第19話 国家機密の衛星が墜落したので、お散歩感覚で回収してきました
本日3話投稿の1話目です(07時・17時・21時)
平和な休日。 俺がスズと一緒に、庭の家庭菜園で採れたトマトを収穫していると、スマホが鳴った。 西園寺さんだ。嫌な予感がする。
『……佐藤様、緊急事態です。助けてください』
声が切羽詰まっている。 話を聞くと、とんでもない内容だった。 日本の極秘偵察衛星が故障し、中東某国のジャングル地帯に墜落したらしい。
『そのエリアは、現在反政府ゲリラが支配しており、正規軍を派遣すれば国際問題になります。ですが、衛星のデータが彼らに渡れば……』 「日本が終わる、と?」 『はい。……お願いです。誰にも見つからず、衛星を回収……もしくは完全に破壊してほしいのです』
無茶振りだ。 だが、俺には【テレポート】がある。
「分かりました。……場所の座標は分かりますか?」 『はい。ですが、佐藤様はそこに行ったことがないはずでは?』 「ええ。だから、近くまで『足』を用意してください」
◆
数時間後。 俺は政府専用のステルス輸送機に乗っていた。 高度一万メートル。墜落地点の上空ギリギリを通過する一瞬が勝負だ。
「佐藤様、降下準備を!」 「いや、降りませんよ?」 「えっ?」
俺は機体のハッチを開けてもらい、眼下に広がるジャングルを見下ろした。 肉眼では豆粒にも見えないが、マップには反応がある。 俺は指で作ったフレームの中に、その「汚点(墜落現場)」を捉えた。
イメージするのは、墜落した衛星の機体だけを亜空間へ収納し、周囲の破壊痕を消すこと。
「――【収納】」 「――【クリーン】、証拠隠滅」
ヒュンッ。
一瞬だった。 遥か地上にあった数トンの金属の塊が、俺の異空間倉庫に格納された。 同時に、墜落で抉れていた地面や、倒れていた木々が、何事もなかったかのように修復される。
「はい、回収完了」 「は……? 今、何かしたんですか?」
同乗していた自衛官が呆然としている。 俺はニカッと笑った。
「ただの遠隔操作ですよ。……あ、ついでに接近していたゲリラの車両も、タイヤだけ消しておきました」
◆
帰国後。 内閣府の地下室で、俺は【収納】から衛星を吐き出した。 傷一つない(というか【リペア】で直してしまった)完璧な状態で。
「信じられない……。部隊を派遣すれば数ヶ月はかかる任務が、たった半日で……」
西園寺さんが震えている。 今回の報酬は、外交カード的な意味も含めて「国家予算レベル」の上乗せが約束された。
「あ、そうだ西園寺さん。この国、マンゴーが美味しいらしいんで、お土産にどうぞ」 「……佐藤様。あなたは一体、何をしに行ったんですか?」
呆れられたが、顔は笑っていた。 こうして俺は、知らぬ間に第三次世界大戦の火種を消し止めてしまったのだった。
(続く)
戦争回避 RTA。 現地に行かなくても、視認できれば魔法は届く。 チートすぎて、もう軍隊がいらないレベルです。
次回、のんびり温泉回!? と思いきや、温泉地で新たなトラブルに巻き込まれます。




