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パソコンが異世界と繋がったから両世界で商売してみる  作者: フェフオウフコポォ
ニアワールド カジノ騒乱編

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110話 アラクネ ノー カフェイン

\(^o^)/ 確か書いてた当初、難産だと思った回だった気がするけれど


/(^o^)\ 改稿でもやっぱり難産な気持ちでいっぱいになったった




 恐怖。

 それは突然やってくる。


 モンスターがいる世界では、よくある事なのかもしれない。


「あんたうるさーい!」


 一瞬の出来事だった。

 それは本当に一瞬の出来事だった。

 最初は何が起こったのかわからなかった。


 声に気が付いたら、アンジェナがうつ伏せで倒れビクンビクンと痙攣し、そしてその原因であろう本人はそれを見てケラケラと笑っていたのだ。


「ご、御主人様っ!?」


 エイミーが慌てて笑い声の主に声をかけるが俺は現状把握ができず固まるだけ。


「アハハハハ! ビ、ビクンビクンしてる! アハハハハ!」


 笑い声の主はツボに入ったのか、ただただ笑っているのだ。


「あ、アンジェナ殿は大丈夫なのですか?」

「アハハハッハッハハアハハ!」


 正気を取り戻した俺は、とりあえずアンジェナの容体を確認する為に仰向けに寝かせて口元に手をやり呼吸をしているか確認する。 うん。わからん。

 胸の動きを見ようと思ってもビクンビクンしているので、わからない。

 とりあえずわからん。心臓の音を確認しよう。それが良い。


 耳を当てると、ドクドクドクと早めだが鼓動はあったので、とりあえず回復魔法をかけ始める。


「ナニシテルノ? …………私の目の前で堂々とナニをしてるのヨオォっ!」


 声に驚き顔を上げると怒りをあらわにしたアデリーの顔が目の前にあり息つく間もなく俺の口にアデリーの指が突っ込まれていた。

 途端、熱が出た時のような感覚と、脳の働きが明らかに鈍っていく感覚。そして微妙に体の節々が痺れるような感覚に襲われ、身体の自由が効かなくなったことで、ようやく媚薬の毒ではない毒をアデリーに食らわされた事を悟る。


 そして悟ると同時に、意識が遠のいていく。

 ……ゆっくりと……確実に……


「私ノイチナノニ! 私から取ラナイデヨっ!  私の物ナノよ!」


 叫び声が聞こえるが……もう動けそうにない。


 あぁ……回復しなきゃ……


 回復………


 ……


 …



 ―


 ――ふと気が付けば、俺はもやの中を歩いていた。

 頭がボーっとして思考は定まらない。


 ただただ歩く。

 なぜ歩くのか。


 どこからか『泣き声』が聞こえるからだ。


 歩き続けていると、もやの中に一人の女の子が体育座りをして塞ぎ込んでいた。

 一人で、ただただ泣き続けているので声をかける。


「どうしたの?」


 女の子は泣きながら答える。


「誰も私を好きになってくれないの。」


 女の子が質問に答えようと顔を上げるが、その顔は焼けただれたような顔をしていた。

 思わず一歩下がり顔が引きつるのを感じた。


「みんなそんな顔をして怖がって! そして逃げていくの! 私は何もしてないのに!」


 そう言ってまた顔を伏せ、静かに泣き始めた。


 なんだか凄く悪い事をしたような、この女の子をとても傷つけてしまったように感じて、なんとか慰めたいと思った。

 自分でも不思議になるほど強く。なんとかしたいと。


 どうにかしたいと戸惑っていると、女の子は顔を上げた。その目には俺は映っていない。


「もうこんなつらい思いはしたくないの! でも気になるの! ダメなの! 寂しいの!

 ……寂しいのは嫌……自分だけ仲間外れにされるのはイヤ!

