第39話 元社長が半グレ集団を連れて復讐に来ましたが、ウチの戦力が過剰すぎて可哀想なことになりました
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深夜。
佐藤家の周囲を、数台の改造ワゴン車が取り囲んでいた。
降りてきたのは、鉄パイプやバットを持った柄の悪い男たち――いわゆる半グレ集団だ。
その中心に、以前スズに撃退された元社長がいた。
「へっへっへ……佐藤め。今日は逃がさんぞ」
元社長は歪んだ笑みを浮かべていた。
あれから会社は倒産寸前。逆恨みした彼は、裏社会のツテを使ってこの襲撃を計画したらしい。
「おい、あの家だ! 窓ガラス全部割って、金目のもん奪って、佐藤を引きずり出せ!」
「「「うぇーい!!」」」
男たちが雄叫びを上げて門を乗り越えようとした――その時だ。
「――侵入者(Intruder)、多数。排除します」
闇の中から、冷徹な声が響いた。
次の瞬間、先頭の男たちのベルトやズボンの紐が、音もなく切れ落ちた。
「あ? パンツずり落ちた!?」
「な、なんだ!?」
慌てる彼らの前に、屋根の上から一人のメイドが舞い降りた。
リサだ。月光を背に、両手のナイフがギラリと光る。
「不法侵入ですね。ゴミ掃除の時間です」
「な、なんだこの女! やっちまえ!」
半グレたちが襲いかかるが、止まって見える。
リサは舞うように攻撃を避け、すれ違いざまにナイフの峰や柄で急所を叩き込んでいく。
ドカッ! バキッ!
数十人の男たちが、一分も経たずに全員地面に転がった。
「ひぃっ……! な、なんなんだお前は!」
元社長が腰を抜かして後ずさる。
逃げようと背を向けた先には――巨大な影があった。
『グルルル……。我の眠りを妨げるのは、貴様か?』
黄金の鱗を持つドラゴン、リュウだ。
翻訳イヤリングを持っていない元社長には、地獄の底からの唸り声にしか聞こえない。
「ば、化け物ぉぉぉ!!」
元社長が悲鳴を上げると、さらに玄関からスズが出てきた。
「主様が起きてしまいます。静かにしてください」
スズが指をパチンと鳴らす。
すると、元社長の頭上から、なぜかピンポイントで「植木鉢」が落ちてきた。
ガシャン!!
「ぐえっ……」
白目を剥いて気絶する元社長。
そこへ、あくびをしながら俺が出てきた。
「ふわぁ……なんだ、もう終わったのか」
「Master。ゴミの分別、完了しました」
「主様、警察には通報済みです。ついでに、元社長さんのカバンから『脱税の証拠書類』が落ちていたので、一緒に渡しておきますね(ニッコリ)」
完璧だ。
物理的にも社会的にも、元社長はこれで再起不能だろう。
俺たちは転がっている男たちを(邪魔なので)道路の端に寄せ、二度寝するために布団に戻ったのだった。
(続く)
元社長、完全敗北。
リサ(物理)、リュウ(恐怖)、スズ(不運)のコンボが決まりました。
これでもう二度と関わってくることはないでしょう。
次回、平和な日常回に戻ります。
新入りのエルフ・フィアナが、恩返しのために「家庭菜園」を手伝ってくれるようです。




