第86話 アイドル・アイリ、豪邸に引っ越すも「やることがない」究極スローライフの弊害
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アイリさんの引っ越しは、事務所も最終的に折れた。
最高の食材と最高の環境、そして俺の魔力によるコンディション管理は、国民的アイドルの健康維持に不可欠、という屁理屈で通したらしい。
引っ越し当日。
アイリさんは大量の荷物を持ってきたが、佐藤がそれを一瞬で【アイテムボックス】に格納し、必要なものだけを魔法で配置してくれた。
「すごい……! これがチートハウス!」
アイリは感動したが、すぐに不満そうな顔になった。
「ねえ、佐藤さん。私、家で何したらいいの?」
「何って……好きなことをすればいいんじゃないですか」
「それが問題なのよ!」
彼女の不満は、この家が**あまりにも完璧すぎる**ことだった。
**【クリーン】**:家は一瞬たりとも汚れない。掃除は不要。
**【エンチャント】**:服は常に清潔でシワ一つない。洗濯は不要。
**【自動収穫】**:庭のダンジョンから、食材は自動で運ばれてくる。収穫は不要。
「私はアイドルの前に人間なのよ! 働かせて!」
「ガイルは掃除用具の管理係、リーリアはフィアナの教育係という仕事を見つけていますよ?」
俺は優雅にコーヒーを飲みながら言った。
俺の家では、**「労働」**は最も価値のあるものとされている。
「……くっ。じゃあ、私は**『佐藤さんのお世話係』**になるわ!」
「それはスズの仕事です」
アイリさんは悔しそうに唸り、結局、スズと共に**料理の修行**に励むことにしたのだった。
(続く)
究極のスローライフを謳歌する主人公と、労働意欲の高いアイドルの衝突。
この家では「暇」こそが最も大きな弊害かもしれません。
アイリさんの居場所は、料理の腕を磨くことで見つかるのか?




