表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パソコンが異世界と繋がったから両世界で商売してみる  作者: フェフオウフコポォ
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/166

1話 モニターの中に入れたら……


「モニターの中に入れたらいいのにな」


 デスクトップPCでBGM動画を流しつつ、別のタブでネット小説を読みながらボソリと呟く。


 今読んでいる作品は、トラックに撥ねられた主人公に対して、突然お気楽な神様が出てきて


 『いや~、ワシの手違いで殺しちゃったから、いっぱい特典つけて楽な生活が出来る世界に転生させちゃおうか? それとももう灰になってるけど、このまま死ぬ?』


 の流れで異世界に元の体の若い状態で転生。もちろん困った美少女とすぐに出逢って助け、その美少女に導かれるまま成り行きに任せるとトラブル発生。

 その内エルフやドワーフの女の子なんかまでどんどん巻き込んで大活躍、最後は嫁たくさんのキャッキャウフフハーレムを築く。そんな物語だ。


 ちなみに読むのは2回目。


 この小説は、なんといっても街や主人公の周りには悪いヤツが居ない。

 素晴らしい


 酒場でも気のいい連中ばかりで酔って絡むような奴なんか出てこない。

 もちろんピンチ演出用の山賊や貴族なんかも出てくるが、そんな山賊は


 「へへへ、死にたくなけりゃあ金目の物を置いていけ!」


 貴族も


 「ふん! 下劣なヤツが視界に入るんじゃない。目の前から消えてくれるかな?」


 とか、わざわざ分かり易い声をかけてくれるから『あぁ。要注意なのね』とすぐに分かる。


 定番のギルドについても銀行系のしっかりとした形で「おうおう、可愛いチャンネーつれてんじゃねーか」的に絡まれる事も無いし、優良な仕事も豊富に準備されている。

 金だって『それ、ただの右から左だよね?』の取引や『それ他の人も普通にやってる農業じゃねーの?』的なことをするだけで農政改革になったりして莫大な利益を生む。


 これくらい夢が見れると、読んでいて幸せになれる。


 本当にありがとう。ありがとう。

 やっぱり異世界最高!


 ……満足をしたはずなのに、一息つくと途端に思考が現実に引き戻されはじめ、そして『もし俺がこんな感じの物語に放り込まれたら……』と想像を始めてしまう。


 まぁ……まずはじめに美少女とは出会えないことは間違いない。

 例え誰かと会えたとしても間違いなくオッサンだろう。

 で、しかもそのオッサンにも山賊に間違われるか怪しまれるかで話なんて絶対にできない空気になる。


 なんとか町の場所を聞き出して、へとへとになって辿りつくと一文無しでどうしようもない。

 もし金があったとしても酒場に入れば丸々ぼったくられて文無しコース。例え食えたとしても腹を壊して死ねる。

 それに路地裏なんかに入ってしまえば、きっとチンピラに何も言われずに刺される。


 もしも貴族なんかの気に障ってしまったら、こっそりと抹殺指示をだされて命令がひっそり実行されて誰に殺されたのかもわからないような形で終わるだろう。


 定番のギルドは優良な仕事は選ばれた力のあるヤツがやるだろうし、金にならないゴミな仕事しか残らない。もちろんそういった仕事しかできないヤツラはゴミ扱いされる。


 商売で金を稼ぐのだって、まず商談のテーブルにつくことができない。

 普通に話も聞いてもらえないし騙されるのが前提になるだろう。


 もちろんそういった『騙されるのが前提の商売をしている連中』は、そりゃあ見事なキツネやタヌキばっかり。

 やっと交渉できても笑顔で主人公を助けるフリしながら全てを毟り取りに来るだろう。


 農耕なんかも良い作物があったとしても、育てる時間もかかるし病気も不作も盗難も頻繁にあるだろう。

 金になる前に死ぬ。

 『農薬も無いような農業なめんなよ』的な展開しか思いつかない。


 ……なんとなくわかったかもしれないが、俺はマイナス思考だ。

 世の中に希望を見いだせない。


 故に妄想の希望にひたり、精神のバランスを取っているのだ。



 うん。異世界万歳っ!



 ……



 小さく溜息をつき、ネット小説の挿絵を眺める。


 「……モニターの中に入れたらいいのにな」


 本日何度目かの呟きを口にした。

 もう完全に口癖になっている。


 不意にPCの画面がブラックアウトした。


 「ん?」


 PCのモニターのブラックアウトなんてものは、間違って電源を切ったか、PC本体との接触が外れたか、それともモニターのプラグがコンセントから外れてしまったか、ケーブルかモニターが壊れたか、俺の行いが悪いかのどれかだ。


 電源が入っている光は付いているので『コードの接触かな?』とモニターの後ろのコードを触る為に体をモニターに近づける。


 その瞬間


 モニターから手が伸びてきて俺の頭を掴んだ。


「え?」


 俺は何もわからない内にモニターの中に(・・・・・・・)引きずりこまれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