第44話 ダンジョン産のもち米で「餅つき」をしたら、ほっぺたが落ちる(物理)ほど美味しくなりました
3話更新の3話目です
二十七日。
庭に臼と杵が用意された。餅つき大会だ。
使うのは、フィアナが育てた魔力たっぷりの「ダンジョンもち米」。
「まずは蒸すところからじゃな」
『我に任せろ!』
リュウがせいろに向かって、器用に火力調整したブレスを吐く。
一瞬で芳醇な香りが漂い、お米が蒸し上がった。
「よし、つくぞ! リサ、スズ、頼む!」
「Yes, Master」
「はいっ!」
リサが杵を構え、スズが手水をつける役だ。
二人の呼吸が重なる。
「セイッ!」「はいっ!」「セイッ!」「はいっ!」
速い。
目にも止まらぬ高速餅つきだ。
リサの杵が残像となり、スズの手が消える。
ドオオオオオオッ!!
衝撃波で庭の雪が吹き飛ぶレベルだ。
「……これ、餅つきだよな?」
見ていた西園寺さんが呆然としている。
数分後。
そこには、絹のように滑らかで、真珠のように輝くお餅が完成していた。
「できたー! つきたてですよ!」
俺たちはさっそく、きな粉や醤油につけて食べた。
「……っ!!」
口に入れた瞬間、餅が溶けた。
噛む必要がないほどの柔らかさと、強烈な穀物の甘み。
そして、飲み込んだ後に体中を巡る温かい魔力。
「おいし〜〜〜いっ!!」
アイリさんが頬を押さえる。
その瞬間、彼女の肌がパァッと発光し、髪がツヤツヤになった。
「あら? なんだか体が軽いし、お肌の調子が絶好調じゃ!」
「この餅、若返り効果があるのか?」
どうやら、エルフの魔力米と高速餅つきの相乗効果で、とんでもない「魔法の餅」が出来てしまったらしい。
結局、その日はみんなで餅を食べ続け、全員の肌年齢が十歳くらい若返るという謎の現象が起きた。
西園寺さんに至っては、女子高生のような肌ツヤになってしまい、「明日出勤したら絶対にいじられる……」と嘆いていた(顔は嬉しそうだった)。
こうして佐藤家は、平和に(?)年の瀬を迎えるのだった。
(続く)
高速餅つきで、最強の美肌フードが爆誕しました。
西園寺さんの肌年齢が大変なことになっています。
美味しいものを食べて笑って過ごす、これぞ日本のお正月準備ですね。
次回、ついに大晦日!
除夜の鐘を聞きながら、一年を振り返ります……が、最後の最後に「招かれざる客」が!?




