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パソコンが異世界と繋がったから両世界で商売してみる  作者: フェフオウフコポォ
新世界の調査と基盤作り編

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42話 突発は突発。日常は日常。

本日8話目



 別室を出て、アンジェナがギルドの依頼として『インク壺が無くても書くことのできるペン1,000本』を金貨5枚で発行してくれた。


 といってもクエスト内容が読めないので掲示板に貼り出されても内容の確認ができないのだが、アンジェナの性格上おかしな事はしないと思う。


 急いで自宅に戻りネットから発注処理をしたかったが、焦りすぎるとさっきの5000本とか言ってしまった系の失敗をしそうだったので一度腕を組み右手を顎に当てて熟考する。


 ……2,000本って言っとけば、きっと問題なかったんだよな。

 2,000本だったら金貨10枚の取引だった。


 あ~あ。もったいない……


 が、過ぎた事を悔やんでも仕方がない。

 次は美味しい餌がぶら下がっても、きちんと考えてから食いつけばいいだけだ。


 携帯を見ればまだ10時ちょっと。

 余裕はある。しっかりと段取りだ。


 まずネットの発注だが普通の個人が使う通販サイトだと対応しにくいだろう。

 となれば業務用通販サイトの方が間違いない。

 であれば会社経由での発注で決まりだ。


 加藤さんに『全額俺が負担するから、発注だけしてくれ』という形にしたら動きもスムーズだろうし引き受けてくれるだろう。今の時間なら明日の午前着でイケる。明日中の納品も可能だ。


 量が量だからアデリーの家に一旦100セット置かせてもらうとして、ニアワールドでの運搬は……オーファンに頼もう。

 袋に入れて一人で運んでもいいが大人数で運びこむ方がインパクトも強いだろう。


 オーファンにはムリなく持てる量として10セットくらいずつ持たせるとして、10人に依頼したらいいな。

 運ぶ費用は鉄銭1枚だし10人でも銅貨1枚分で済む。


 それに人数をかけた方が大事な物っぽい印象もつくだろうしな。

 なんせ大手への初回の納品。これを機会に他の注文があっても不思議じゃないから、バッチリ決めたい。


 後、色違いのボールペンと油性ペンと紙をおまけに付けよう。

 これらも使ってれば絶対欲しくなるはずだから先行投資だ。


 さ。やることが決まったら後はさっさと行動。まずは注文をしよう。

 アデリーの所まで行かずとも、トイレか路地裏で飛べばいい。


 さ。動け動け!


「アンジェナさん。ギルドってトイレってあります?」

「ございますよ。あちらをまっすぐ行った所です。

 ただし有料ですので入る際には鉄銭1枚を入口の者に渡してください。」

「有難うございます。」


 教えてもらったトイレに向かうとオーファンと思わしき子供が入口の前で立って通せんぼしていた。

 鉄銭を1枚渡すと片方の入り口を通せんぼして、もう片方へ入れるようにしてくれたのでそっちに進む。


 入るとそこは個室しかないトイレで個室が4つあり、どれもドアから足が見えるようにできているので、他に利用しているのは誰もいないのが確認できた。


 個室に入るとやはり下水道直結型で現代日本に慣れている身としては、お世辞にもキレイとは言えないが、金をとるくらいだ。上等な部類なのだろう。

 ……とても使う気にはなれないけれども。


 トイレをしたかったわけじゃないので個室に入りアプリを起動。

 枠が現れ自宅へと戻り、直前がトイレなので靴だけ机や床に着かないように気を付けて脱ぎ、加藤さんに携帯で連絡をする。


「あ、加藤さん。ちょっとだけ、お時間大丈夫ですか?

 えっとですね。すみませんが業務用通販サイトでボールペンを買ってほしいんです。一番安い10本セットとか100本とかのヤツで。1000本。」

『はぁ? ボールペン1000本ですか?』


「ええ。費用については一旦会社で立て替えて頂いて明日かかった分現金で払いますので。」

『まぁ、立て替えであれば構いませんが……』


「あと、赤色ボールペンも10本、油性ペン5本、A4の紙1,000枚もお願いできますか?

