第58話 練馬区の「平凡結界」が、スパイの脳内の『不純な野心』を掃除しました
4話更新の4話目です
自宅が世界中のスパイの標的になった今、家の防衛力強化は喫緊の課題だ。
「ウーナ、海底都市の『認識阻害ドーム』の知識を教えてくれ」
『いいわ。あれは、対象の脳に「平凡」という概念を直接植え付けるのよ』
ウーナの古代知識は、俺の結界理論を根底から覆した。
普通の結界は「見えなくする」だけだが、彼女の技術は、**「対象の脳のフィルターをいじる」**というものだ。
俺は【生活魔法】の核となる【クリーン】に、その原理を融合させた。
イメージするのは、侵入者の脳内に巣食う**「強すぎる野心」「悪意」「権力への執着」**といった**『精神的な不純物(汚れ)』**を、根こそぎ消し去ること。
俺は練馬区全域に張った結界に、その原理を【エンチャント】で付与した。
「よし、【クリーン】応用型の結界、これで完成だ」
数日後。早速、効果を試す客が来た。
海外の諜報機関のエージェントだ。彼らは練馬区に到着し、俺の自宅の前に立った。
エージェントA: 「……ここが、世界を救う狐仮面の根拠地か」
エージェントB: 「静かすぎるな。何か結界が……」
その瞬間、結界が発動した。
エージェントA: 「……いや、なんだか**普通**だぞ」
エージェントB: 「ああ。すごく**普通**の住宅街だ。さっきまで世界機密だと思っていたが、冷静に考えると、こんなところで世界を救う人間がいるわけがない」
彼らの脳内から、非日常的な野心が急速にクリーン(浄化)されていく。
エージェントA: 「そうだな。むしろ、この『普通』に感動した。こんな平穏な暮らしこそ、我々が守るべきものだ」
エージェントB: 「……思えば、私はなぜあんな危険な仕事をしてたんでしょうね? 安定した職に就きたい」
なぜか感動したエージェントたちは、なぜか俺の家の庭の草むしりを手伝い始め、**「やっぱり普通の生活って最高ですね!」**と叫んで、笑顔で帰っていった。
門には何やら置き土産が……**世界最高峰のウイスキー**と、**最新の芝刈り機**だった。
「なんか、結界が勝手に『おもてなし』を始めたぞ」
俺は呆れた。
**【精神の汚れを浄化する】**という結界の力が、スパイたちから「攻撃衝動」を奪い、「平和な暮らしを追求したい」という**究極の無害な欲望**を与えたらしい。
「よし。これで、俺の平穏な日常は完璧に守られた!」
俺は笑顔で芝刈り機を受け取り、庭の芝生を刈り始めた。
世界最強の結界は、今日も練馬区の平和を守っている。
(続く)
最強の防衛システム、その名も「平凡エンチャント結界」。
侵入者を「良い人」にして帰してしまう、平和すぎるシステムが完成しました。
ウーナの古代知識が、主人公の生活魔法をまた一段上のチート領域へ押し上げましたね。
次回、平穏になったのも束の間。
今度はフィアナの故郷である「エルフの森」から、フィアナを探して使者がやってきます!




