第29話 ダンジョンの地底湖で「巨大マグロ」が釣れたので、庭で解体ショー&寿司パーティーを開催しました
本日4話投稿の1話目です(07時・12時・17時・21時)
金曜日の夕方。
俺たちは再び、ダンジョンの地底湖に来ていた。
目的は温泉ではない。「釣り」だ。
「きたっ! 主様、大物です!」
スズが持つ竿が大きくしなる。
俺も加勢して糸を巻き上げる。リュウも上空から応援(威嚇)している。
バッシャァァァン!!
水しぶきと共に釣り上がったのは、全長三メートルはある巨大魚。
見た目はマグロに近いが、鱗が鉄のように硬い『アイアン・ツナ』だ。
「よーし、今夜は寿司だ!」
「わーい! お刺身ー!」
◆
場所を自宅の庭に移し、急遽「解体ショー」が始まった。
観客はアイリ、リサ、そして仕事終わりに駆けつけた西園寺さんだ。
「え、あの魚、鱗が金属みたいですけど……包丁入るんですか?」
西園寺さんが心配そうに見ている。
だが、スズは自信満々に、昨日プレゼントした『オリハルコン包丁』を構えた。
「ふふん。見ていてください!」
スズが包丁を振るう。
キンッ、という高い音と共に、硬いはずの鱗が紙のように削ぎ落とされた。
続いて、スパスパと身が切り分けられていく。
抵抗ゼロ。まるで空気を切るような鮮やかさだ。
「はい、大トロ一丁上がりです!」
「すごい……! 魔法みたい!」
切り出された身は、美しいピンク色に輝いている。
俺はすかさず【クリーン】で血生臭さを消し、酢飯を握る。
「へいお待ち! 握りたてだ!」
まずはアイリさんがパクリ。
「んん〜〜っ! とろけるぅ〜〜!! 銀座で三万円のお寿司より美味しい!」
次は西園寺さん。
「……っ! 脂が甘い……! 一週間の疲れが吹き飛びます……」
リサは無言で次々と口に放り込み、リュウはアラ(骨についた身)をバリバリと食べている。
最高だ。
開放的な庭で、美少女たちと囲む寿司パーティー。
これぞ勝ち組の休日。
「あ、そうだ佐藤さん。このマグロ、余ったら私の事務所のパーティーに出せません?」
「西園寺さん、これ国賓の晩餐会に使えませんか? 外交カードになりますよ」
すぐにビジネスの話を始める二人。
たくましいな、俺の周りの女性陣は。
こうして夜は更けていき、俺たちの笑い声は星空に吸い込まれていった。
だが俺は知らなかった。
この楽しい宴会の裏で、とある「世界的な権威」が、俺の存在に気づき始めていたことを。
(続く)
巨大マグロ、美味しくいただきました。
オリハルコン包丁のおかげで、鉄の鱗も豆腐のようです。
美味しいものを食べると、人は幸せになりますね。
次回、謎の老人が訪ねてきます。
彼は語ります。この世界の「魔法」の歴史と、主人公の力がどれほど「異常」なのかを。




