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18.5話 通常真守(五年生)と水泳教室

時系列少しだけ戻ります。

能力者が絡まない真守が普段どの様な感じなのか、少しだけ日常を見せる回。




 ちょうど小学五年生の頃。


 色んな習い事をさせてはもらったが、特に格闘技系列においては怪我をして帰ると両親が心配するので通う回数そのものが減ってきた。


 スイミングスクールだけは、個人的にも利があると感じているし親的にも好感触なので一番優先して通っている。

 またしても一緒に通っている潔に関しては既に全国レベルの速さになっており、スイミングスクールの方から選手コースに来ないかと勧誘があった。

 要は競泳の選手にならないかというお誘いである。潔としては基本的に俺と一緒じゃないと意味がないというので、そこそこ綺麗に泳げてそこそこ速い俺も選手コースに通う事にした。

 何故かというと、純粋にプールへ通える日にちが増えるからだ。今までは月謝に対して授業日が設定されていたが、これからは基本的にいつでも良くなる。むしろ毎日行かないと損かもしれないが……。


 それはともかく、通うとなって初日。このスイミングスクールは言い方が悪いが、弱小なので選手コースはかなり人数が少なかった。

 上は高校生から下は俺よりも歳下だったりする。

 各年齢に数人いるかいないかという数なせいか、年齢関係なく皆仲が良さそうな雰囲気だ。そして仲間が増えることを歓迎してくれた。


 その中に見知った顔があった。


「あれ、ダイキくんだ」


 同い年で同じ小学校の、五年生では別クラスの男子だった。少し疎遠になってきた亮太達とよく遊んでいた頃のグループにいた男子でもある。


「真守、選手になったんだ」


 目を丸くするダイキくんに、ふとトイレの中でアカネちゃんに詰め寄られた時(ミヨちゃんがダイキくんのこと好き云々)を思い出す。

 あれ以来少し距離を取って気まずい思いをさせた為に心が痛いが、ここにはアカネちゃんもミヨちゃんも居ないようだし、少しくらい距離を詰めても大丈夫だろう。


「うん、これからよろしく。それと……ちょっと避けててごめんね? えーと、女子には色々あってさ」


 手を合わせてジッと彼の目を見て素直に謝ると、このくらいの小学生男子は女子と絡む事が少し恥ずかしいのか照れ臭そうに顔を逸らして「お、おう」と答えていた。

 なんていうか初々しいよなぁ。俺の時はどうだっただろうか。でもやっぱり、女子と遊ぶって中々なかったよなぁ。


 そういえばミヨちゃんとはどうなったのだろう。告白されたりしたのだろうか。



「あれ? 珍しい、今日は潔さん居ないの?」


 別の日、いつものように練習に来るといつも一緒に来ている潔が居ない事に気付いたダイキくんがそう声をかけてきた。


 今は休憩中で、ゴーグルとキャップを取って水分を取りながらベンチに座っていた俺は「お姉ちゃんは今日から修学旅行だよ」と答える。

 ダイキくんも俺の隣に座って驚いた顔をした。


「そっか六年生だった。もっと上だと勝手に思ってたよ」

「あ〜。潔、大きいもんね」


 ニマリとして、俺が自分の胸あたりを持ち上げるフリをしたら顔を真っ赤にさせたダイキくんが慌てて立ち上がりながら手をブンブンと振る。


「ちょ! やめろよ、違うって! 普通に身長がデケェじゃん!」

「おいおいダイキー、女の子におっきいとか、気にする子もいるんだぞ〜」


 横で話を聞いていた高校生の男先輩がダイキくんを揶揄う。潔の身長は既に170cmに近いし、顔つきも大人びているので確かに小学六年生には見えない。我が血縁ながら発育がいい……。


「でもマジで潔ちゃんデカいよねぇ。最初同じくらいかと思ったもん」

「同じ……?」

「殺すぞ」


 同じように話を聞いていた女子高生の先輩が話に入ってきて、すかさず彼女の胸あたりを見て首をかしげる男子高生先輩に彼女は物凄く低い凄んだ声を出す。

 この二人は同じ高校に通っているらしく、仲が良いのか普段からこのようなやり取りをしている。


「お前普段大人しいのに急にそういう弄りしてくるよな」


 ため息を吐いて座り直したダイキくんが呆れたようにそう言ってくるのを聞いて、自分でも確かにと不思議に思って考えてみた。

 まぁなんか、精神的には歳下の男の子が恥ずかしそうにテンパっている姿、それがちょっと可愛く見えるのだという結論に至る。


「弟とかをいじめるような感じだよ」

「真守に弟扱いされるのはなんかやだな」


 本気で嫌そうな顔をするので、やはり嗜虐心のようなものが芽生えてくる。最近は岬ちゃんと遊んだりすることも増えて、女の子と居るのも楽しいと思えるが、男子とはそれはそれでやはり楽しいものだな。




「今日ラーメン行く人ー!」


 練習が終わり、同じタイミングで仕事を終えて出てきた若い男のコーチが、着替え終わってロビーで雑談していた俺達の元へ来てそう言った。

 高校生は全員が「行く行く!」と乗り気だが、中学生や小学生組は親の迎えもあったり、そもそも家でご飯を食べるからと断る子達も多い。


「行こうかな」


 俺はというと、ラーメンという言葉に惹かれて乗り気になっていた。

 親から迎えが少し遅れるから待っていて、と言われたところだったのもあって、そう自分で口に出した時には既に行く気満々である。

 親にラーメンを食べに行くとメールしておく。夕ご飯どうするのかと返ってきそうだが、もうラーメンの腹なのだ! 