 あぁ……そっか、仲間外れにする人達が悪いんだ。 そうだ……そんな人達は壊してしまえばいい……そう! 壊してしまえばいい!」


 泣きながら叫ぶ女の子の声に、たまらず抱きしめ、その頭をなでる。

 抱きしめられると途端に大人しくなる女の子。


 驚いたのか……それともそうして欲しいから叫んだのか。それはどちらかは分からないが、きっとこの子はとても寂しい思いをしてきたんだろう事だけは分かった。


「驚いてゴメンね。いきなりでビックリしただけなんだ。

 本当にごめんね。もうビックリしないよ。」


「……私から逃げないの?」

「うん大丈夫。逃げないよ。

 だからヤケにならないで。

 そうだ。お話をしよう。色々話そう。」


「お話……うん。

 私もいっぱい話したい。」

「そうだな……じゃあ、君は何がしたい?」


「えっとね。私の事を好きになってくれる人が欲しい! た~くさん欲しい!」

「たくさん? 欲張りだなぁ。」


 素直な言葉に思わず笑う。


「よくばりかなぁ?」

「う~ん……好きになってもらうなら、こっちからも好きになってあげなきゃ不公平だからねぇ。

 たくさんの人に好かれるのなら、たくさん好きにならなきゃいけないから、きっと大変だよ。」


「ん~~……そっか。」


 焼けただれたような怖い顔のまま、チラチラとこっちを見ている。

 不思議と、もう怖いとは感じない。焼け爛れていた顔も普通の顔になっているように思え、なぜかこの子に対して好意を持っているような気さえしてくる。純粋な好意に不思議と照れもなく口が開いた。


「俺は君の事なんだか好きだよ?」

「私もすきー!」


 俺の言葉に女の子が微笑みながら答える。女の子の顔は、それはそれはとても可愛い笑顔だった。


「どうしたの?」

「すごく可愛い笑顔だと思って。」


「え? そうなの?」

「うん! とても素敵だったよ。」


 女の子が可愛い顔で照れはじめると、別の場所から声が聞こえた。


「そうだよ? とても可愛いよ。」


 どこからやってきたのだろうか、一人の女の子が俺の隣からひょっこり顔を出して声をかけている。


「ほんとに?」


 顔を出した女の子は、どこかびっくりしている女の子の問いに対して、利発そうな表情でコクリと頷き、そして笑顔で口を開いた。


「可愛くて、すごく好きっ!

 だから私ともお話ししよ。 なんでも話そ?」


 俺は嬉しくなって、どちらの女の子の頭も撫でる。

 女の子は、どこかくすぐったそうな表情をしたけれど、それも可愛らしかった。


「私も可愛いと思うよ!」


 俺の後ろからもう一人元気そうな女の子が顔を出し、泣いていた女の子は今はもう、ただ照れているだけ。

 涙の気配は微塵も感じさせず穏やかな空気が漂っていた。


 利発そうな女の子が俺をつつく。

 『なんだろう』と顔を向けると利発そうな子が指を指していた。


 その指の先に視線を向けると、今は照れている怖かった女の子の側を指していて、そこには倒れている女の子がいた。眠っているのだろうか。


 利発そうな子が小声で『あの子は大丈夫?』と聞いてきたので俺は聞いてみる事にした。


「その子はどうしたの? 眠っているの?」

「うん! 煩いから私が眠らせたの。ふふっ。」

「こーらっ。」


 俺は女の子にデコピンをする。

 途端にまた泣き始める女の子。

 だが、その泣き顔は、可愛いままの表情が崩れたもので、なぜ怒られたのかを問い掛ける表情だった。


「いくら煩いからって、そんなことをしてたら友達になれないよ?

