第61話 エルフの戦士長も日本に染まるか?そして語られる『エルフの森』の深刻な危機
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夕方。
ガイルはリビングのコタツに座っていた。
風呂に入り、スズに用意してもらったジャージに着替え、見た目は完全に日本のダメ人間予備軍だ。
風呂上がりで冷たい緑茶を飲んだ彼は、「……あ、美味い」とポツリと呟いた。
「どうですか、ガイルさん。温かい風呂と、キンキンに冷えた緑茶は」
「くっ……これが、貴様の『邪悪な術』か! だが、私は負けん!」
彼はまだ抵抗しているが、表情はかなり緩んでいる。
リサが作ったハンバーグを前に、鼻腔をピクピクさせているのが俺にはわかった。
「ガイル、早く食べなさい。美味しいわよ」
フィアナがハンバーグを差し出すと、ガイルはプライドと空腹の葛藤の末、観念した。
「い、いただきます……(カプッ)」
その瞬間、ガイルの目が大きく見開かれた。
「な、なんだこの肉料理は!? これほどの魔力と、滋養に溢れた食べ物がこの世に……!」
「ふふん。リサの得意料理、ハンバーグよ」
彼はまるで修行僧が悟りを開いたかのように、黙々とハンバーグを食べ始めた。
「さて、お腹も落ち着いたところで、真面目な話をしませんか?」
俺が言うと、ガイルは神妙な顔つきに戻った。
「わかった。私は貴様の力に敗れた。聞きたまえ、人間。エルフの森は今、深刻な危機にある」
彼の話は重かった。
魔王は倒されたが、その残党が森の深部に潜り込み、禁断の呪具を使い始めたという。
それが、森の精霊の力を弱体化させ、フィアナの治癒魔法がなければ対処できないレベルにまで危機が迫っているらしい。
「魔王軍残党の呪具か……それは『不潔なもの』ですね」
「……不潔?」
ガイルは戸惑った顔をした。
「俺は、汚いものを見ると掃除せずにはいられないんです。その『呪具』とやらが、俺の平穏を脅かす『汚れ』であるなら、掃除しに行く必要がありますね」
「貴様、まさか一人で魔王軍残党の根拠地に!?」
「テレポートで行って、クリーンで一掃してきます。ものの5分で終わりますよ。……フィアナ姫は、そこでポテチでも食べていてください」
俺が立ち上がると、ガイルは感動で身動きが取れなかった。
こうして、世界最強の掃除屋は、エルフの森のトラブルを『年末の大掃除』と位置づけ、新しい戦場へと向かうことを決めたのだった。
(続く)
エルフの戦士長、見事に現代文明に堕落しかけました。ハンバーグの力は偉大です。
主人公も、自分の平穏を守るため「エルフの森のトラブル」を『巨大な汚れ』として認識しました。
いよいよ、異世界への出張お掃除編の開幕です!
「魔王軍残党の呪具」は、生活魔法で簡単に片付くのでしょうか?




