第63話 魔王軍の残党が現れましたが、装備が汚かったので【洗濯】して無力化しました
3話更新の2話目です
浄化された森を進むと、前方の茂みがガサガサと揺れた。
現れたのは、全身を黒い鎧で覆った兵士たちと、彼らに使役されているオークの群れだ。
魔王軍の残党だ。
「なんだ貴様らは! 瘴気が晴れたのは貴様らの仕業か!」
「人間と……裏切り者の王女か! 殺せ!」
問答無用で襲いかかってくる。
ガイルが剣を抜いて前に出ようとした。
「姫様、下がってください! ここは私が……」
「いや、いいよガイル。下がってて」
俺はガイルを手で制した。
彼らの装備を見る。
黒い鎧は、血と泥と油でギトギトに汚れ、悪臭を放っている。
剣も錆びついてボロボロだ。
「……うわぁ。手入れしてないな」
道具を大事にしない奴は嫌いだ。
それに、あんな汚いもので斬りかかられたら、こっちの服まで汚れてしまう。
「まとめて洗ってやるよ。――【クリーン】&【リペア(分解)】」
俺は指を鳴らした。
対象は「彼らの装備」。
カシャン! カシャン! パラパラパラ……。
突如、兵士たちの鎧が、留め具が外れたようにバラバラと崩れ落ちた。
錆びついた剣は、刀身と柄が分離して地面に落ちる。
そして、それらのパーツから汚れが一瞬で消え去り、ピカピカの鉄屑となって積み上がった。
「えっ?」
「な、なんだ!? 鎧が!?」
残されたのは、下着姿の兵士たちと、素っ裸のオークたちだけ。
戦場の空気が凍りつく。
「な、何をした!? 魔法か!?」
「ただのメンテナンスだよ。……ほら、君たちの体も汚れてるから」
俺はついでに、彼らの体にも【クリーン】をかけた。
戦意を高揚させていた「興奮剤」の成分や、体臭、垢あかが綺麗さっぱり洗い流される。
「……あれ? なんか、スッキリした?」
「戦う気が……起きない……」
「お風呂入りたい……」
身も心も(装備も)丸裸にされた残党たちは、その場にへたり込んでしまった。
戦意喪失だ。
「な、なんという……」
ガイルが剣を持ったまま震えている。
「血を一滴も流さず、敵を無力化するとは……。これが、サトウ殿の戦い方……」
「いや、戦ってないし。汚いから洗っただけだし」
俺たちは、パンツ一丁で賢者タイムに入った残党たちをロープで縛り上げ、森の奥へと進んだ。
次はいよいよ、この騒動の元凶である「呪具」と「世界樹」だ。
(続く)
敵の装備を分解・洗浄して無力化。
リサの時と同じ戦法ですが、集団相手だとシュールさが増しますね。
「戦う前に身だしなみを整える」のは大事です。
次回、森の最深部へ。
枯れかけた世界樹を、日曜大工感覚で治療します!




