恐怖(でもない)怪人黒マント
闇に蠢く。
夜陰に潜む影ひとつ。
OLの嫁ちゃんは、仕事帰りの夜道を急いで歩く。
(どうしようかな・・・街中の道を通ると遠いし、近道を使うと狭い夜道だし・・・まっいいか)
嫁ちゃんは狭い道を走り出した。
「くっくっくっ、今宵も生贄が・・・」
蠢く影がほくそ笑んだ。
アスファルトを走る靴の音。
コツコツコツ・・・ぺたぺたぺた。
コツコツコツコツ・・・ぺたぺたぺたぺた。
(誰かいる?)
嫁ちゃんは後ろを振り向かず全力で走り出す。
コツコツコツタッタッタッ・・・ぺたぺたぺた。
コツコツコツコツタッタッタッタッ・・・ぺたぺたぺたぺた。
だんだんと近づく足音。
(なんなのよ、もう!)
嫁ちゃんの顔はこわばり、恐怖で身体が震える。
ガシッ。
右肩を掴まれる。
「待てよ」
「いやああああああっ!・・・へ」
嫁ちゃんが振り返ると、そこにいたのは、全裸に黒マントを羽織った旦那ちゃんだった。
「・・・・・・」
「ほらほらほら~」
マントを広げ、自慢のアレ披露する旦那ちゃん。
「・・・・・・」
「ほれほれほれ~」
「・・・楽しい?」
「・・・うん、まあ、まあ」
「なにしてんの?」
「嫁ちゃんを驚かそうと思って」
「捕まるよ」
「うん・・・そだね」
「でも、大丈夫か」
「へ?」
「そんな物じゃね」
「・・・うわーん」
明日に向かって走り出す旦那ちゃん。
「風邪ひくよ~」
嫁ちゃんは注意した。
おいおい、ほかに言うべきことあるだろ(笑)。
ちゃん、ちゃん。
ほれほれ~っ。




