第73話 神が出した「異次元の魔力汚染」という難題を【リペア】で一瞬で直してやった
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『ふ、ふざけるな! 貴様のその傲慢な態度は……!』
神の使者である光の球体が激しく明滅する。
だが、その威嚇にも俺は動じなかった。
「話が通じないなら、もういいです。さっさと帰ってください」
「サトウ殿、いけません! 相手は神です! ここは低姿勢に……!」
ガイルが慌てて小声で忠告するが、もう遅い。
使者は深いため息のような波動を放った。
『よかろう……貴様を力でどうにかすることは、地球の結界にさらなる負荷をかける。これは本意ではない』
『ならば、条件を出そう。貴様が我々の抱える問題を一つ解決するならば、しばらく貴様のシステムを黙認する』
「問題? 俺に解けるんですか?」
『貴様の力なら可能だ。今、とある異世界で「次元の亀裂」から、世界を腐敗させるほどの汚染魔力が溢れ出し、巨大な「魔力の壁」を形成している』
使者は映像を見せるように、リビングの空間に汚染された紫色の巨大な壁を投影した。
その壁は、一見すると魔王軍が作った強固な結界のようだ。
『これを修復し、魔力の流出を止めよ。修復には数百年かかる。貴様がそれに費やす間、地球の魔力は安定するだろう』
神は、俺を異世界での労働に縛り付けようとしたのだ。
「なるほど、これですね」
俺は、壁の映像をじっと見た。
魔力は腐敗し、汚染されているが、もともとは**「無害な魔力」**だったことがわかる。
つまり、これは**「劣化した物」**だ。
「これ、数百年もかかりませんよ」
『なに?』
俺は指を一本立て、光の壁に触れた。
そして、俺の持てるすべての魔力を込めて、最も得意な魔法を発動した。
「――【リペア】、劣化復元」
ドォン!
音もなく、紫色の壁は一瞬で白く澄み渡った光に変わり、元の綺麗な魔力に戻った。
修復ではない。**「劣化する前の状態に復元した」**のだ。
修復後の綺麗な魔力は、次元の亀裂の漏洩箇所を塞ぎ、壁はそのまま消滅した。
リビングには、元通り、何もない空間が残された。
『……ば、馬鹿な! 数百年かかるはずの難題が、一瞬で!』
「ほら、掃除完了です。これで文句ないでしょ? じゃあ、俺は寝ますんで」
俺は使者の返事を待たず、布団へと向かった。
使者の光は、赤く点滅しながら、やがて消滅した。
神の使者も、俺の「掃除」の定義を理解できなかったようだ。
(続く)
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