第55話 海底都市の管理者(人魚)を連れ帰ったら、アイドルの「歌」に感動して、地上への移住を決めました
4話更新の1話目です
海底都市アトランティスの知識を学ぶため、俺はウーナを地上に連れ出すことにした。
もちろん、人魚の姿では目立つ。
「ウーナ、【エンチャント(一時変身)】だ」
『え? 人間になれるの?』
俺はウーナの尾ヒレに触れた。
【人化の魔法】ではない。【生活魔法】による**「分子構造の一時的再構成」**だ。
尾ヒレが光に包まれ、やがて水着を着た人間の足に変わった。
髪の色はそのままの、美しい青髪の少女だ。
「わぁ……歩ける!」
生まれて初めての体験に、ウーナは感動していた。
そして俺は、都市全体に**「認識阻害の結界」**を施した。
これで、ここを探知できる者は、魔王軍でも政府でも誰もいなくなった。
「よし、地上へ帰るぞ」
佐藤家の客室。
ウーナは、カップ麺とシャワーに感動していたフィアナよりも、さらに純粋な反応を見せた。
「水が出た! しかも暖かい! 水の精霊の加護があるの!?」
「ただの給湯器だよ」
そして、決定的な一撃は、リビングでの出来事だった。
アイリさんが、自分のコンサート映像をテレビで流した。
アイリさんの歌声が、クリアなスピーカーを通して響き渡る。
『……っ、綺麗……』
ウーナの瞳から、大粒の涙がこぼれた。
「この音は……生命の波動を揺さぶる。私の国の**『癒やしの歌』**に似ている。でも、もっと……感情が豊かだわ」
「アイリさんの歌は、聞いてる人の心を元気にするからな」
数千年の孤独を抱えてきたウーナにとって、現代日本のアイドルが歌う「愛と希望」の歌は、計り知れない衝撃だったらしい。
涙が止まらないウーナは、絞り出すように言った。
『私……この世界に残りたい。この歌がある世界を、守りたい。……サトウ、この足、元に戻さないで』
「お、おう」
こうして、佐藤家には、人魚のウーナが五人目の(?)家族として加わることになった。
彼女の持つ古代知識は、俺の生活魔法をさらにチートな領域へと進化させるだろう。
(続く)
エルフのフィアナに続き、人魚のウーナちゃんが仲間に加わりました!
人魚にとっての文明ショックは「アイドルの歌」でした。
古代の知識を持つ彼女が加わったことで、主人公の魔法がどう進化するのか、ご期待ください!
次回、人魚の古代知識で「スマホ」を超チートな通信機に改造します。




