第36話 ダンジョンの深層で「エルフの美少女」を拾ったので、とりあえず持ち帰りました
3話更新の1話目です
その日、俺たちはダンジョンの未踏破エリア「地下十階層」に来ていた。
ここまで来ると、空気中の魔素が濃くなり、景色も洞窟から「古代遺跡」のような石造りの回廊に変わっている。
「主よ、ここから先は空気が違うぞ。異界と繋がっておるかもしれん」
マーリンお爺ちゃんが杖を掲げて警告する。
リュウも鼻を鳴らして警戒しているようだ。
「Target、前方にて生体反応を確認。……人型です」
リサの報告を受け、俺たちは遺跡の大広間へ急いだ。
そこで俺たちが見たものは――。
「……っ、う……」
瓦礫の上で倒れ伏す、ボロボロの少女だった。
透き通るような金髪、白い肌。そして何より、髪の間から覗く「長い耳」。
間違いなく、ファンタジー映画で見る「エルフ」だ。
彼女は深手を負っており、豪奢なドレスは血と泥で汚れきっていた。
「ひどい……! 主様、助けてあげてください!」
「もちろんだ。スズ、お湯を頼む」
俺は少女に駆け寄ると、右手をかざした。
外傷だけじゃない。体の中に「呪い」のような黒い魔力がこびりついている。
「――【クリーン】、完全浄化」
俺の全力の魔力が、彼女の体を包み込む。
泥汚れが消え、傷口が塞がり、体内の毒素や呪詛が黒い霧となって霧散していく。
数秒後。
彼女の頬に赤みが差し、安らかな寝息を立て始めた。
「……ふぅ。なんとかなったか」
「信じられん。あの呪いは『魔族』特有のものじゃぞ? それを一瞬で解呪するとは」
マーリンが呆れている。
とりあえず、こんな場所に放置はできない。
「連れて帰ろう。ウチの客室、まだ空いてたよな?」
「Yes. 三部屋ほど空いています」
俺はエルフの少女を【お姫様抱っこ】で抱え上げた。
軽い。ちゃんと食べていたんだろうか。
こうして俺は、ダンジョンの奥から「異世界の王女様(推定)」をお持ち帰りすることになった。
……また食費が増えるな、と少しだけ現実的なことを考えながら。
(続く)
ダンジョンの落とし物は、エルフの美少女でした。
お姫様抱っこで地上へ搬送します。
異世界と繋がっているということは、向こう側の事情も絡んできそうです。
次回、目覚めたエルフが、現代日本の「お風呂」と「カップ麺」に衝撃を受けます。
文明の利器によるカルチャーショック回です!




