第28話 ドラゴンがくれた「オリハルコン」で包丁を作ったら、まな板ごと空間まで切れそうになりました
本日4話投稿の1話目です(07時・12時・17時・21時)
庭の犬小屋(黄金内装)でくつろいでいたリュウが、俺を呼び止めた。
『おい人間。世話になっている礼だ。これを受け取れ』
リュウが口からペッ、と吐き出したのは、七色に輝く金属の塊だった。
泥団子みたいに出されたが、鑑定するまでもなくタダモノではない。
「……これ、もしかして」
『うむ。「オリハルコン」じゃ。我の鱗から生成された、世界で最も硬い金属よ』
国宝級のお宝がいきなり出てきた。
売れば数十億は下らないだろうが、お金はもう腐るほどある。
「どうするかな……。あ、そうだ」
俺はキッチンに目を向けた。
スズが一生懸命、硬いカボチャと格闘している。最近、ダンジョン産の魔物肉(硬い)を調理することが増えて、包丁の刃こぼれが目立っていたのだ。
「スズ、新しい包丁を作ってやるよ」
「えっ、いいんですか?」
俺はオリハルコンを手に取り、魔力を込めた。
普通の鍛冶では加工不可能だが、俺の魔法なら粘土細工のように扱える。
「不純物除去、形状変化……そして仕上げだ」
日本刀のような鋭い輝きを持つ包丁の形に整え、最後に【エンチャント】を施す。
付与するのは『切れ味強化』『自動修復』『衛生保持(雑菌がつかない)』の三点セットだ。
「――完成。【聖剣】ならぬ【聖包丁】だ」
完成した包丁は、淡い光を放っていた。
スズが恐る恐る受け取る。
「ありがとうございます! ……切れ味はどうでしょう?」
彼女は試しに、そこにあったカボチャに刃を当てた。
トン。
力を入れていない。刃の重みだけで、カボチャが真っ二つになった。
それどころか、下のまな板までスパッと切れ、危うくステンレスの調理台まで切断するところだった。
「ひゃあぁっ!?」
「あぶねっ! 切れ味良すぎたか!?」
スズが慌てて包丁を離す。
しかし、彼女の目はすぐに料理人(&戦闘要員)として輝きだした。
「……素晴らしいです、主様。これなら『ドラゴンゾンビ』の骨でも大根のように捌けます!」
『ヒェッ……』
庭でリュウが悲鳴を上げた気がした。
こうしてスズは、伝説の金属で作られた最強の包丁を手に入れた。
今後、我が家に侵入する不届き者がいたとしても、玄関先で「三枚おろし」にされる運命が確定したのだった。
(続く)
オリハルコン製、最強の包丁が完成しました。
これで硬いカボチャも、硬い魔物も怖くありません。
スズちゃんの装備がどんどんグレードアップしていきますね。
次回、作ったばかりの「聖包丁」が大活躍!?
ダンジョンから「あの巨大食材」をゲットして、マグロの解体ショーならぬ「ドラゴン解体ショー」を開催します!




