おまけのお話・シルヴァンの秘密《後編》
「アロイスが園遊会のときのシルヴァンは、私のために着飾っていたと言うの。本当かしら」
帰宅して、晩餐までののんびりタイム。
いつものようにシルヴァンは、私を膝の上に乗せている。
いい加減、飽きないのかしらと思うけど、大丈夫らしい。
幸せそうな顔をしながらあちこちにキスを落としたり、私の髪をいじったりしていたけれど、私がそう尋ねるとピタリと動きを止めて視線を合わせた。
「どうしてあいつが気がついているんだ」と、眉を寄せるシルヴァン。
「本当だったの!」
シルヴァンは私を抱き寄せると、肩に顔をうずめた。
「はっきりそう考えていたわけじゃないが。ロクサーヌを好きだとは信じたくなかったからな」
そっと彼の頭をなでる。
お母様を亡くしたトラウマで、大切な人を持つことを恐れていたシルヴァン。きっと私には想像がつかない葛藤があったのね。
「だが腹も立っていたし、目に見ものを見せてやろうとは思った」
「どういうこと?」
「園遊会で邪魔されないようオラスを排除したのに、ロクサーヌは文句ばかり」
排除? それって、前日の事件よね。小説どおりにならないよう、シルヴァンが手を回した一件。
「あれはピアが気に入らないからじゃなかったの?」
「それもある。どうしてロクサーヌがあんな奴らのせいで評判を落とさなくちゃいけない。ムカつくだろうが」
「そうだったの。嬉しい」
シルヴァンの頭に口づける。
「あの時は怒ってごめんなさい。あなたは私のことなんて、どうでもいいのだと思ったのだもの」
体に回された腕に力が入る。
「どうでもいいと思いたかったがな」
でも、そうは思えなかったということね。嬉しいので、もう一度彼の頭にキスをした。
「夜会では邪魔されたから、園遊会では絶対に排除したかった」
んん?
「夜会ってなんのこと?」
「俺と話していたのに、オラスがダンスに連れ出したじゃないか」
新任大使の歓迎会のときのことかしら。
「あのクソ野郎!」
シルヴァンは強い口調でそう言うと、私の首筋をちゅっと吸った。ピリリとした痛みが走る。
これ、絶対にキスマークをつけたわ。
あんなつまらない男に嫉妬するなんて、シルヴァンって可愛いのね。
彼をぎゅっと抱きしめる。
「私が好きなのは、いつだってあなただけよ」
「知っている。だが、それとこれは別だ」
シルヴァンは頭を上げると、視線を合わせたままキスをした。
「ロクサーヌは俺を好き好き言うわりには、鈍いし」
「ええ? そんなことはないわ」
「鈍い! いや、アホなのか? 変なところで自己評価が低くなる。自分より摘んだ花を守ったり。命がけで俺を助けようとしたり。ああ、ろ過を無理して完遂させたこともあったな」
確かにそんなことはあったけれど……
「あなたはいつも、怒っていたわ」
「怒るに決まっているだろうが! 惚れた女が俺のせいで自分を大切にしないんだぞ!」
「惚れた……」
サッとシルヴァンの顔が赤くなる。
自分でもわかったのか、彼はまた私の肩に顔をうずめた。
「俺のために、必死の形相で元魔術師の元に飛び込んだんだぞ。惹かれないはずがないだろうが」
そうなの?
あれって雑用係になってまだ日が浅いころの出来事だったけど。
そんなに前から私を思ってくれていたの?
シルヴァンてば、意外にもチョロかったのね。
でも確かに私も、鈍かったのかもしれない。
「全然、気づかなかったわ。あなたはいつも私に辛辣だったもの。そんなところも大好きだったけど」
くすりと笑う声がした。シルヴァンが私を見る。
「変な女だ」
「あなたもね」
トラウマもちのラスボスと。
そんなラスボスが大好きな転生悪役令嬢と。
「私たちって最高に相性がいいと思わない?」
《おしまい》
面白かったら、☆をいれていただけると嬉しいです。
活動報告にシルヴァン視点のSSを掲載しているので、よかったら覗いてみてください。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1449451/blogkey/3426832/




