第13話 スライムの粘液を【クリーン】して化粧水にしたら、サーバーが落ちるほど売れました
本日3話投稿の1話目です(07時・17時・21時)
食後のティータイム。
スズが透明なプルプルした物体をボウルに入れて持ってきた。
「主様。昼間に回収した『スライムゼリー』ですが、どうしますか? 捨てますか?」
「うーん、そうだな……」
ただの粘液に見えるが、スズいわく「美容素材」らしい。
横で見ていたアイリさんが、興味津々で身を乗り出した。
「ねえ佐藤さん。それ、本当に肌にいいの?」
「スズはそう言ってますけど……そのままじゃ不純物が多いですね。一回きれいにしてみましょうか」
俺はボウルに手をかざした。
イメージするのは、細菌や汚れ、余計な水分を飛ばし、有効成分だけを抽出する工程。
「――【クリーン】、精製」
シュワワワ……!
光が収まると、ボウルの中には、ダイヤモンドのように透き通った、少し青みがかった液体が残っていた。
とろりとしていて、ほのかにフローラルのような甘い香りがする。
「できた。……試してみます?」
「やる! 私、実験台になる!」
アイリさんは躊躇なく指ですくい、自分の手の甲に塗った。
その瞬間。
「うそ……!?」
塗った部分が、一瞬で水を弾くようなモチモチの肌に変わった。
キメが整い、明らかにワントーン白くなっている。
赤ちゃん肌なんてレベルじゃない。「発光」しているレベルだ。
「すごい……! これ、一滴で数万円する高級美容液より効果あるわよ!?」
「マジですか。ダンジョンでは無限に湧いてきますけど」
「無限……!?」
アイリさんの目が、アイドルの目ではなく「経営者」の目になった。
「佐藤さん! これ、売りましょう! 私の個人事務所のブランドで限定販売するの!」
「え、いいんですか?」
「いいもなにも、これは革命よ! 宣伝は私のSNSでやるから、佐藤さんは生産をお願い!」
トントン拍子で話が決まった。
俺は庭のダンジョンからスライムゼリーを回収し、【クリーン】で精製して瓶詰めにする作業(所要時間:十分)を行った。
翌日。
アイリさんがインスタグラムに投稿した。
『私の肌が綺麗な秘密、教えちゃいます♡ 奇跡の美容液「スライム・ドロップ」、本日二十時から限定千本で販売!』
――結果。
「……三秒?」
販売開始と同時に、サイトが重くなり、更新ボタンを押した時には『SOLD OUT』の文字が出ていた。
完売まで、たったの三秒。
「あはは、やっぱりね! サーバー増強しておいてよかったぁ」
「いや、笑い事じゃないですよこれ」
一本一万円で販売したのに、一瞬で一千万円の売上だ。
しかも原価はほぼゼロ(瓶代のみ)。
「佐藤さん、再販希望の問い合わせが三万件来てるわよ! 追加生産できる?」
「ええ、まあ。庭に行けばいくらでも」
こうして俺は、掃除屋としての収入だけでなく、美容業界のフィクサーとしても莫大な富を築くことになってしまった。
ちなみに、この美容液があまりに効きすぎて、「整形疑惑」が出た女優が続出したのは、また別の話だ。
(続く)
スライム=化粧水。
原価ゼロの錬金術が完成しました。
アイリさんの宣伝力×チート品質=最強です。
次回、儲かりすぎて保管場所に困ったので、ついに「アイテムボックス」が火を吹きます。




