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パソコンが異世界と繋がったから両世界で商売してみる  作者: フェフオウフコポォ
新世界生き残りの為の自分磨き編

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72話 オークション初参加 【挿絵あり】

「ふふん。」

「はい?」


 ウサミミビッチがドヤ顔しながら得意げにメモ帳とシャーペンを見せつけるように持っていて、オークション参加しに来た俺は意味がわからず首を捻ることしかできない。


「ふふん。」


挿絵(By みてみん)


 再度誇らしげにドヤ顔をされ、俺が逆方向に首を捻った瞬間にエイミーに軽く肘で突かれ、ようやく何を言わんとしているのか気づいた。


「あぁ! アンジェナさん。シャーペンとメモ帳が配給されたんですね。」

「はいっ、そうなんです! うふふふ。これは本当に便利ですね。」


 ニッコリと微笑むウサミミビッチ。

 どうやら正解したようだ。


 アンジェナと、アンジェナの上司の……クラ‥ムだっけ?  には、ギルドで売れそうな商品を事前に見せたりして反応を見させてもらっている。

 特にアンジェナは素直な反応を見せてくれるので、ゴードンが『この価格帯までは行けるで!』という判断指標になっているのだ。


 そんなアンジェナの反応を参考にギルドに販売したシャーペンとメモ帳だが、「安い……いや高い! いや…でも……」という値付けとなった為、受付の手元まで回るようになるのに時間がかかったという事だ。


 アンジェナドヤ顔は『前々から知っていた品がようやく手元に届いて使えるようになって嬉しい!』という感情から生まれたドヤ顔だったらしい。


 最初のウサミミビッチのイメージは悪かったけど、こうして話をしていると素直でいい子なんだよな。

 そろそろちゃんと心の中でもウサミミビッチじゃなくてちゃんとアンジェナって呼ぼうかな? と、一人思い悩む。


「で、イチさんは今日はどんなご用件で?」

「あ。そうだった。

 えっとスペシャルギフトのオークションに参加に来ました。」


「開始まで時間がありますが随分と早いですね?」

「えぇ初めて参加するので色々と聞きたい事もありましたので。」


 オークション参加料を一人分だけ支払ながら、アンジェナにこれまでに集めた情報があっているか確認する。


 アンジェナ曰く、オークションの内容は会場に入ってから競りにかけられるスキルの数とその種類が発表されるだけ、その後1つずつ能力が発表されて競りが行われる。

 通例では最初は安価な能力から始まり、後半に行くほど高価になりそうな能力が出てくると言われていて、何が出品されるのかは事前に発表されない。との事。それくらいしか知っていなかった。

 そもそもの話、スペシャルギフトのオークションは専門のギルド職員が対応するようで、一般事務のアンジェナが知る由もないらしい。

 少し申し訳なさそうに「これ以上は会場のギルド員に説明を聞いてほしい」と言われ参加証のようなカードを渡された。


 カードを受けとりながら考える。


 通常のオークションであれば高値で売る事が目的だから目録は発表されて当然だがそれが無い。狙いが定まっている方が高値になり易いのに何故発表されないのだろう。

 ……想像だが、決め打ちさせない理由は、きっと戦う者の力の全体的な底上げにある為ではないだろうか。

 どうしても欲しい能力や目当てがあるのであれば、それが出品されるかどうか耳ざとく調べるなり伝手を頼るなりすればいいのだろう。そんなことも出来ないような腕の者は目当ての能力の参加資格なしと取られても仕方ないという感じだろう。


 そんな事を考えているとアンジェナが事務的な口調で続ける。ちょっとした茶目っ気はありつつもお仕事はきちんとするメリハリのある子なのだ。


「参加証を持っている方だけが会場に入る事が出来ます。

 1名様分の料金でしたので、お連れ様は別室でお待ちいただく事になります。

 お連れ様も会場に入る場合は別途参加料をお納め頂きますが、いかが致しますか?」


 少し悩んで横目でエイミーを見る。エイミーはオークション自体には参加しないので見学するだけ。その見学だけに果たして5万円分の銀貨を払う価値があるのだろうか。

 じっとエイミーの表情を見る。俺を見返すエイミーの目を見て、どっちを選んでもハズレな気がした。


「……俺一人でいいです。」


 何故なら、エイミーの顔が『ご主人様にないがしろにされる私 ハァハァ』ってツラをしていたからだ。

 参加料を払ったら払ったで『ご主人様に大切にされる私 ハァハァ』ってツラをしたに違いない。


 まぁ……エイミー美人なので…悪い気はしないのだが……なんというか……


「会場は栄育院となります。」

「へ~。あそこなんですね。」


 アンジェナに別れを告げ栄育院へと向かう。

 もちろんスイッチバックの坂道を前に


「この坂道は大変じゃないですか? なんなら私に乗り――」

「ません。」


 坂を普通に歩いて登り終えると偶然にも、ちゃんと衛兵をしているギャビィと久しぶりに会ったので、ちょっと談笑をしてから栄育院へと入った。


 相変わらず学校のような印象を受ける栄育院の入口に入ると、テーブルが設置されてギルド員と思わしき人間が複数名おり、とりあえず目についた人に参加証を渡す。

 その職員に中へと案内されるが、参加証の無い馬メイドのエイミーは他の職員に別室へドナドナされていった。どうやら付き人用の待合室も準備されているらしい。


 到着した会場は、檀上に向いたイスが並べられており好きな所に掛けていいとの事。

 比較的早い到着だったにも関わらず、既に数人のオークション参加者が腰かけている。


 座る前にギルド員は俺が初めての参加であるかを確認し、参加方法を説明をしてくれた。


 まずオークションが始まると今回の競りにかけられるスキルの数と種類が公表される。

 そして各スキルごとに順に競りが開かれるのだが、最初に『どんなスキルであるか』『そのスキルをどの程度譲渡するのを約束するか』『競りの開始価格』『入札最低単価』が説明される。


