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パソコンが異世界と繋がったから両世界で商売してみる  作者: フェフオウフコポォ
新世界の調査と基盤作り編

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47話 飯屋エラドの親子はやり手

本日5話目




 宴会の始まりは俺が4リットルウイスキーを机に置いた途端に、その量を見てすぐさま口ひげハゲが「おいみんなぁっ! 珍しい酒があるらしいぞ!」と吠え、周りを巻き込んだことから始まった。


 このヒゲハゲ。やり手だわ。


 酒が入ればツマミが欲しくなる。宴会にでもなればそりゃあ儲かるだろう。

 俺をうまく利用して儲ける算段をすぐさまつけやがった。


 もしかすると成り行きだったのかもしれないとは思うけれどもね……まぁ、ノリのいい人は好きだ。


 このニアワールドには、ギルドの依頼をこなして金を稼ぐ冒険者達がいる。


 アイーシャのように店に勤めていたりするヤツらは、よく昼ごろに食べに来るが冒険者はご飯を食べにくる時間もバラバラだし、時間の自由もきくから混む時間帯をさけて食いに来ることが多いだろう。

 俺とアイーシャが入った頃も、少しピークを回ったような時間帯だったが、冒険者達がまばらに見えていた。


 アイーシャプレゼンツ、提供俺。のウイスキーを、エラドのハゲが一口飲んで大袈裟に『うまいうまい』と騒ぎ、聞き耳を立てていたらしい隣の冒険者に勧めてソイツにも水割りを飲ませた。


 冒険者は情報に敏感だから、そういった聞き耳を立てているのもある意味当然の事だ。

 そうすると、店にいた冒険者達が無料の水割りを「俺にも」「俺にも」的にたかり始める。だがウイスキーは無料でも水代はかかるわけだけどな。


 でもまぁエールよりは安いし、なにより珍しい味わいの酒。なによりエールよりも飲みやすく食事に合う酒だ。


 となるとどうなるか。


 冒険者ってヤツラはギルドで依頼をこなして金を稼ぐからオフは自分自身で決められる。むしろ働く日を自分で決めることができる存在。ある意味毎日が日曜日だ。


 ただ酒で、しかも珍しい酒が飲める事はすぐさま拡散され、あっという間にどうやって聞きつけたのかわからないくらい冒険者達が店に集まり始めて宴会になってゆく。


 その様子を見て稼ぎ時が始まると感じたエラドはすぐに厨房に引っ込み商談は終了。

 ただ俺としても、ウイスキーの味が一気に広がったので目論見としては大成功と言える。


 それにウイスキーの礼としてエラドは食べた刀魚を無料サービスにしてくれた。原価的に考えればきっとイーブンだ。損なく宣伝できたのだから最高だろう。


 結果に満足しながらエラドの店を出た。


 店を出る頃には、水割りを飲んで騒ぐだけの宴会ではなく、誰がきっついストレートを飲めるかといった冒険者達の度胸試しまで始まっていた。


 もちろんニンニは、初ウイスキーで舌がしびれたヤツに水を売る為なのだろう。しっかりと動き回っている。


 『飯屋エラド』親子揃ってやり手だわ。


 その様子を店の外から眺め失笑する。


「いやぁ、大成功だよアイーシャ。

 ここまで進むとは思ってなかった。本当にありがとう。」

「え、でもエラドさんと商談は進んでないのにいいの?」


「だって見てよアレ。

 絶対に次に俺一人で店に行っても向こうから聞いてくるって。

 『あの酒はもうないのか? いくらだ?』って絶対聞かれる。」


 それを想像するとニヤつかずにはいられない。

 この様子を見ていると一度に20リットルとかも楽勝で納品できるんじゃないだろうか?


 4リットルを銀貨2枚で売りつけるつもりだったから、それが売れれば金貨1枚だ。

 うははは。笑いがとまらん。


 ニヤニヤしながら、ふとアイーシャを見ると何かを考えているような仕草をしている。

 気になって見ていると考えがまとまったようで俺に向き直るアイーシャ。


「ねぇイチ。

 今日私が一緒にいて話をしたから、私がここに一人で来てもきっと同じことを聞かれると思うの。『ウイスキー注文したい』って。

 その時は注文聞いてイチに伝えてももいいの?」


「あぁ! 聞いてくれると助かるよ!

