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パソコンが異世界と繋がったから両世界で商売してみる  作者: フェフオウフコポォ
最終章 成金無双王編

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161話 公爵になった理由

本日3話目




 アデリーの返答を貰った後、久しぶりにアデリーの部屋に籠りきりになる二人。


 一つだけ違った事は、アデリーが受け身になった。

 あのアデリーが、しおらしく『あなたの好きにしてください』状態になったのである。


 超攻撃的だったアデリーが受けになるというのは、その事だけでも支配欲が満たされ至極ご満悦にならざるを得ない事態。

 さらに意外にもアデリーも『支配される気持よさ』があったらしく、それはそれは特に長い引き籠りになったそうな。


 部屋から出てきて、食事を取る際もぴったりと横にくっついては


「――ねぇ。イチ。ひとつだけ、わからないんだけど。」

「なんだい? 奥さん。」


「もう……だ…旦那様。」

「ん~~。いい響き。 チュッチュしちゃうぞう!」

「んもうっ。はい。あーんして。」

「あ~ん。」


 キャッキャウフフである。

 これが日本で行われたとしたら『リア充爆発しろ』の賛辞を、そこかしこから受ける事は間違いない惨事である。


「でね。だん……イチ。」

「あぁ、うん。なに?」

「なんで公爵になったの?」


 カツーン


 フォークを落とす。

 アデリーはその様子を不思議に思いながらも糸を飛ばし、フォークを拾う。


「え~~と、そのなんだ。え~となんだ。その……」


 汗をダラダラと流す姿を見て、アデリーはピンとくる。


「ねぇ……また…悪いこと考えているでしょう」

「いや……そのなんだ!

 え~~と、いや、別に悪くない事になるんじゃないかなぁ! うん。 世間一般的には!」


「あ……」

「ん?」

「もしかして……」


 ジト目をするアデリー。

 反射的に目を逸らす。


 ジト目で見られ続け、どうしようもなく目が泳ぎ続ける。

 そんな様子に大きくため息をつき。アデリーが口を開く。


「3日に1回。」

「……え?」


 ぶすっとしながらアデリーが再度口を開く。


「3日に1回は私の事を大事にしてくれるなら……許す。」


 ぷいっとそっぽを向きながらも、構って欲しい感を残した体で表現するアデリー。


「……いいの?

 ……側室持っても?」


「私が正室……本妻なんでしょう?

 そうしたいが為に公爵にまでなったっていうんだから……逆に止める方が怖いもの。

 だから3日に1回! ……コレを守れるなら許すわ。」

「あ、アデリー! 愛しているよぉーー!! こんなにできた嫁を貰えて俺は幸せだー!!」


「……約束したんだからね。本当に。」

「うん! 守る! 超守るぅーっ!」


 そう。

 公爵になった理由は、単純明快。


 『ハーレムを持っていてもおかしくない』


 そう意外と常識的な感覚を持っているアデリーを納得させる為だけだったのだ。


 権力には責任が伴う。

 つまり面倒事も増える。

 これまでのイチであれば、そんな事に首を突っ込むなんてことは考えられなかったが、ただただアデリーの

 『まぁ、公爵だし……仕方ないよね』

 の為だけに地位を求めたのだ。



 アホである。



「いよぅしっ! ヤルぞーっ!」


 何をやる気かしらんが、公認を得て欲望に燃える男がここに爆誕したのであった。



--*--*--



 商売、公務、プライベートと、これまで以上に忙しくなる日々。

 そして活動範囲が広がったことにより、さらに生まれる出会い。


 これまでには無かった貴族社会という荒波。

 そこに渦巻く奸計、策略、陰謀。


 善人が多い世界の中においても、地位や名誉を競い合う人間達には世間の善悪という判断や概念はあって無いような物。

 貴族の世界は、まったく別の常識が渦巻いている世界だった。


 すでにニアワールドにおいて戦いは遠い世界の出来事となり、今の貴族社会においては、女はより美しくなる為に、男はより認められ名声を集める為に動く。

 そんな中、元より金も力もある者がいきなり公爵として君臨したとなれば、凄まじい騒ぎとなる。


 そう。


 縁談。

 縁談。

 縁談の嵐。


 貴族社会の女性は美しい。

 元々美しい者が多い世界においても、さらに美しい者が競い合っている。


 もちろんその外見に惹かれる。


 ……だが、惹かれるだけ。



 貴族のような我儘な『大輪の華』より、気心が知れる『道に咲く花』の方が好きなイチは、やがてそれを疎ましく思うようになり、八百万商会の力、アルマン商会にゴードン商会の力を駆使し、やんわりと引かざるを得ない状況を作りだしていく。


 こうしてある程度慣れて落ち着くと、イチは、エイミー、アイーシャ、アリアを当然の如く側室とし、アデリーハーレムの面々で手を出し難かったメイド達、レノラ、ソフィリア、ベラ、エレン、キャシー達にも次々と手を出していく。ウハウハである。


