13・3 水中
侍従に案内されたのは、以前オラスに閉じ込められた部屋だった。
シルヴァン様が壊した扉は、新しいものに代えられている。
誰もいない部屋に私を残し、侍従は
「こちらでお待ちください」と告げて去った。
窓辺に寄って、外を見る。
今夜は満月が出ているはずだけど、雲がかかってしまったらしい。外は闇に沈んでいる。
シルヴァン様の用はなんだろう。
破滅回避についてか、アロイスについてか。
それとも、おかしな噂についてか。
ヴィクトルお兄様は、シルヴァン様と私をふたりだけでは会わせられないと言って、ついてこようとした。
だけどシルヴァン様のお話の内容がわからない以上、一緒にいられては困る。
必死に説得して、なんとか遠慮してもらった。
それにしても、シルヴァン様が『あんな風になった』とは、どういうことだったのかしら。
青年に聞きそびれてしまったわ。
なんだかマイナスのニュアンスだったから、とても気になる。
ため息をひとつつくと窓辺を離れて、長椅子に向かう。
とにかく久しぶりにシルヴァン様に会うのだもの。ちゃんと『いつもどおりの』ベルジュでいたい。
それで、きちんとお別れを言うのよ。
私は隣国に行くから、安心してねって。
椅子に腰かけようとしたとき、突如足元が光り出した。私を中心に小さな魔法陣が出現している。
これは、転移魔法だわ。
視界の歪みと軽い浮遊感。
そのあとにやって来たのは、水だった。
転移先は水中だったのだ。
真っ暗で、どこが上なのかわからない。
水を大量に飲み、目も開けていられない。服が重く、もがいてももがいても水中から出ることができずに息が苦しくなっていく。
シルヴァン様は私に死んでほしいの?
それともシルヴァン様の名前を騙った、ほかの誰か?
ラスボスが、自分の名前を出して罠にかけるなんて、思えない。
でもそれこそが、彼の狙いなのかもしれない。
彼の秘密を知る、用無しで鬱陶しくて気持ちの悪い小娘を、始末しようと考えている可能性はある。
私なんて存在しないほうがいいということよね?
――だったら、もがくだけ無駄ではないのかしら……