「そうなん? 俺も行こかな。何ラーメン食べる?」

「味噌かな〜」


 ダイキくんも行くらしく、まぁまぁな人数を連れてコーチはラーメン屋に向かった。ちなみに、辿り着いた先は結構ガッツリ系のラーメンを出すところだ。

 女性陣や小学生組は少なめのメニューを選び、雑談もそこそこにそれぞれにラーメンが届いたので食べ始める。


 いわゆる、家系ラーメンというやつだ。にんにくが効いていて、スープも濃厚で麺も太くて具が多い。

 少なめメニューを選んだ俺は、意気揚々と食べ始めた。そして三分の一くらい食べたところで絶望する。


 食えない。


 なんていうか、重い。油だろうか……味が濃いのもあるかもしれない。途中までは美味しかった、しかしある時を境にズンと胃に来るような感覚と口の中で噛むのが……こう、くどくなる感覚がどんどん酷くなっていく。

 普段はこういう時、潔がすかさず俺の分の食事を取って食べてくれるのだが、それに慣れすぎていたのだろう。今日は油断していた、自分が外食で出てきたものを普通に食べ切れると思っていた。


 というより、そもそもこの身体で家系ラーメンとか食べるの初めてだ。


 ちらり、と周りを見てみると男性陣はもちろん、少なめに盛り付けてもらった女性陣も平気な顔で食べていた。

 ちなみに、今回のラーメンはコーチの奢りだ。そのようにご馳走してもらうものを残すだなんて……。無理だ出来ない。うっ、うっ、と込み上げるものを我慢しながら麺を啜る。


「真守、もうやめとけば……?」


 そんなにひどい顔をしていたのか、横にいたダイキくんが心配そうな顔でこちらを覗いてくる。

 周りはまだ俺の様子に気付いていない、多分。しかしこのままでは……だが残すわけには……。


「ぅぐ、コーチのご馳走だ……残すわけには……」


 小さな声を絞り出し、俺は決意を新たにする。


 吐いても食う───! 


「……俺足りないから、くれよ」

「えっ」


 と思ってたら、ダイキくんがそのようなことを言い出した。それなら仕方ないかもしれない。俺のように美味しく食べられない人間より、育ち盛りの男の子が食べた方がラーメンも報われるだろう。


「ほんとに!? はい!」


 ずいっ、とラーメンを器ごと渡す。多分我ながら凄まじく明るい顔をしてたと思う。まぁ俺も分かってる、気を遣ってくれたのだろう。顔が少し赤いのも、照れ臭いんだ。俺も元は男の心を持っていたから分かる。

 このように男が格好をつけた時は、女は無邪気に格好つけさせておけばそれでいいのだ。でも食べる自信がなかったら言ってこないと思うから、小学生組の控えめ盛り付けが足りなかったのは本当だと思う。うんうん。


 そんなやりとりをしていたら流石に周りに気付かれたが、ダイキくんの男気を皆邪魔する気は無いのだろう。どこか微笑ましい顔つきで見守っていた。コーチには後で謝ろう。こういうラーメンはもう二度と食わない。大きくなったら挑戦してもいいけど。


「あ、間接キスじゃん」

「!!?」


 ふと気付いたことを口にした。

 吹き出しそうになるダイキくんを見て、俺は笑いそうになる。素知らぬ顔でシレッとしておいた。

 間接キスで大慌てできるのもこのくらいの年齢ならではだよなぁ。『兄』の記憶では遠い昔だが、全てが平和な時代の頃だ。懐かしさすら感じる。こういった日常のおかげで、俺も少し落ち着きを取り戻してきたという自覚があった。

 能力者(アウター)がいると聞けば我を失って、この身体(マモリ)になってからもそのせいで……特に紅子には大きく迷惑をかけてきた。


「ご馳走さま!」


 ぼんやりと、ラーメンを啜るダイキくんを見ながら物思いに耽っている内に彼は俺の分のラーメンも食べ終わった。

 周りも軽く拍手なんかしたりして称えるというか揶揄っている。俺もお礼を言わなきゃな。


「ありがとう! ほんとにたすかったー」


 ギュッと、肩を掴み俺はお礼を伝える。自分では食べられなかったが、奢ってもらう予定のものを残す事なく食べ物を粗末にする結果にならなかった。とても気が楽だ。

 こういうところにも『記憶』の影響を強く感じる。子供だったら、ご馳走してもらって普通だろうし、それを残してもここまで気にならないだろうな。大人の心が、それはあまりに不義理だと訴えかけてくるので多分あのままだと吐いてたよ。


 いやしかし、久々に実感した。


「やっぱり、男の子っていいね」


 思わず囁くように呟くと、ダイキくんは顔を真っ赤にして固まってしまった。あ、肩を握りっぱなしだったからか。パッと離す。

 しかしまぁ、やっぱ男の子はいっぱい食えていいよなぁ。潔は男以上に食うけど。



 その後コーチに謝ったが、ダイキくんの顔に免じて許してやると言われた。元々残しても怒っていなかっただろうけど、それに甘えるのもよろしくないのでこういう事はちゃんとしようと思っている。

 その前に、自分のお腹のことをしっかりと理解しておかないとなぁ。




 スイミングスクールにはそれからもずっと通っていて、学校ではミヨちゃんの目が気になるのでダイキくんとは練習中だけ話すような関係だ。

 一応、自衛のためにもミヨちゃんのことについて探り入れてみると、凄い勢いで「好き、とかそんなんはない! 向こうからもそんなの無いし!」と否定された。ミヨちゃん相変わらず奥手なんだなぁ……。




TIPS

真守ちゃん(五年生)は、まだ細いけどかなり肉付きが良くなってきてる。


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