 ちゃんとお話しして分かり合おうね。そしてたくさん友達を作ろう。」

「わかった……」


「うん。次から気を付けようね。

 もし話をして嫌な子だったら俺がちゃんと守ってあげるから。ね?」

「……うん! ごめんなさい。」


「この子はちゃんと起きる?」

「うん! 起きるよ。でも『治れー』ってした方が早く起きるかも。お願いしていい? できるんでしょ?」

「わかった。『治れー』!」

「ありがとー!」


 眠っている女の子が、柔らかい表情になったような気がした。

 利発そうな子が安心したように、その女の子を見て抱き上げた。


「よかった~。じゃあ、私ちょっとこの子をお布団に寝かせてくる。」


 そう言ってもやのどこかへ消えていった。

 目を戻すと、今は可愛い顔の女の子が元気そうな女の子に話しかけている。


「私、たくさんお友達が欲しいの。だからお話してもいい?」

「うん。いいよ! っていうか、私達もう友達だよ?」


「そうなのっ!?」

「そうだよー?」

「じゃ、じゃあ、私もっと仲良しになりたいの!」

「うん。いいよ!」


 今は可愛い女の子が元気そうな女の子にグイグイ抱きついたりしていて、元気そうな女の子が少しどころじゃなく苦しそうな顔をしている。


「こーら。加減しなさい。」

「だって仲良ししたいんだもん!」


「それじゃ仲良しに見えないよ?」

「え!? じゃあ……どうしたらいいの? そうだ! 仲良しのお手本見せてよ!」

「えっ!?」

「ほら早くー! ねっ? みんなで仲良ししよ!」


 女の子の笑顔を見た後、また意識が遠のいていった――



--*--*--



 目が覚め、揺れる頭の中が、そしてぼやける視界がはっきりとし始める。

 揺れるような感覚と傾き、そして柔らかさと温かみを感じていたのでそれが何かを探ると、どうやらハンモックの上で寝ていたようだ。なぜか俺、アリア、アデリーの三人が川の字で寝ながら。

 しかもアリアを真ん中に挟み込んで俺とアデリーで抱っこしているような恰好だ。


 ちなみに服の乱れは寝乱れたくらいで他に何かあったような形跡はなかった。


 俺の手が若干アリアの胸の近くに触れていて『おっ、着やせするタイプか?』と、わかる感じはある。が、大丈夫だ。触ってない。


 困惑しながら様子を伺っているとアリアはまだ眠っているが、アデリーはばっちり目を覚ましていてバチっと目が合った。だが、アデリー自身も今の状況が分からずに固まっているように見えた。


『ねぇ。この状況はどういうこと?』

『さっぱりわからんのだが?』


 アデリーが目でそう問いかけてくるので、俺も首を捻って返す。

 ついでにハンモックの下を見ると、エイミーがなんとなく寂しそうにドーンと横になって眠っていた。


 俺とアデリーの頭が疑問符だらけになりアデリーが口を開いた。


「ねぇ……私昨日の夜からまったく記憶が無いんだけど……」

「……俺もアデリーに毒飲まされてからの記憶がない。」


「えっ!? 嘘っ!! 私そんなことしたのっ!? 体大丈夫なの!? イチ! ご免なさいっ!」


 アデリーが取り乱して慌てながら大きな声で安否を尋ねてくる。

 その声でアリアとエイミーが目を覚ます。


「ふぁあ……おはよー。イチぃ、アデリーぃ」

「……おはようございます。御主人様。」

「おはようアリア。エイミー」


「ねぇイチ! 平気なの!? ねぇっ!」

「大丈夫だよ。 ……多分。」


 俺とアデリーの様子を、きょろきょろと見回すアリア。

 ふふん。と鼻をならし俺とアデリーの二人の肩をがばっと組むように抱きついてきた。


「ほらほら、二人ともどうしたのー?

