第62話 エルフの森に行ってみたら、空気が悪かったので「業務用オゾン脱臭」レベルで浄化しました
3話更新の1話目です
翌日。
俺、フィアナ、ガイルの三人は、リビングに集まっていた。
他のメンバーは留守番だ。今回は「出張掃除」なので、少人数の方が動きやすい。
「では、行くぞ。ガイル、森の場所のイメージを頼む」
「う、うむ。地図と私の記憶があるが……本当にここから移動できるのか?」
「任せとけ」
俺はガイルが広げた地図と、彼から聞いた座標情報を脳内で統合した。
ウーナの技術で強化された【テレポート】は、行ったことがない場所でも「鮮明な情報」があれば飛べる。
「――【テレポート】」
ヒュンッ。
景色が一瞬で切り替わった。
◆
「……到着だ」
目を開けると、そこは鬱蒼とした森の中だった。
だが、空気が重い。
空は紫色の雲に覆われ、木々はどす黒く変色している。息をするだけで肺が痛くなるような瘴気だ。
「ゴホッ、ゴホッ! ひどい……森が泣いてる……」
「なんと……私が離れている間に、これほど汚染が進んでいたとは……」
フィアナとガイルが顔をしかめる。
どうやら、魔王軍の残党が撒き散らしている「呪いの瘴気」らしい。
普通の人間なら即死レベルの毒気だ。
「……臭いな」
俺は鼻をつまんだ。
毒とか呪いとか以前に、単純にカビ臭くて不快だ。
掃除屋として、この環境は見過ごせない。
「とりあえず、換気するか」
俺は空に向かって手を掲げた。
イメージするのは、部屋の空気を入れ替える換気扇。そして、空気中に漂う微粒子レベルの汚れ(瘴気)の吸着・消滅。
「――【クリーン】、広域空気清浄」
ブォォォォォォッ!!
俺を中心に、透明な突風が巻き起こった。
風は森全体を駆け巡り、紫色の靄もやを次々と吸い込んでいく。
掃除機が埃を吸うように、瘴気が一点に集まり――そして、俺の手のひらの中でパチンと弾けて消滅した。
数秒後。
そこには、高原のように澄み渡った青空と、キラキラと輝く緑の木々が広がっていた。
「「……は?」」
フィアナとガイルが口を開けて固まっている。
深呼吸してみる。うん、美味い空気だ。マイナスイオンを感じる。
「よし、まずは玄関(入り口)の掃除完了だ。……さて、奥に行くか」
俺が歩き出すと、ガイルが震える声で呟いた。
「……数百年かけて蓄積された呪いを……換気だと……?」
どうやら彼らはまだ、俺の「掃除」の定義を理解していないようだった。
(続く)
エルフの森に到着。
まずは挨拶がわりの【クリーン】です。
呪いの瘴気も、俺にとってはただの「汚れた空気」に過ぎません。
次回、綺麗な空気に誘われて(?)、害虫たちが寄ってきます。
魔王軍残党とのファーストコンタクトです!




