40話 ウサミミビッチに手紙代筆依頼
本日6話目
「ありがとーっ!! すっごく嬉しいわ!」
あばばばばば。クンカクンカ。
アイーシャイイニオイがするよ。クンカクンカ。
抱き着かれている身体、柔らかい感じがするでござるよ。クンカクンカ。
ていうか、俺の股間の位置がアイーシャの胸にジャストフィットな高さなんですけれども? これはいいのでしょうか? 宜しいのでしょうか?
うん。俺の腰回りから感じるアイーシャの胸の感触。
うんうん。コレは無いように見えて、しっかりある系だね。うん。
というか、意外といい感じに膨らんでるよね。手にしっかり収まりつつも、ちゃんと揉めそうなくらいの……
あ……マズイ。
血が巡る。
アイーシャは自分の胸が当たっている所が、段々と膨らむのを感じたのか、一瞬『ん?』という顔をした後、ハっとして赤くなりながら離れ微妙にアワアワとしだした。
俺は少しだけ腰を引き笑顔をつくる。
「すみません。」
謝りつつ微妙に笑っているブライアンに金貨とアイーシャにきちんと渡してくれた事の礼を言う。
納品物も問題無かったようで、少し恥ずかしい思いをしつつ店を後にした。
……ちなみに店を出る時のアイーシャは顔を赤くしながら俯いていた。超可愛い。どうしようほんと。
少し前かがみになりながら、ギルドへ向かう。
中央広場も朝が早いにも拘らず、既に屋台は勢ぞろいしていた。
子供が一人チョコくださいと言ってきたので一個あげてギルドへ入る。
ギルド内ではアンジェナが接客対応をしているようなので、取り合えず依頼が書いてある掲示板を見て時間をつぶす事にした。
うーん。
物語の主人公も言っていたが、アレだな。文字がさっぱりわからん。
言葉は現代日本並みに通じる癖になぜにこうも文字だけ違うんだろうか?異世界ってすげぇなぁ。
「よかったらご案内しましょうか?」
首を捻りながら掲示板を見ていると話した事があるネコミミさんが声をかけて来てくれた。
「あぁ有難うございます。すみません。実はアンジェナさんにお願いしたい事があって待っているだけなんです。」
「ご用件をお伺いしても?」
「えぇ。私は字が不得手なもので勇者様への手紙を書いて頂こうと思いまして……」
「それでしたら、私でも対応が可能ですから代わりに承りましょうか?」
ウサミミビッチにボールペン売りつけて、ぼったくってやろうと思ってるからな……折角の提案は有難いがパスだ。
いや、ネコミミニャンニャン可愛いよ? 是非お願いしたいけど、ウサミミビッチをキャンと言わせなアカンねん。コレは使命やねん。
「有難うございます。
ただ、アンジェナさんにはカードを作る時からお世話をおかけしてまして手紙に書く内容もあまり大っぴらにしたいと思っていないので申し訳ないです。」
「そうですか。分かりました。
押しつけがましくてスミマセン。」
「とんでも無いです。親切に有難うございました。」
ネコミミショートカット娘がチラリとアンジェナの方を見てから俺を見る。
「アンジェナさん。美人ですもんね。ふふっ。」
小さく微笑んで戻っていくネコミミ。
いや、あんたもとんでも美人だっつーの。
なんてことを思いつつしばらく時間をつぶしていると、アンジェナの手が空いたのが目に入ったので向かう。
「おはようございます。昨日の件で代筆をお願いしにきました。」
「はい。おはようございます。
確か紙とペン、インクなどはお持ちになられるという事でしたね」
既に三つ折りにして封筒に入れておいた紙、日本語の本文を枠として書いてある紙を取り出し渡す。
日本では一般的なA4普通紙だ。
ただコピー用紙よりは少し厚めの紙を使っている。
「……驚くほどに白い紙ですね。それに、細かな飾りまで入って……破棄されるかもしれないのに良いのですか?」
「えぇ構いません。」
ボールペンをカウンターに置く。
アンジェナは興味を持ったようで俺の置いたボールペンを持つ。ちなみにノック式のノベルティで配られるような安物ペンだ。
「……これは?」
「あぁ、ちょっと借りますね。」
ノックしてペン先を出した状態にしてから、手の平にのせアンジェナに説明する。
「インクは既にこの中に入っています。
先端を紙に当てて書くとその都度インクが供給されますので、別にインク壺なんかを用意する必要はありません。」
自分の左手に丸を書いて見せてから、アンジェナへ差し出す。
興味深そうに手に取ってペンを持ち、自分の左手に何かしら書いてみている。
そして書いた物を見て俺に目を戻すと口が少し開いていた。
「便利でしょう?」
うぷぷ。
驚き崇め奉るがいいわ!
このウサミミビッチめ!
「……失礼しました。
それではお借りします。どのような文章を書けばよいでしょうか?」
あら。冷静なのね。ふんだ。
少し残念に思いつつ、前に考えた適当な内容を頑張って思い出す。
「えっとですね。
『私は便利な道具を集める事を生業としており、現在は勇者様のお膝元たる街に滞在させて頂いております。
勇者様の崇高なるご活躍を耳にする度、尊敬の念が起こり、ささやかではございますが、私の所有する道具を数品ですが献上したいと考えております。
まるで異世界で手にしたような摩訶不思議な遊具なども数品ございますので、是非、献上の機会を頂けましたら幸いです。』
という感じでお願いできますか?」
もちろん目的は枠で書いてある日本語の方。
『俺も日本人で、日本の物持ってるから買ってーな』が勇者に伝わればそれでいい。
「……かしこまりました。」
便利な道具という言葉でペンを見るアンジェナ。
反応としては悪くないから、きっと手紙は破棄される事は無いだろう。
何度か文章を口に出しながら書面化してもらう。
予備の紙も持ってきていたが使う事は無かった。
一度受け取り、封筒に入れて封をせずに渡す。
予備の紙は要らないので、捨てておいてくださいとアンジェナに渡しペンを返してもらう。
ちなみに料金は鉄銭5枚だった。
支払をしていると、アンジェナが何かを言いたそうにしているように感じられ俺はアンジェナが『ペン』や『俺』に対して興味を持っていると確信しつつ『さぁて、どうしてやろうか』と考える。
当初は売りつけてぼったくってやろうと思っていたが、今はアンジェナをイジめてやりたいという気持ちが強くなっている。そう。キャンと言わせたいのだ。
だからか、俺の口から出たセリフは予想外のものになっていた。
「さぁ~て、このペンはもう要らないな。捨てるかなぁ。」
アンジェナがカッと目を見開いた。




