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パソコンが異世界と繋がったから両世界で商売してみる  作者: フェフオウフコポォ
新世界生き残りの為の自分磨き編

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77話 スキルの受け渡しに関わる「交渉」

本日3話目



「さて精算は終了いたしました。有難うございます。

 スキルの受け渡しの交渉はこれから行いますか? 譲渡人は2名とも本日の交渉を望んでおりますが、もし落札者様のご都合が悪い場合は日程を組みなおします。」


 女の係員から声をかけられる。


「あ。じゃあ今日でお願いします。」

「かしこまりました。それでは交渉が簡単な『魔物調教』から行いましょう。

 お付の方はもう少々お待ち頂き、落札者様はこちらへお越しください。」


 係員の案内に従い移動し指定された部屋に入ると、映画とかで見る教会の懺悔室のような物のある部屋に通された、懺悔室のドアが開かれたので、その席に座る。

 仕切りの反対側には姿はよく分からないが、なんとなく出品者らしき人が居ることだけは感じた。


「それでは早速ですが『魔物調教』のスキルについて交渉を始めます。

 今回の落札額は白金貨4枚、希望最高落札額を超えておりますので『オーク複数の意思を誘導する』までのスキルを譲渡する形で異論はございませんでしょうか?」


 女の係員の声がどこからともなく聞こえる。


「異論はありません。」


 出品者と思わしき回答が聞こえる。

 なんとなく声質は嬉しそうだ。


「異論はありません。」


 とりあえず、前にならえで回答する。


「交渉内容は確定しました。お疲れ様です。

 出品者様はこれよりスキルの抜き取りを行いますので退席後案内に従ってください。

 落札者様は、次の落札案件の交渉を行いますので、そのまま少々お待ちください。」


 しばし待つ。

 なんとなく荘厳の雰囲気がして落ち着かないが、我慢して待つ。


 やがて仕切りの向こうの出品者席に誰かが座ったような感じがして、女の係員の声が聞こえた。


「お待たせしました。それでは『隠密』のスキルについて交渉を始めます。

 今回の落札額は金貨7枚、希望最高落札額を下回っておりますので『魚が取れやすくなるくらいの隠密スキル』までのスキルを譲渡する形で異論はございませんでしょうか?」


「あ~……なんじゃ、買ってくれた人にちょっと相談してもええかのう?」

「出品者の要望があるようですが落札者様はいかが致しますか?」

「あ、はい。構いません。どんな相談でしょう?」


 戸惑いながらもとりあえず返答する。


「ワシの事で申し訳ないんじゃが、これから息子んトコで世話になる事になっておっての……

 せめて家の増築とか世話賃代わりの持参金として、白金貨1枚と金貨5枚くらいを持ってってやりたかったんじゃが……どうじゃろう?

 なんとか白金貨1枚と金貨5枚にはならんじゃろうか?

 そんだけもらえたら、『モンスターに見つかり難い』までを渡せるんじゃが……」


 俺は腕を組んで顎に手を当てて考える。


 ぶっちゃけ俺の黒髪の影響があったのか金貨7枚は安すぎたと思う。とはいえいきなり倍以上にしろって言われても、それは金額が大きすぎる気がしないでもない。

 それにまだ『隠密』が、どの程度役に立つかすら不明だ。


「……ちなみにですが、その『モンスターに見つかり難い』って、どの程度の能力なんですか?」

「ほうじゃのう。ここらにようけおるジャイアントなんかには普通に見つかり難くなるし、船を出しておっても気づかれ難くなるのう。あぁ、ただ狼男とかああいう輩はなんか誤魔化し難いなぁ。」


 ふむ? 狼男はよくわからないが、何となく犬っぽいモンスターと考えてニオイは辿られるくらいの能力なんだろう。


 ……十分スゴイ能力な気がする。


「まぁ、ワシが本気で隠れようとすれば狼男から逃げるくらいはできるがの。」


 もしかしなくても……この爺ちゃんはむちゃくちゃ凄いスキル持ちじゃない?

 ニオイを辿る事すらできなくなるって相当だろう?


「めっちゃスゴイじゃないですか! 分かりました。オッケーです。

 どうせなら役に立つ能力の方が良いですからね。出します白金貨1枚と金貨5枚。」

「ほっほっほ。即断してくれるとは有難いのう。」

「いやいや、こっちこそ有難いです!」


「それでは落札額を白金貨1枚と金貨5枚に変更。

 譲渡する能力を『モンスターに見つかり難い』に変更を行って宜しいでしょうか。」


「異論はありません。」


 俺は答える……が、出品者側から答えが無い。


「…………もうちょっと提案してもよいかの?」

「? ……はい。構いません。」


「『モンスターに見つかり難い』を渡したとして、きっと狼男には見つかってしまうかもしれん。

 ワシが本気を出すと言うのは、きっと能力のすべてを使っておるはずじゃからの。」

「ふむ。」


「じゃからの、この際すっぱりワシの隠密能力全部を白金貨2枚でどうじゃろうか?

 これならそこそこ疲れるが、狼男から逃げる事も可能になる。

 ……もちろん人間相手なんぞであれば、水浴びでもしとろうが、それを間近で見とっても気づかれんくらいの能力じゃ」

「白金貨2枚出しましょう。」


 近年稀にみる即答をした。

 きっと0.1秒クラスでの即断即決だ。


 まったくこのジジイ。どうやら水浴びを覗いた経験があるな? しかも間近で。

 なんというけしからん事をするのだろう。

 いかん。いかんなぁ。そんなジジイに能力を持たせるのはイカンだろう。

 そう。これは社会的ななんちゃらだ。


 いや、別に俺が水浴びを覗こうとかそういうんじゃない。

 俺は狼男から完璧に逃げ切れるクラスの本気の隠密が欲しかったんだ。うん。


 ……


「あ、でも隠密能力全部とかって、いいんですか?」

「いいともいいとも、もうワシがもう能力を使う事もなかろう。

 中途半端にあるより無い方が分かり易いわ。」


「……それでは、落札額を白金貨2枚に変更。

 譲渡する力を『覗きをして……』失礼しました。『隠密能力全て』に変更を行って宜しいでしょうか。」


 おい。女係員。

 覗きをしても気づかれない能力とか言おうとしたな?

 違うぞ? 俺は別に覗きをしようとか思ってないぞ?


 まぁ……ビデオカメラを使えば…………いや、何も考えてない。俺は何も考えてないぞっ!


「異論ありません。」

「異論はないのう。」


「これにて交渉内容は確定しました。お疲れ様でした。

 出品者様はこれよりスキルの抜き取りを行いますので、退席後案内に従ってください。

 落札者様は退席後、案内に従って精算を行って頂き、スキルの受け渡しまでもう少々お待ちください。」


 案内に従い部屋から出て、係りにエイミーを呼び出してもらい別室で精算を行う。

 その後また、案内に従って待合室に移動しオークションに参加して落札できた事をエイミーに話しながら待つ。


 待合室にはその他の落札者も居て、皆一様に嬉しそうな顔をしているのが印象的だった。

 きっと俺もそんな顔をしているのだろう。


 能力を金で買える。

 素晴らしいじゃないか。


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