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パソコンが異世界と繋がったから両世界で商売してみる  作者: フェフオウフコポォ
命の価値 編

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129話 救出の為の侵入

 塀に囲まれた屋敷の周りを移動しつつ侵入できる所が無いかを探す。

 隠密を使っての侵入に関しては、ブライアンの店への侵入と撮影を何度かやっていたし、日本でも鶴来の追跡なんかをやった経験もあるから、それなりに自信がある。きっとヤクザの屋敷でも問題なく出来るはずだ。


 侵入経路を探していると正面玄関にまで辿りついてしまい、取り付けられている監視カメラが目に入って肝が冷える。

 肝が冷えたおかげで冷静さを少し取り戻す。


 監視カメラはまずい(・・・)

 そもそも俺が使えるスキルである『隠密』は、気配や存在感などを消す能力であって、肉眼では透明人間のような扱いだが、監視カメラ越しなどの機械的な視点であれば、きちんと記録が残ってしまう可能性が高い。


 姿を消す指輪を持ってくるべきだった。

 出発前に動揺しすぎていたらしい。

 考えが足りなかった。


 ただ……結香子はここに居る。

 それは人探しの魔道具を信じる限り間違いない。


 それに既に俺はこのヤクザの屋敷と思わしき周辺を歩き回ってしまっているから、もしかすると目視できないように監視カメラが仕込まれている可能性もある。

 

 そうなるとおおよそ警戒中であろうから、映像を確認した人間は、映った人間が誰か特定を始めるだろう。

 そして俺は新興宗教団体の教祖だから結香子の関係者として面が割れている事が予想されるし、関係者が近くにいる事で結香子の誘拐場所を嗅ぎつけたと判断される可能性が高い。


 となると結香子はどうなる?


 最悪のパターンを考えれば、もう引き返せない所までコトが進んでいる事が見えてきた。


 行くしかない!

 もう前に進む以外の道はない。


 俺は中村君の所に戻る事にした。



--*--*--



 中村君は車に乗り込む俺の表情を見て、やはり宜しくない事態が起きている事を感じたのか挙動不審な感じになっていた。


「中村君」

「う、ウス。」


「きちんと説明して無くてゴメン。

 ただ、確信できたらかちゃんと伝えると。」

「う、ウス。」


「事務員の伊藤さんがヤクザに誘拐された。」

「……は?」


「俺は今からヤクザの家に乗り込んで伊藤さん……結香子を助けてくる。」

「しょ、しょーなの!?」


「うん。

 で、中村君には、俺が救出した後の逃げる為の足になってもらいたいんだけど……頼めるかな?

 出来るだけ危険な事が無いようにしてくるつもりだけど、どうなるかはわからない。」

「……」


 中村君の目が泳ぎ、ますます挙動不審になり落ち着かない状態になっている。


「もちろん危ないと思ったら、俺に構わず逃げてくれて構わない。

 ちょっと移動すればタクシーでもなんでも捕まえられると思うし。

 ただ……何か不測の事態があった場合を考えると……いてくれると助かる。」

「……」


 中村君は落ち着かない様子ではあるけれど、何か言葉を必死に探しているように見えた。

 しばらくして返事が来た。


「お、俺っ! 手伝いますよっ!

 流石に怖いおにーさんとかが出てきたら……そん時は逃げますけど…でも逃げても近くで待機しますからっ! 携帯とか鳴らしてくださいっ! なんとか迎えに行きますっ!」

「有難う……」


 正直とても心細かったので味方がいてくれると思える事はとても有難かった。


 肚も決まり、中村君にサリーさんに連絡を取ってもらい、拉致されている場所と、俺が奪還に向かう事を報告をしてもらう事を指示。そして1時間経っても戻らなかった場合は、サリーさんの所に向かうように伝える。


 車を降り、ヤクザの屋敷へと足を向ける。


 外から見ても屋敷は塀に阻まれ、中の様子を伺い知る事は難しそうだ。

 塀を風の魔法『移動力向上』を付与して飛び越えてもいいが、塀の上に何か仕掛けがある可能性もある。

 だから、ここは正面突破しよう。


 俺は死角と思わしき位置から、右腕に装備した魔法銃ガントレットに炎のカートリッジをセットし、左手をガントレットに添え……狙いを定めてスイッチを押し監視カメラを狙撃した。


 この魔法銃は特製で、カートリッジを変える事で打ち出す魔法弾を変える事が出来る。

 炎のカートリッジの場合は着弾地点で炸裂して攻撃力がある弾を撃てる。


 着弾と同時に爆竹が破裂したような破裂音が鳴り、監視カメラの横の塀が少し破損した。

 カメラに当てられなかったので照準を補正し、念のために3連発で撃ちこむと、ようやく監視カメラを壊す事ができた。


 4連続で鳴り響いた爆竹と監視カメラの破壊は予想以上に効果があり、2分もしない内にいかにも下っ端らしいチンピラが門の確認の為か様子を見に出てきた。


 俺は隠密を全力で使いながら近づく。


 着弾跡と壊されたカメラを確認したチンピラは、すぐに報告する為か屋敷に戻り始め、すぐに後を追いついていく。


 門を越えた塀の中は広く、駐車場らしき広場には黒塗りの車が何台も停まっていて、そこにもう何人かのチンピラが立っていて警戒を固めているように見えた。


 カメラを確認した下っ端のチンピラが


「カメラがハジかれてますっ!」


 と、声高に叫びながら戻っている為、言葉を聞いたヤクザ達がさらに警戒を高めているのが分かる。


 実際にヤクザを目の当たりにし、正直怖かった。


 でも、怒ったアデリーや、アンジェナの色仕掛けで敵意を向けてきた冒険者の方が全然怖いとも思える。

 なんせ冒険者達は武器を携帯しているし、その武器は『殺す』為に持っているのだ。

 脅しに使うのではなく純粋に殺す為に。


 それに警戒している様子は解っても、チンピラ達から敵意を感じ取れないので、俺の存在自体がばれていないというのもわかる。


 そのまま移動し続けるチンピラを追い続けると、チンピラは玄関を入ってすぐ隣の部屋のドアを開けた。


「玄関の監視カメラ、ハジかれてましたっ!」


 その部屋は数台のパソコンと6台のディスプレイが配置されており、それを眺めている1人のメガネの男がPCをいじっていた。

 ディスプレイには色々な所の映像が流れている。


「多分だけど……コイツがやったんじゃないかな?」


 メガネの男がPCを操作すると1台のディスプレイの映像が大きく表示される。

 そして、周辺を歩いていた時に盗撮されたであろう俺が映しだされた。


 俺の顔が映像として残っている。

 この事により、今後サリーさんや新世界の風に対して多大な害を及ぼす可能性が高い事が頭を駆け巡り、そして脳裏にはヤクザに蹂躙される知人達の顔が浮かび始めた。


 苦しむ仲間の顔が思い浮かんだ瞬間。

 驚くほど速く俺の腹が決まった。


 俺の顔を映したデータは、オンラインでアップロードされていなければ、まだここのPC内にある。

 ならば俺が今やる事、やらなきゃいけない事は一つだ!


 未だ俺に気づかず背を向けているチンピラの首に、そっと手を伸ばした。


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