第27話 封印されし伝説のドラゴンが、背中が痒いと泣いていたので洗ってあげました
本日3話投稿の3話目です(07時・17時・21時)
俺は岩壁に手を当てた。
ここだけ魔力の流れがおかしい。隠し扉だ。
「――【リペア】、解除」
ズズズ……と重い音を立てて、壁がスライドした。
中は六畳ほどの小さな石室だった。
その中央に、黄金色に輝く(ただし埃まみれの)トカゲ……いや、翼の生えた小さなドラゴンが鎮座していた。
「グルルル……。よくぞ参った、人間よ」
ドラゴンは威厳たっぷりに俺たちを見下ろした。
サイズは柴犬くらいだ。
「Target(目標)、ドラゴン種を確認。危険度測定不能。マスター、下がってください!」
リサがナイフを構えて前に出る。スズも警戒して目を細めている。
だが、ドラゴンの瞳は潤んでいた。
『……そこの人間。我が声が聞こえるか?』
「ああ、聞こえるよ」
『そうか! では頼みがある! ……背中をかいてくれ!』
「は?」
全員がズッコケそうになった。
ドラゴンは涙目で訴えてきた。
『三百年ここに封印されていてな……背中の鱗の隙間に埃が詰まって、痒くてたまらんのだ! 手も届かんし、もう限界なのだ!』
威厳もへったくれもない。
俺は苦笑して近づいた。
「いいよ。かくだけじゃなくて、綺麗にしてやる」
「待って主様! 噛まれますよ!?」
「大丈夫だって。――【クリーン】、全身洗浄」
俺がドラゴンの背中に手をかざすと、三百年分の埃、汚れ、ダニ、そして古い角質が一瞬で弾け飛んだ。
薄汚れていた黄金の鱗が、ピカピカに輝きを取り戻す。
『おおおおぉぉぉ……!! 極楽じゃ……!!』
ドラゴンは猫のように喉を鳴らして床に転がった。
ついでにブラッシング(物理的な痒み止め)もしてやると、完全にお腹を見せて服従のポーズをとった。
『……認めよう。お主こそ、我の主に相応しい』
「いや、ペットにするつもりは……」
『名は「リュウ」でいいぞ。さあ、連れて行くがよい!』
勝手に決まった。
リュウは俺の肩に飛び乗ると、満足げに鼻息を吹いた。
「あら、よく見ると可愛い顔してるわね」
「仕方ありませんね……。トイレの躾は私がしますからね?」
アイリさんとスズも、小さくなったリュウを見て警戒を解いたようだ。
こうして、ピクニックのお土産に「伝説のドラゴン」を持ち帰ることになった。
家に帰ると、リュウはさっそく庭の犬小屋(元々あったが空き家だった)を占拠し、ブレスで内装を自分好みの黄金色にリフォームし始めた。
……まあ、番犬くらいにはなるか。
(続く)
ドラゴン(柴犬サイズ)、ゲットだぜ!
背中が痒いドラゴンを助けたら、懐かれました。
名前は安直に「リュウ」。
これで陸、空、霊と、防衛戦力に死角なしです。
次回、リュウが持っていた「お宝」がとんでもない騒動を巻き起こします。




