第40話 エルフが「精霊魔法」で畑仕事を手伝ったら、野菜が意思を持って踊り出しました
3話更新の2話目です
平和な朝。
俺は庭の家庭菜園で、トマトの手入れをしていた。
「サトウ、私も手伝う!」
ジャージ姿のフィアナ(エルフ)がやってきた。
居候させてもらっているお礼に、何か役に立ちたいらしい。
「ありがとう。じゃあ、この苗に水をやってくれるか?」
「任せて! 私、植物を育てるのは得意なの。……精霊さん、お願い!」
フィアナがジョウロの水を撒きながら、何やら歌うような呪文を唱えた。
すると、水が淡い緑色に光り、土に染み込んでいく。
ボコッ……ボコボコッ!
土が盛り上がり、植えたばかりのトマトの苗が、早送り映像のように急成長を始めた。
茎が太くなり、葉が茂り、真っ赤な実が鈴なりになる。
そこまでは良かった。
「……ん? なんか、揺れてないか?」
よく見ると、トマトの実がプルプルと震えている。
そして。
『オハヨウ! オハヨウ!』
『水ダ! 太陽ダ! ヒャッハー!』
トマトたちが、短い手足を伸ばして踊り出した。
「うわぁっ!? トマトが喋った!?」
「あら? 精霊の力が強すぎたかしら?」
フィアナが首を傾げている。
マーリンお爺ちゃんが縁側から顔を出した。
「ほほう。『マンドラゴラ』の亜種じゃな。エルフの王族が使う【豊穣の歌】は、植物に仮初の命を与えるのじゃ」
「命って……これ、食べていいんですか?」
「うむ。極上の味じゃぞ。それに、食べればMPが全快する」
マジか。
俺は踊っているトマトを一匹捕まえ、洗ってかじってみた。
「……甘っ!?」
フルーツなんて目じゃない。濃厚な甘みと酸味が口いっぱいに弾ける。
そして、体の中から力がみなぎってくるのが分かった。
これ、栄養ドリンクの百倍効くぞ。
「すごいなフィアナ! これなら野菜嫌いな子供でも……いや、逆にトラウマになるか?」
とりあえず、畑一面で踊り狂う大根やキュウリたちを、リサとスズが必死に収穫(捕獲)して回るという、カオスな農作業が始まった。
(続く)
家庭菜園がファンタジーになりました。
「踊る野菜」、味は絶品ですが、調理する時にちょっと罪悪感がありますね。
MP回復効果付きの野菜、これはまた新たな需要がありそうです。
次回、この野菜を使って、お爺ちゃんお婆ちゃんを元気にする「最強の青汁」を作ります!




