表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パソコンが異世界と繋がったから両世界で商売してみる  作者: フェフオウフコポォ
ニアワールドの勇者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

141/166

140話 ニアワールドの勇者編 プロローグ

本日2話目

『努力が必要なチートだけど、やっぱり異世界ハーレム』


 俺の名前は海渡かいと まどか

 部活が終わって自転車に乗っていたはずだが、気が付いたら目の前にはオッサンが居た。

 オッサンというよりは爺さんだろうか。


 思い返してみるが……どうにもおかしい。

 確か自転車で坂道を下っていたはず――


「いやぁ。すまん! 突然で驚いておるじゃろうが。すまん!」

「……いえ。あの…ここは?」


「うむうむ。混乱しておるんじゃろう。すまん! お主は死んだ。」

「…………はぁ?」


「いやな。なんというか、そのな。え~っと……

 お主の記憶の途切れる直前に、自販機でコーヒーを買っているオッサンがおったじゃろ?」


 記憶を思い返すと、確かに自販機で飲み物を買っていたオッサンがいたのを自転車から見ていたのが思い出せた。


「そのオッサンにな『くしゃみしたら、その衝撃で肋骨が折れて病院に通う事になるが素敵な看護師と出会って幸せになる祝福』をかけようと思ったんじゃ。

 そしたら、ちょいとばかし手元が狂ったというか……お主が勝手に突然、目の前に出てきたというか……すまんっ!」


 爺さんの言葉に記憶が鮮明に蘇ってくる。


 そうだ。俺は突然くしゃみがしたくなって、思い切りかましたら胸が物凄く痛くなって、それで――


「自転車から放り出されて、走ってきた車にドーン。じゃな。」


「……じっ…ジジィ! 俺が死んだのはテメェのせいか!?」

「ジジィとはなんじゃ~! 口の悪いっ!」

「いや、てめぇが――


 ………………


 …………


 ……


 こんな冒頭で始まるのが、俺が読んでいたネット小説『努力が必要なチートだけど、やっぱり異世界ハーレム』だ。

 そして俺が今いるニアワールドが出てくる話。


 『努力が必要なチートだけど、やっぱり異世界ハーレム』


 この物語は要約すれば、神様の手違いで死んだマドカが、チートを貰ってNAISEIして、ハーレムを作って、めでたしめでたし。


 もう少し詳しく言うと、カイト・マドカは転生に当たってチートを貰った。


 そのチートは、無限収納であったり、豪華な装備であったり魔法だったり一般人が持ちえない能力であったり色々盛りだくさんに与えられるのだが、それらのチートは少しずつ『制御に慣れていく』必要があり、序盤は小出しな感じでしか使えない物で『普通の人よりは格段に強いが、まだその程度』でしかなかった。


 だから、魔法の巻物を使ったりしてピンチを切り抜けたり、カイトだけに怪盗に扮してカイトーしてみたりしながら徐々に能力が使えるようになっていく。

 主人公が慣れて強くなるまでの程よいピンチ感と、それを切りぬける時の無双感がクセになる作品だった。


 もちろんストレスフリーな楽勝物語なのだけれど。


 そして物語の終盤には、人、エルフ、ドワーフのヒロイン達が別行動中に、最強生物と謳われる竜に襲われピンチになる。

 だが主人公が颯爽と現れチート無双して竜を倒し、ヒロイン達がメロメロ状態で


「カイトは私のお婿さんになるの!」

「何言ってるの! マドカは私の物!」

「マドカは私の嫁!」

「はっはっは、おいおい、体が一つじゃ足りないじゃないか。

 まぁいい。みんなおいで。」


 と。ハッピーエンド。


 絵師の人が書いていた作品で、どうやら『女性の恥ずかしがる姿』が好きな絵師らしく、カイト・マドカはよく、ラッキースケベをしたり覗きをしたりしていた。

 女性キャラクターが恥ずかしがるのを喜んでいる内面がかなり詳細に描かれていたのは印象に残っている。


 物語に描かれていたのは竜を倒すまでの2年間の物語。

 俺がニアワールドで集めた情報から考えると、今は勇者カイト・マドカがやってきてから約10年が過ぎている。


 王都で一番のアルマン商会と取引を開始ができるようになり、俺の周りに入ってくる情報も多くなった。


 もちろん俺は勇者の噂を集めた。

 どんな人となりかを知り、自分の脅威となりうる存在が、どの程度のレベルかを知る為だ。


 集まった情報は良い物、名声ばかり。

 まさに勇者、英雄という感じ。

 聞こえてくる話は、俺と敵対するはずもない人となりを謳っている。


 だが、俺は勇者の内面を知っている。

 アイツはそこそこゲスだ。


 勇者カイト・マドカは竜を倒した後は、王都と勇者の街を行ったり来たりして、勇者の街の居城に住むアラクネ女王の糸をNAISEIに有効活用していたらしい。


 竜を倒して半年ほどで一人の女が訪ねてきて『竜を救ってほしい』と願ったのだそうだ。

 そして勇者は再びその女とヒロイン達と旅に出た。

 この頃、各地に出現するモンスターは以前より強くなったらしい。


 その敵は死竜。


 もちろんその死竜を倒して竜を救った。

 この頃から勇者は龍に乗るようになったそうだ。


 これにも解決まで全部で2年。


 推測だが、あるある的に考えれば『訪ねてきた女』が半人半竜か、人間に変身可能な竜のヒロインなんだろう。

 その他付随したヒロインも増えているはず。


 また同じように、半年くらいで女が訪ねてきて『クラーケンを倒して』

 で、モンスター強くなり~ので、また倒してでおおよそ2年が過ぎ、同じく『ゲイザー倒して』女が来て2年。


 天空の支配者『竜』

 地の支配者『死竜』

 海の支配者『クラーケン』

 異界の観測者『ゲイザー』


 そして、今また何かを倒して。

 竜に乗って街へ帰ってきたのだろう。


 一体何を倒してきたのか気になるが、どうせヒロインが増えているのは間違いない。


 『竜』の時は、人、エルフにドワーフのヒロイン。

 『死竜』の時は、ドラグーンとオーグレスとかだろうし、

 『クラーケン』になればマーメイドやスキュラなんかの可能性もある、

 『ゲイザー』の時は一体どんなヒロインを手にしたんだろう。


 スライムか? スライム娘なのか? それともロリババァか?

 そして今は一体何を倒して、どんなヒロインをゲットしたというんだろうか!


 物語はR15指定だったから18禁な事は一切なかった。

 むしろ程よくできなくてジレジレだったが、物語で語られていない未来なら、そりゃあもう好き放題しているに違いない。

 なんせ勇者の内面は『あわよくば……』なエロエロだったからな!


 俺はそんな事を思っているとつい舌打ちをしていた。

 出来ることなら……このまま永遠に帰ってきてほしくなかった。

 平穏に過ごしたかった。


 通り過ぎる竜を見ていると静かに涙が零れ落ちた。

 思わずアデリーの部屋に駆けていく。


「アデリえも~んっ!

 勇者が帰ってきちゃったよぉぉぉ~~! うわぁぁ~ん!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