第47話 貧乏神を連れて買い出しに行ったら、すべての商品に「半額シール」が貼られました
3話更新の3話目です
三十日。お正月の食材を買うために、俺たちはアメ横(みたいな商店街)に来ていた。
メンバーは俺、スズ、そして新入りのビビだ。
「うわぁ、人がいっぱい……。私、こういう所苦手……」
ビビが俺の背中に隠れる。
綺麗になっても、根っこの陰キャ気質は変わらないらしい。
「大丈夫ですよビビちゃん。今日はカニとイクラを買い占めます!」
「スズ、予算はあるけど無駄遣いはダメだぞ」
俺たちは鮮魚コーナーへ向かった。
年末価格で、どこもかしこも高い。カニ一杯二万円とかザラだ。
「うぅ……高い。私、お金ないよ?」
「大丈夫、俺が出すから」
俺が高級カニに手を伸ばそうとした、その時だ。
ビビが「欲しいなぁ……」と呟きながらカニを見つめた瞬間。
サッ。
店員のおじさんが、条件反射のように『半額シール』をカニに貼った。
「「え?」」
俺とスズは顔を見合わせた。
ビビが隣の高級牛肉を見る。
サッ。店員が『3割引シール』を貼る。
「……まさか」
俺は確信した。
ビビの「貧乏神としての名残」が、周囲の商品価値を下げさせ、店員に「早く売り切らなきゃ!」という焦燥感を与えているのだ。
結果、彼女が欲しがるものは全て「値引き」される!
「ビビ! あっちの最高級メロンを見てくれ!」
「え? うん……美味しそう……」
ペタッ。『見切り品・500円』。
「すげええええ! 最強の『値切りスキル』だ!」
「主様、これなら予算内で最高級のおせちが作れます!」
俺たちは狂喜乱舞し、ビビを連れ回して商店街を練り歩いた。
彼女が通った後は、まるでセールの嵐が吹き荒れたようになったという。
「……よく分かんないけど、役に立った?」
「ああ! ビビは最高の福の神だよ!」
俺が頭を撫でると、ビビは「えへへ……」と照れくさそうに笑った。
こうして俺たちは、山のような高級食材を激安でゲットし、ホクホク顔で帰宅したのだった。
(続く)
貧乏神の能力、使いようによっては最強の節約術でした。
店側からしたらたまったものじゃありませんが、消費者としては神様です。
これで最高のお正月が迎えられそうです。
次回、いよいよ大晦日!
年越しそばを食べて、除夜の鐘を聞いて。
今年一年を振り返る、まったり回です。