 二人の大好きなアリアちゃんだよ~!」


「「 へっ? 」」

「ん?」


 アリアがきょとんとし、逆に不思議そうな顔で見てくる。

 その様子を見ていたエイミーが小さく息を吐いた。


「御主人様方。

 現状を把握されたいのであれば、まずは一度外をご覧になった方が早いかと。」


 エイミーに促されるままテントの外に出る。


 そこは蜘蛛の巣だらけだった。


 蜘蛛の巣と言っても、まるで『あみだくじ』のようなネット状の物がそこらじゅうに張り巡らされていて蜘蛛の巣と言っていいのかは定かではない。


 馬車の方を見ると疲れたような顔で護衛しているゴルと疲労困憊といった雰囲気で眠りこけるジャコ達護衛班がいた。


「あ、アンジェナは?」

「大丈夫です。馬車でまだ眠っておられます。」


「……えっと……これはアタシが……やったのかしら?」


 小さく引きつったバツが悪そうな顔で、蜘蛛の糸から目をそらすようにエイミーに問い掛けるアデリー。


「はい……それはそれはもう物凄い勢いで――」


 エイミーがまるでたまった鬱憤を晴らすかのように昨夜のアデリーの痴態について語りだす。

 流石のアデリーも肩を狭め小さくなって聞き俺も何故かアデリーの隣で正座して聞いている。


 話を聞いていると俺が気を失った後の事が明らかになってきた。


 アンジェナに回復魔法をかけていた俺が毒をくらった後、どうやら俺もアンジェナ同様にビクンビクン状態に陥ったらしい。やべぇ。

 で、アデリーがアンジェナ抱えてブチギレモードで


 「オマエラ嫌イダー! ウワアアアア!」


 と、テントの外に飛び出し意味不明に巣を張り始めたりして、それを止めに来たゴル達にも襲いかかったらしい。


 で、ゴル達はエイミーの「酔っぱらってるだけなんです」という言葉で、どう応対すべきか躊躇して二の足を踏んだ結果、全員あっという間に木から吊るされの刑を味わって「コレやばいんじゃね?」的な空気になったのだそうだが、その時に俺がフラフラ出てきてアデリーを捕まえて突然イチャコラしだしたらしい。


 んで俺がイチャコラしてアデリーが大人しくなったから、エイミーとアリアも援護射撃的にアデリーなだめ作戦を展開し、アデリーが落ち着いてきたところで、エイミーがアデリーからアンジェナを奪還して馬車に戻しつつ俺達をテントに戻し、ジャコ達の糸からの脱出を手伝ったり謝罪をして回ったりしたのだそうだ。


 で、なんとかひと段落ついて溜息つきながらテントに戻ったら俺とアデリーが「アリア好き好きー」と、ベタベタしてたそうな。

 アリアも「あははは、ナニコレー! アハハハ」と楽しそうにしていたので、エイミー一人のけもの状態が悲しくなり、やさぐれて『もういいや』と眠ったのだと。


「あはは。こんなにも二人に好かれているとは思わなかったなー。」


 と、一人上機嫌のアリアを尻目に俺とアデリーはただただ


「面目ない」

「申し訳ない」


 と、エイミーに謝るのだった。

 もちろんゴル達にも丁重に「昨日は大変ご迷惑をおかけしました」と、アデリーと俺で謝る。

 尚、アンジェナは


 「はて? あれ? 確か……アデリーさんの指が口に入ったような……」


 と、肝心な所は、綺麗さっぱり覚えてなかったので、ゴル達にしっかりとアデリーと一緒に『お願い』をして『昨夜は酔ってハメを外し過ぎた』と、誤魔化した。


 もう……アデリーにコーヒーゼリーは渡さない。


 アラクネにコーヒーゼリーはイカン。

 多分コーヒーもダメだ。

 カフェインの強いエナジードリンクもダメだろう。


 『アラクネ ノー カフェイン』


 そんな文言を心に刻む。


 そんな微妙な空気の中、朝ごはんを食べ、諸々片づけて砦跡に向けて出発する。


 護衛班のゴル達には迷惑をかけた分、今日は馬車で少し休んでもらう事にした。護衛がいない分はアデリーが馬車から降りて頑張るらしくアデリーが最前線の構成で街道を歩いている。

 もちろん俺も責任を感じているので一緒に歩く。となると、アリアやエイミーもそれに追従する。


 こうしてアデリーやエイミー、アリアと一緒に歩いていると不思議となんだか前よりも距離が近づいたような仲良くなれたような気がしていた。

 特にアデリーがこれまでは強い存在のように思っていたけれど実は守ってあげなきゃダメな存在のようにも思えている。


 ――が、ジャイアントが出てきて、アデリー先生が張り切っているのか昨日の2割増しの速度でビクンビクンさせてたので、きっと守ってあげなきゃって思ったのは気のせいだったんだと即思いなおした。

 多分二日酔いのせいだな。うん。俺。正気じゃなかった。


 そんなこんなで街道を進んでいると、俺だけアンジェナに呼ばれたので話をする為に馬車に乗り込む。


「昨日から色々とありすぎて大事な事をお伝えし忘れていました。

 ゆっくり移動してますので砦跡には明日、到着すると思うのですが、砦跡には『先住民』がいます。」


「え? 先住民って……砦跡に住んでるの?」

「はい。『追放者』達が住んで生活しています。」


 『追放』という響きから、なんとなく嫌な予感を感じずにはいられなかった。


 ……そこでカジノ作れるの?


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