 それを聞いて落札したいと思った場合は『落札したい金額』を手を挙げて口にすれば良い。

 口にした金額は復唱され訂正しなければキャンセル不可能となり支払義務が発生する。


 支払という言葉が出て、ドナドナされた馬メイドのエイミーが俺のお財布であることを思い出し、エイミーがいないと対応できない旨を職員に相談すると、オークションが終了時の後払いで良いとの事で胸をなで下ろす。


 アニから仕入れた情報を擦り合わせをする為に、さらに質問をすると、基本的に序盤~中盤は『交渉』の案件、終盤に『強制』もし、ある場合は最後に『剥奪』の案件が出てくる事が多いらしい。


 剥奪も能力の内容に寄っては強制と前後する事があるらしいが、ここ最近は強制が出てくる事も少なくなっていて、剥奪も出ていないので気にしなくてもよさそうだ。


 『交渉』について、分からないことも多く開始まで時間もあるので、どのような取引になるのか聞いてみると、職員は例えも交えて丁寧に教えてくれた。


 出品者である譲渡人が火の魔法を5連続で撃てる能力を持っていたとする。

 そして、出品する代わりに現金で白金貨4枚が欲しい。だが、自分から能力が完全に消えてしまう事も避けたい。


 そこで『火の魔法』を『4連続で撃てる力』を『白金貨4枚』で出品したとする。


 しかしその時に入札参加者の欲する能力と対価が合わない可能性があり、オークションに参加しても誰も入札しなかった場合、まったくの無駄足になり出品側の参加料が徴収されて丸々損をする形になる。

 なので出品者側の能力の譲渡人としても、入札しやすい開始価格に設定する必要がある。


 では『火の魔法』を『1発撃てるくらいの力』それを『白金貨1枚』で出品してみることにする。


 これで出品する場合、安価に能力が手に入る為、入札される可能性が高くなるが、出品側が目的の金額を手に入れるにはこの入札を4回行う必要がある。


 だが出品者側とて参加料だけで参加できるわけではなく、成立した場合には成立額により一定の割合で手数料が差し引かれた金額になってしまう。その為、入札に参加する回数は可能な限り少ない方が良い。

 その為、『交渉』の出品においては、


 『火の魔法』を『1発~4連発撃てるくらいの力』を『白金貨1枚』から出品する。


 出品者と主催者は、交渉での出品にあたり前もって相談し4連発私も手良い最高落札希望額を設定する。主催者であるギルドがデータ等を基にして高すぎない適切な額を説得する事が多いらしい。


 では2発、3発の境目はどうなるか。

 これは落札者と出品者、そして主催者の3者での交渉になるのだと。

 

 なんせ事前に細かく取り決める事のできない能力も多く、最低価格の最小値と、最高価格の最大値。ピンとキリでしか考えにくい為なのだとか。


 例でいえば、白金貨1枚の落札で1発撃てる、4枚以上の落札で4発連続で撃てる能力と設定した場合、落札額が白金貨2枚と金貨7枚で落札した場合にどうするのか。という感じだ。


 出品側としては能力は出来るだけ渡したくないけれど、お金は欲しい。

 落札側としては大きな能力を出来るだけ安く欲しい。


 そこで交渉などで「もう金貨3枚を足して白金貨3枚ならば3発連発の能力を渡せるけどどうだ?」など、お互いが納得できる線を擦り合わせするとの事。


 その他、例えば出品者が希望の家を建てる為に4枚の白金貨が必要だった場合、白金貨2枚と金貨7枚で落札して、落札者が白金貨4枚相当の家を白金貨2枚と金貨7枚で請け負って建てる。という変則的な約束をすることも可能なのだそうだ。

 

 もちろん、ここで交わされた約束事を反故にするような事があった場合『処罰』の対象となるとの事。

 『処罰』の内容や例を興味本位で聞いたが「後悔する程度です」と、詳細は教えてはくれなかった。


 また『交渉』の案件については、同一のスキルが重複して出てくる事もあるらしい。

 『強制』については、犯罪者の力を削ぐ為の物だったりするし、『剥奪』に関しては、その能力に関わる全てを奪う残酷な物なのだとか。


 大まかに理解が出来たので、オークションが始まるのを大人しく待つ。

 やがて会場の席は9割程が埋まり、壇上に男が現れオークションの開催が宣言された。




【アンジェナ イラスト】

もじゃ毛 様

http://www.pixiv.net/member.php?id=3344017

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