第51話 【1月3日】こたつに「快適維持」を付与して、一歩も動かない最強の寝正月を過ごします
4話更新の1話目です
一月三日。
三が日最終日。俺たちの目標は一つだった。
「絶対に、このコタツから出ない」。
そのために、俺は全力を出した。
まず、コタツそのものに【エンチャント】。
『温度一定』『足の臭い消去』『腰痛防止』。これで何時間入っていても快適だ。
次に、コタツの上に置いたミカン箱には『無限補充(ダンジョンから転送)』をリンクさせる。
テレビのリモコンには『念動力』を付与し、手を使わずにチャンネルを変えられるようにした。
「……完璧だ」
俺、アイリ、スズ、ビビ、フィアナ、リサ、マーリン。
全員が巨大コタツに足を突っ込み、ダメ人間のように寝転がっている。
「あー……幸せ。もうアイドル辞めてここで一生暮らしたい……」
「ミカン美味しいですぅ……」
「Master、トイレに行きたくなったらどうしますか?」
「その時は【テレポート】で便座に直行だ」
「Crazy……」
もはや廃人だ。
だが、これこそが俺が求めていた「スローライフ」の極致かもしれない。
世界を救い、富を得て、最強の力を手に入れた。
その果てにあるのが、この「何もしない贅沢」なのだ。
「……ふふっ」
俺は笑みをこぼし、ミカンを放り投げ、口でキャッチした。
明日からはまた騒がしい日常が始まるだろう。
政府からの依頼、新しいダンジョンの発見、あるいは新たな敵の出現。
でも、今の俺には頼もしい家族がいる。
なんとかなるさ。
「さあ、昼寝の二回戦といこうか」
俺たちは幸せな魔力に包まれて、安らかな寝息を立て始めた。
最強の魔法使いの、最高に贅沢な休日は、こうして過ぎていくのだった。
(続く)
これにて、お正月編完結です!
コタツ×エンチャント=人をダメにする魔道具。
トイレにテレポートは、ある意味究極の魔法の使い方かもしれません。
次回からは通常運転に戻ります。
休みボケの体に鞭打って、ダンジョンの「未開拓エリア」へ!
そこには、現代日本ではありえない「広大な海」が広がっていました。