 さらにニアワールドにやってきた黒髪の女、伊藤結香子、さらにアニ、アンジェナと、どんどんどんどん手を出し続けるのだった。

 さらに、こっそりと服を着ててもエロい人ルマナであったりと密会をしたり、お忍びで勇者の街に繰り出してギャビィと共に日々成長する天使……いや女神を眺めるなど、それはそれは忙しい日々を過ごす。


 そんな日々が続いていれば、アデリーと交わした『3日に1回』という約束も、


「4日に1回でいいか。」


「5日に1回でいいか。」


 と、いった感じで疎かになっていくのは仕方の無いことなのかもしれない。



--*--*--



 ――あっという間に月日が流れ、久しぶりにアデリーと揃った休みが巡ってきた。


「ねぇ、イチ。今日は日本に買い物に行きたいの。」

「あぁ、アデリー。たまにはいいかもね。」


 アプリを起動し新世界の風へと向かう。


「あれ? 久しぶり。アデリーさんも一緒って珍しいね。」

「あふぁあん。」


 日本に移動して、いきなり色魔と出会う。

 だが、連れている人がいつもと違うように感じ、じっくり見る。


「ちょっと待って……なんでカミーノが女の子になってるの?」

「いやぁ、最近はなんだか慣れが見えてきたから……ね☆」

「あふぅん」


「『ね☆』じゃないよ……まぁ、こっちも順調そうだよね……」


「まぁ、当然といえば当然じゃない?

 美男美女揃いの芸能事務所だもん。

 ファンクラブのグッズ収入だけでも十分成り立っちゃうよ。」


 新世界の風は、別部門として勇者のハーレムメンバーを中心とした芸能プロダクションを設立したのだ。


「ねぇ……イチ。ナディア様はいらっしゃるのかしら?」

「ぴぅっ!」


 俺の奇声にアデリーが変な顔をする。


「あぁ、アデリーさんゴメンね。

 ナディアなら居るんだけど、以前ナディアとイチさんで戦ってもらった事があって、その時やりすぎちゃって……多分イチさんのトラウマになってるから会いたくないんだと思う。」


 ナディアの殺気とインフェルノモードを思いだし、つい涙目になる俺。

 アデリーにしがみつき、コクコクと頷いて肯定し、早く出ようと引っ張る。


 『やめよう。やめとこう』


 を全力だ。


「あら……私の旦那様を虐めるだなんて……いくらナディア様とはいえ許せないわね。

 マドカ様。ナディア様のところまで案内をお願いしても宜しいですか?」


 ブルブルと首を振りイヤイヤを全力でする俺。


 『やめて! 行っても何もいないからやめて!』


 を全力だ。

 マドカは何かしら察したように頷き、そして元気に答える。


「うん。いいよ!」

「有難うございます。

 じゃ、行きましょう。イチ。」


 俺のことなどお構いなしに、俺を引きずり始めるアデリー。

 余りの嫌さにとうとう口が開く。


「いやだぁあああぁ!」

「こーら、イチ。あんまり騒がないの。」


 アデリーの発した言葉は、どこか懐かしく、力関係が逆転する以前。

 なぜか、昔アデリーを怖がっていた頃を思い出させた。 



 ――そしてその感覚は、正しかった。



 ナディアと戦い、そして勝利しているアデリーの姿があったのだ。


 最初は馴れ合いかと思った。

 が、どうにも途中から両者本気で戦っているように見え、そして勝ってしまったのだ。


 勇者パーティである別次元の存在のナディアを相手に、アデリーが、だ。


 思いがけない光景に、ポカンとし、勝手に言葉が出る。



「どうし……て」

「……イチも強くなったでしょう?

 私だって強くなれるわ。」


 激闘を終えて疲労困憊だろうに、首をコキコキと鳴らすアデリー。


「あ。

 ……この感じ……懐かしい。」

「約束を破るイケナイ子にお仕置きしなきゃいけないから……私も頑張ったのよ?」


「ぴぃ。」


 ニアワールドに連行され、久しぶりのアデリーバンジーを堪能させられる事になるのだった。


「も、もうハーレムメンバー増やしまぜんからぁぁああっ! ゆるしてぇぇええっっ!」

「は~い。よくできました~だ・ん・な・さ・ま。」


 プランプランする俺を引き揚げ、そんな俺を見ながら、ニッコリ微笑むアデリー。

 顔を引きつかせながら微笑み返す俺。


「でも、約束破った回数分は飛びましょうね~。まだ先は長いわよ~。」


 ポイっと放り捨てられる俺。


「いっやあぁあぁぁぁぁっ!! ぎょめんなぁあああああいぃ!」


 嫁に締められる公爵の声がニアワールドに響き渡るのだった。

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