 そうだな……アイーシャが注文を取ってきてくれたら、金額に応じてアイーシャに手数料も払わせてもらうよ」


「ううん。それはいいの。

 だって今日もお礼のはずなのに、私いいもの食べて全然払ってないから。」

「ソレはソレ。コレはコレ。だよ。分けて考えてくれると嬉しい。

 それにお礼は、また今度アイーシャの時間がある時にお勧めの店とかに連れて行ってくれる方が嬉しいな。」

「そ、そう? わかったわ。楽しみにしててね。」


 アイーシャが笑顔で答えた。


「じゃあ、もしアイーシャが俺より先にエラドさんと会ったら、ウイスキーの注文を取ってくれるかな? 今日のウイスキーの卸値は銀貨2枚。」


「うん。まかせといて……で、その、もし注文を取ったら、どこに伝えに行けばいいのかな? ねぇ! イチってどこに住んでるの?」


 なんとなく頑張って聞いてきた感のあるアイーシャの質問内容に俺は笑顔を作りながらも、背中が泡立つのを感じずにはいられなかった。


 『アデリーの店で厄介になってるんだー』


 なんて言ってみろ。


 アイーシャがアデリーを知っていたら

 『え? イチって蜘蛛女の所に住んでるの?』

 知ってなくても

 『アデリーって女の名前よね。へ~。イチって女と住んでるんだ……』

 ってなって、ペロペロチャンスが著しく低下する!


 それよりなによりも問題はアイーシャがアデリーの店に来たら……だ! 最悪アイーシャペロペロの前にアデリーがアイーシャポリポリだぞっ!?


 考えろっ!


「あ………あぁ……えっとね…俺決まった所に住んでないんだ。風来坊ってヤツ? はは。

 だからさ、これから定期的にお店に顔を出すよ。ブライアンさんのLEDランプとかもあるからね。ハハハ!」


 アイーシャは少し寂しそうな顔をしたようにも見えたが、一応の納得をしてくれたようだ。


「うん。わかったわ。じゃあ、私そろそろ戻らないとダメだから行くね。今日は有難う。」

「こちらこそ。有難う。楽しかったよ。」


 手を振るアイーシャを手を振り見送ると、時々振り返ってコッチを見ててとても可愛い。

 早くペロペロしたいなぁと思いつつ、これからやるべきことを考える為に腕を組み右手を顎に当てて考える。


 当初の予定としては飯屋にパスタの提供も考えていたが、ウイスキーが先行した。ウイスキーの反応を見るとどうにも大きく動きそうに思えるから他の商材であるパスタは一旦保留にしよう。 なんせ試食品を作る必要があるのが、ちょっと面倒だ。


 で、今日は忘れちゃいけない事は、絶対にクリーンの魔法をかけてもらう事。

 谷間のおねーさんのアニが使えるから、アニが店じまいする前、アデリーの家に帰る前に絶対にかけてもらうんだ。


 そう『絶対』だ。


 で、後はアニにチョコの試食追加分を渡すのと、可能なら売りつけ……値段の相談とかもしたいな。

 黒髪にしたい無能系衛兵のギャビィを探し出して、髪染めの実験をしてもいいだろう。


 銅貨5枚くらい払ってもいいと言っていたから無料で実験させてやると言えば、あの無警戒な無能系衛兵ならホイホイついてくるだろ。


 ならば、これからまずは中央広場に行って、アニにチョコを渡して相談。そして必ずいつ頃まで居るのか聞いてギャビィをアニの所に連れて行って髪染め実験……だな。


 ここまで考え、次に考えるべき事で思わず溜息が出る。


 ニアワールド内の販売は順調だ……順調すぎる。

 明日はボールペンの納品があるくらいだからな……


 まだ仕入れに余裕はあるが、何といっても現実世界で金が入らない事には近い内に仕入れが途絶える事になりかねない。


 仕入れが途絶えれば、これまでに築いた売り先からのクレームにもつながる。

 それは値段にも影響する可能性もあるし仕入れ元としての信頼が弱くなる事にもなる。


 今はまだ遠い事だが、ウイスキーが週に32リットルとか出るようになって見ろ。4リットルの仕入れが4000円だとしても、32000円かかる。


 月で計算するなら128,000円。

 LEDにしろ、チョコにしろ、人気が出て取扱い量が増えれば、その分仕入れ値だってかかるようになる。


 やはり最大の課題として、日本で金を稼ぐことが絶対に必要だ。

 つまり、ニアワールドにしかない物で日本で金になりそうな物を探さなきゃならない。


「超ハードルたけぇなぁ……」


 溜息をつきながら売れる物を探しに中央広場へと向かう事にした。

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