 明日には手元に欲しいんです。」

『わかりました。注文しておきます。……社長。そんな数、一体何に使うんですか?』


「慈善事業です。」

『……はぁ。』

「じゃあ宜しくお願いします。」


 微妙に納得のいかなそうな返事の後、電話を切った。

 これで手配は大丈夫だろう。


 また、パスタを作りに戻った時に、念の為一度会社に顔を出して発注履歴と値段だけ確認しよう。

 家に戻ったついでにトイレに行って用をたし、またアプリを起動しギルドのトイレへと戻る。

 トイレから出ると特にオカシイように注目を集める事も無かったので、そのままギルドを後にした。


 明日には金貨5枚が手に入ると考えるとウキウキせずにはいられない。スキップしたくなるくらいだ。

 とはいえ、突発の金儲けのネタ以外にもきちんと撒いた種の確認は必要だ。降って沸いたような金はすぐなくなるもんだ。


 魔法の巻物売りの谷間のおねーさん。アニに会う為に中央広場へと向かうと、中央広場は、お昼の前の買い出しで賑わいを見せている。


 人にぶつからないように避けながらアニの下に向かうと、辿り着くまでに3人の子供に『チョコください』と言われたので、とりあえずチョコをあげておく。

 そうこうしてる間に、アニのいる屋台の前にたどり着くが、アニは微妙にやる気がなさそうだ。


「こんにちは。儲かってますか?」

「あぁ。昨日はどうも。あの後大変だったわ。それと、儲かってるように見えるかしら?」


 世間話がてらアニから情報収集をしてみると、聞けば、魔法の巻物はアニや知り合いの魔法使いが作っているそうだが売れ行きは芳しくないと言う。

 売れない一番大きな理由としては『外の敵が強すぎる為、弱い魔法の巻物の需要が無い』かららしい。

 

 そもそも魔法使いなら外で戦ってギルドの依頼をこなす方が確実に儲かるだろうに、なぜ物売りをしているのかといえば、俺も襲われたジャイアントはこの辺でよく出没するモンスターらしく、これが魔法使いとの相性がとても悪いらしい。


 ジャイアントは速い動きで攪乱しつつ傷を負わせていくなりの戦い方が定石で、もっとも気を付けないといけない事は『攻撃を食らわないこと』。

 一撃を貰えば防御重視の人間じゃない限り死ぬかもしれないダメージを受ける可能性もあるらしい。


 ただ動き自体は緩慢なので、魔法使いであっても気を付けていれば当たる事は無い。だけれど魔法使いは詠唱などで『立ち止まる』これが非常に分が悪いのだそうだ。


 ジャイアントが出るようになる以前から、この街に居を構えていて外に出にくくなってしまった今、食い扶持を商売で賄おうとしているのだと。

 魔法使い仲間の中で一番衆目を集めるアニが、所謂いわゆる客寄せパンダとして、販売を任されているのだそうだ。


 谷間を露骨に見せているのもその一環と推測できる。


「時々売れるのは回復魔法のみよ。」


 アニは乾いた笑いを浮かべていた。


「へ~。じゃあ良い商材があったら扱わない事もないって感じですかね?」


「そうねぇ。今は時々ギルドの依頼で大丈夫そうなのを仲間がやってるから、なんとか持ってるけど……流石に無理させてると思うし…売れる物があるなら嬉しいわ。」


「じゃあ昨日のチョコを20個あげるから、試しに売ってみるのはどうです? 値付けとかも任せるから売れそうだったら俺から買ってくれません?」


「あぁ。アレなら……そうね。売ってみるのもありかもしれないかな。……買いたい人もそこそこいそうだし。」


 アニは周辺の屋台をチラ見している。

 どうやら普通のお客よりも屋台の人間に売りつける気みたいだ。

 卸値を伝える為にアニの耳に顔を近づける。


「20個で銅貨1枚くらいでどう?」


 顔を離すと、すぐにアニはウィンクを返し「乗った。」と言い笑顔を見せた。

 とりあえず、チョコの屋台販売モニターゲットだぜ。


 後、気になっていたことを確認しよう。


「ねぇ。アニって。クリーンの魔法は使える?」


 アニは軽く笑う。


「クリーンって魔法は、水と風と火の複合魔法よ。

 簡単そうに見えても実は結構素養が要るのよね。

 まぁ初歩の初歩だから、当然私は使えるけど。」


 もう一つの案の黒髪染めは、会社に行くついでに髪染を買って、無能系衛兵を探して連れてきてから改めて提案することにしよう。

 なんせ実験台が必要なんだもの。


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