンした。
その顔は、まるで入社一年目の新入社員のようにエネルギッシュだ。
「これ、マッサージよりも即効性があります! すごい……!」
「まあ、マナ・キャンディなんで。疲労の汚れを魔力で浄化してるんですよ」
彼女はマグネットのようにキャンディに吸い寄せられた。
「お、お願いです! これをすべて私に売ってください! これさえあれば、日本の公務員は全員、定時に帰れるようになる!」
「いや、これは西園寺さん専用ですよ。増産はしません」
俺が突き放すと、彼女は子犬のような目で俺を見上げた。
「わ、分かりました……。では、また作っていただけますか? 私、これなしではもう生きていけません!」
俺は笑顔で頷いた。
これで政府のエリート官僚のライフラインを、また一つ掌握したことになる。
(続く)
【エンチャント】ポーション、完成です!
疲労回復キャンディは、激務の官僚を救う最強のアイテムになりました。
西園寺さんは、もはや主人公なしでは生きていけない体になってしまったようです。
次回、平和な日常に戻ろうとした主人公の元に、新たな敵が接触してきます。




