第25話 元・最強暗殺者が「メイド」に転職しましたが、座敷わらし先輩には勝てませんでした
本日3話投稿の1話目です(07時・17時・21時)
翌朝。
リビングには、正座する金髪美女の姿があった。
「……サトウ。私を雇って」
彼女は真剣な眼差しで言った。
組織に戻れば処分される。かといって、この家の居心地の良さ(特に美肌効果とご飯)を知ってしまった今、他の場所には行けないらしい。
「雇うって……何ができるんだ?」
「警備(Security)。掃除(Eliminate)。料理(Cooking)。……殺し以外ならなんでも覚えるわ」
最後の一つが物騒だが、元プロの警備能力は魅力的だ。
俺が出張(テレポート先への移動)で留守にする時、スズだけだと物理的な防衛に不安があるのも事実。
「よし、採用だ。給料は……」
「いらない。ここに住まわせてくれて、あの『魔法』を毎日かけてくれるなら、タダでいい」
「(安いな……)」
契約成立だ。
リサが立ち上がり、鋭い目つきで部屋を見渡した。
「まずはこの家のセキュリティ・ホールをチェックするわ。プロの私から見れば、隙だらけよ」
彼女は自信満々に動き出した――が。
「……なっ!?」
キッチンに入ろうとした瞬間、リサの足が凍りついたように止まった。
そこに、エプロン姿の幼女――スズが立っていたからだ。
スズはニコニコと笑いながら、手にした大根を包丁でトントントン!と目にも留まらぬ速さで刻んでいる。
「おはようございます、新人さん」
「……ッ!」
リサが冷や汗を流して後ずさった。
本能が告げているのだ。『この幼女には勝てない』と。
「あ、あの……おはよう、ございます。先輩(Senpai)」
「よろしい。この家のルール第一条は『主様絶対』、第二条は『廊下を走らない』です。破ったら……」
スズが包丁をキラリと光らせた。
リサが直立不動で敬礼する。
どうやら、序列は一瞬で決まったらしい。
そこへ、アイリさんがやってきた。
「おっはよー佐藤さん! ……って、誰その金髪ボイン!?」
「新しい警備員のリサさんだ」
「へぇ……警備員ねぇ」
アイリさんはリサをジロジロと値踏みした後、ニヤリと笑って持っていた紙袋を押し付けた。
「採用条件よ。これを着なさい」
「What is this?」
リサが広げたのは、フリルたっぷりのクラシカルな「メイド服」だった。
「この家で働くなら制服が必要でしょ? 私のライブ衣装の予備だけど」
「わ、私がこんなヒラヒラしたものを……」
リサは抵抗しようとしたが、俺とスズ、そしてアイリの視線(と、ここを追い出されたら困るという打算)に負けた。
数分後。
そこには、金髪碧眼、抜群のスタイルをメイド服に包んだ、完璧なスーパーメイドが爆誕していた。
ただし、太もものガーターベルトにはナイフが仕込まれている。
「……似合ってますか、マスター?」
恥ずかしそうにスカートの裾を掴むリサ。
俺は親指を立てた。
「最高だ。採用してよかった」
こうして我が家は、
家事最強(座敷わらし)、財力最強、戦闘力最強(元暗殺者)。
という、鉄壁の布陣が完成したのだった。
(続く)
最強のメイドさん(物理)、採用しました。
金髪、スパイ、メイド服。
属性をてんこ盛りにしましたが、スズちゃん(座敷わらし)には頭が上がらないようです。
次回、人数が増えたので、みんなで「ダンジョン攻略」に行きます!




