54話 ボールペン1000本納品するよ!
本日4話目
自分の部屋に物を運びながらアニの魔法を使っている撮影で、いい動画を撮る方法を考える。
動画のメインは何といっても『魔法』。
見た目が派手な魔法を考えてもらうよう伝えているし、きっとどんな魔法であれ、かなりのインパクトがあるはず。
動画でアップしても見た人は『CG』だと思うだろうから『素人とは思えないCG』とかの認識が広まるだろうから、問題は無いだろうし、むしろそれが呼び水になってアクセス数が増えるんじゃないだろうか……
なにより『アニ』という存在自体が美女過ぎて見栄えが良いから、それだけでもアクセスが見込めるし、そっち方面を強化してもいいのかもしれない。なんせ、できるだけ派手な魔法を使ってもらう形でお願いはしたけれどどんな魔法なのかは分からないから、思いの外しょぼかった場合のアクセス稼ぎも考えておいた方がいいだろう。
そうだ。最初にインタビューっぽく使う魔法について説明してもらって、それを撮影するのがいいかもしれない。そういう動画もやっぱり俺がビデオを手持ちで撮るしかないよな。
魔法が当たるところとかも俺が撮影するんだろうし……
ん~……全体を撮っている絵とかもあった方がいいよな。そうすれば俺がズームだのアウトだの操作を間違えてたりしても誤魔化す事ができるし。折角撮影した映像も無駄にならない。
となると、定点で撮影しているカメラがいる。
手持ち用と定点撮影用のカメラ。定点撮影はできれば2台くらい欲しい。
1台はアニと魔法を当てる目標が入るような、全体を見渡せるポイントから撮影。
もう1台は魔法がぶつかる対象の変化を定点撮影する。
で、俺がアニを手持ちで追って撮影する。うん。これならきっと良い映像が取れそうだ。
ってことは、どちらにしろ三脚とカメラが足りない。
納品が終わったら一度日本に戻って購入した方がいいな。うん。
最初から良い物を取る為にドンといこう。なんせ経費で落ちるんだ。
あ。でもこの場合『撮影している俺の姿が映り込む』のが問題だな。
編集してもらうか? ……いや、そこまで技術的に加藤さんにやってもらえるかわからないし俺が編集する事になったら面倒だ。
となると……姿を消す魔道具を使って撮影出来れば、俺が映り込む心配もないんじゃないか?
『撮影してるはずなのに撮影してるやつ映ってねーからCG!』って思われれば、それはそれで都合いいしな。
うん。今日アニに姿を消す魔道具についても聞こう。
あと、出来れば手伝ってくれるアシスタントも欲しい……けど流石に難しいよな……
まぁもし動画撮影が本格的に必要になったらオーファンに手伝いを頼むか。
いや……それよりブライアンに聞いた人材派遣っぽい奴隷の小間使いのレンタルを検討したらいいかな? たしか結構安かったもんな。
もしくは奴隷を買うってのも視野に入れるか?
ん~……買ったとしたら、奴隷に常にビデオを持たせて異世界探索気分とかを味わう動画とか作ってもいいよな。
あ。すっごい楽しそう。
なんてことを考えていると、荷物を全て部屋に運び終わっていた。
流石にどれもこのままではモニターを通らないので、ボールペンはダンボールから出し10本入りの箱を机に積み、チョコもダンボールから出して並べ、歯ブラシはビニール袋に適量ずつ入れておく。
身支度をしてアプリを起動。
ニアワールドにつながると、作業場ではなく店に出ていたアデリーを呼んで協力してもらい次々と受け渡し、買った物を全部部屋へと運び込む。
最後にアデリーに卵を1パック持ってきて渡し自分もニアワールドへと移動する。
「イチ! イチ! スゴイ量ね! ね? この歯ブラシは私が売る用って事?」
「あぁ、うん。ちょっと仕入れがし易くなったから多めに仕入れてきた。 鉄銭2枚くらいが卸値だから無理ない範囲で値付けして売ってくれたら嬉しい。」
「うふふ。まかせといて。」
ボールペンが10本入った小さな箱を手に取る。
「で……今日はコイツを全部ギルドに納品する為に運ばなきゃいけないんだけど……ちょっとくらいお金かかってもいいんだけど、なんかいい運ぶ方法ある? 俺オーファンに頼むくらいしか思いつかなくって。」
「ん~~。そうねぇ。 私が縛ってひとまとめにすればイチ一人でも運べそうな気もするけど?」
「ん?」
「ほら、棒の両端に荷物を糸でくくりつけちゃって、その棒を肩で担ぐの。」
「あ~! それいいかも。 じゃあ、棒があれば良いのか……家に伸縮タイプの物干し竿あるから、ソレ持ってくるよ。」
アプリを起動し、家から150cmくらいで、捻ってひっぱると倍ぐらいまで伸びる物干し竿をアデリーの部屋へ移す。
アデリーはまず俺が運びやすいように10本入りの箱を10箱をひとくくりにまとめ、さらにソレを5セットずつ糸でまとめていく。
2セットにまとまったボールペンをアデリーが1階へ運び、俺は物干し竿を持ってついていく。
1セット500本のくくりにまとめた束をアデリーが糸で、物干しざおの両端に括り付け、アラクネ謹製ボールペン運搬用天秤棒が完成した。
「いや~。アデリー助かったよ。こういう方法もあったんだね」
「フフフ。イチが喜んでくれて嬉しいわ。」
一度持ってみると全然余裕で運べそうに感じる。軽い。
「納品終わったら帰ってきてチョコも運ぼうと思ってたんだけど、もしかしたら、チョコも一緒にくくれちゃう?」
「ええ。イチが運べるなら問題ないわ。」
アデリーが2階からチョコを持ってきて、同じように2つに分けてまとめ物干し竿にくくりつけてくれた。うん。持てる。なんかこういう原始的な運搬方法をしてると昔の人になった気分になって楽しい。
「じゃあ納品行ってきます!」
「いってらっしゃーい。」
アデリーが手を振っている姿を背に、意気揚々と天秤棒を担ぎギルドへ向かう。
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軽い軽いと思ったけれど、中央広場の手前まで実際運んでいると……結構辛い。いや、ぶっちゃけかなり辛い。
せめてタオルなりなんなりをクッション代わりに棒と肩の間に入れておくべきだった。あとチョコは欲張り過ぎた。
担ぐ肩をかえつつ後悔しながら運ぶ。
昼なので太陽も当たるようになっていてツライ。
でも地面にボールペンの箱を置いて汚れても嫌なので休めない。
こんなことならオーファンに頼めばよかったと後悔しながら歩みを進め、ようやくギルドへと辿り着く。
しんどさ120%でギルド内を見回すとギルド内は結構賑わっていて、残念な事にアンジェナは接客中だ。
だが、俺はもうツライ。
早く置きたい。
アンジェナの手が空くのを待ってられない。
気が付いたら自然と
「ボールペンっ1000本っ! 納品にきましたっ!
だ、だれか! 運ぶのてつだって~~っ!」
と大きな声を出してしまっているのだった。




