第42話 クリスマスに「手作りの指輪」をプレゼントしたら、ヒロインたちが尊死しました
3話更新の1話目です
十二月二十五日。
佐藤家のリビングには、天井に届くほどの巨大なクリスマスツリー(フィアナが裏山から引っこ抜いてきた)が飾られていた。
「メリークリスマス!」
パーティーの始まりだ。
豪華な料理を平らげた後、恒例のプレゼント交換会が始まった。
「まずは私から! はい、佐藤さん!」
アイリさんが渡してきたのは、車のキーだった。
エンブレムを見ると、数千万円はする高級外車のやつだ。
「……重いよ」
「えー? じゃあマンションの権利書にする?」
「もっと重いよ!」
次はリサだ。彼女は無骨なジュラルミンケースを差し出した。
「Master。最新鋭の暗視ゴーグルと、対物ライフルのセットです」
「どこで使うんだよ」
「スズからのプレゼントは、手編みのマフラーです! 私の髪の毛を少し編み込んであるので、強力な魔除け効果があります!」
「ありがとう。……え、髪?」
みんな愛が重い。
俺は苦笑しながら、ポケットから小さな箱を取り出した。
「俺からはこれ。みんなにお揃いの指輪を作ったんだ」
俺が渡したのは、オリハルコンを加工したシンプルな銀色の指輪。
宝石はないが、内側に魔法文字が刻まれている。
「わぁ……綺麗……」
「なんのエンチャントですか?」
フィアナが目を輝かせる。
俺は少し照れくさそうに説明した。
「効果は『緊急通報(SOS)』と『転移誘導』だ。もし君たちが危険な目に遭ったら、指輪を通して俺に通知が来る。そしたら、俺はいつでも、どこにいても、その指輪を目印に【テレポート】で駆けつける」
つまり、俺を召喚できる指輪だ。
最強の防犯ブザーとも言う。
「……それって」
アイリさんが顔を真っ赤にして、口元を押さえた。
「……いつでも、佐藤さんが来てくれるってこと? 私だけのヒーローみたいに?」
「まあ、そういうことに……うおっ!?」
ドサッ。
アイリさんが鼻血を出して倒れた。
リサも顔を沸騰させて震えている。スズとフィアナは指輪を胸に抱いて、幸せそうに天を仰いでいる。
「え、嫌だった?」
「ち、違います! 嬉しすぎてキャパオーバーしただけですぅ!」
どうやら、俺のプレゼントが一番重かったらしい。
その夜、全員が指輪をつけたまま眠りについたのは言うまでもない。
(続く)
「現実ではまだ11月ですが、作中はクリスマスです! 少し早いメリークリスマス!」
高級車よりもライフルよりも、「いつでも守りに行く」という約束の方が強力だったようです。
無自覚タラシが炸裂しました。
次回、年末といえば大掃除!
魔法を使えば一瞬ですが、あえて人力で頑張ってみたら……やっぱりカオスになりました。




