第41話 魔法野菜で「青汁」を作って老人会に配ったら、お年寄りが全力疾走し始めました
3話更新の3話目です
フィアナのおかげで大量に収穫できた「踊る野菜」たち。
食べきれないので、保存食に加工することにした。
「野菜ジュース……いや、『青汁』にしよう」
俺はミキサーを取り出した。
ケールっぽい葉っぱ(魔力入り)と、甘いトマト、そしてスライムゼリーを少し混ぜる。
【クリーン】でえぐみを取り除き、【エンチャント】で『健康増進』の効果を上乗せする。
完成したのは、輝くような緑色のスムージー。
名付けて『エルフの秘薬・青汁ver』だ。
「まずは近所の人に配ってみるか」
俺はこの家の元持ち主である大家さんや、近所の公民館に集まっていた老人会の方々に、試作品を配って回った。
「おや、佐藤さんかい。いつもありがとうねぇ」
「これ、体にいい特製ジュースです。どうぞ」
お婆ちゃんたちはニコニコと青汁を飲んだ。
その数分後。
「……あれ? 腰が痛くない?」
「目が……目がハッキリ見えるぞ!?」
「力が湧いてくるわい!!」
公民館がどよめいた。
杖をついていたお爺さんが、杖を放り投げてスクワットを始めた。
腰の曲がっていたお婆さんが、背筋を伸ばしてタップダンスを踊り出した。
「ひゃっほーう! ワシはまだ若いもんには負けんぞー!」
ついには、老人たちが公民館を飛び出し、坂道を全力疾走で駆け上がり始めた。
その速度、高校の陸上部並みだ。
「……あー。効きすぎたか」
俺は遠い目をした。
魔力を含んだ野菜は、高齢者の弱った体に劇的な効果をもたらしたらしい。
後日。
この地域だけ「要介護認定者」がゼロになるという奇跡が起き、厚労省が調査に来る騒ぎになったが、俺は「ただの野菜ジュースですよ?」としらばっくれた。
西園寺さんが「また貴方ですか……」と頭を抱えていたが、ちゃっかり自分用の青汁も持って帰っていった。
(続く)
超高齢化社会を救う一手、まさかの青汁でした。
エルフの魔法×俺のエンチャント=不老長寿の薬(仮)。
これ、商品化したらスライム美容液以上に売れそうですが、世界バランスが崩れるので自重します。
次回、ついにクリスマス回!
佐藤家でパーティーを開きますが、プレゼント交換でとんでもない物が飛び交います。




