表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/8

4.万有の森


 第十王子のグローブ・クローバーが手を取ったのは、後者……王族宝蔵を手放すことであった。

 そうしてクロムが出発したのち、グローブ陣営では少し騒ぎがあった。


「な、なんだと……?」


 報告を聞いたグローブがガタッと立ち上がった。

 そして叫ぶ。


「は、はぁぁぁっ!? 王族宝蔵をすべて持ち出しただと!?」

「はい……それを持って万有の森へ潜ったようでして……」

「俺の命と同義なのだぞ……! あれはクロムが持っているようなお小遣いではないのだ!!」


 バンッとテーブルを強く叩いた。

 その反応が外に漏れ、ざわつき出す。


「な、何を考えているんだあいつは!!」

「取り返しに行かれますか」

「馬鹿者が! それこそ死にに行くようなものだ!」


 怒鳴りながら、またもグローブが物に当たる。


「クソ!! なんだなんだあいつは……! 全く思考が読めない……!」


 *


「これは、なんじゃ」

「見て分かる通り、宝だ」


 万有の森。クロムは蛮族に囲まれていた。


 私が周囲を見渡すと、木々の上から値踏みするような視線を向けられている。

 敵意は丸出し。


 森を生活拠点とする彼らには地形の有利があり、戦闘になれば今の私ではひとたまりもない。


 話しているのは、年老いた族長である。

 族長が鋭く目を細めた。


「何を考えておる。こんなもので我らが買えると、金で解決しようなどと、なめておるのか?」

「勘違いをするな。そのつもりならば初めの時点でやっている」

「なに……?」


 悠長な声音で、起こったであろう出来事を話す。


「グローブ王子は大方、『俺は次期王だ! ひれ伏せ!』とでも言ったのだろう。それが失敗して、今度は武力による制圧をしようなんて……お前らの怒りは当然だ」

「分かっておるではないか」


 グローブの性格は先ほどの取引で、大体は把握した。

 乱暴でせっかち、そして傲慢さが全面に出ている。


「これはそのお詫びだ。双方に被害が出たとはいえ、悪いのはこちらだ」


 先ほどまで騒いでいた蛮族が、少し大人しくなる。


「すごい……!」

「あの量は我々ですら持っていないぞ……!!」

「あんなものを、クローバー王国の奴らは持っているのか……」


 どうやら、気に入ってくれたようだ。

 宝は人種問わず価値が高いらしい。


「……そういうことならば、謝罪を受け入れよう」


 宝を持っていくように族長が指示を出す。

 こいつ……そういうことか。

 ふふっ、面白いな。族長は宝の目利きがしっかりしているようだ。


 こいつ今、()()()()だと理解して受け取ったな。


「だが、我らはこのような宝で森を────……」

「取引をしよう」

「は……?」


 困惑する族長へ続ける。


「ここに、先ほどの宝と同じモノがある」


 王族宝蔵を全て渡すほど、私は馬鹿ではない。

 まずは反応を見て、宝に関する彼らの対応を見たかった。


 みんなは喜んでいるのに、その中で唯一、平然を装う奴がいた。


 下手に感情を隠そうとするから、誰よりも目立って分かり易いなぁ族長よ。

 笑みを我慢する。


 お前は、ここにいる誰よりも眼を輝かせていたぞ。


「入れ替わり儀式だ」

「……っ」

「お前らの一族にある入れ替わりの儀では、当代の族長と戦って勝てば長になることができる」


 おいおい、まるで『なぜ、それを知っている────』みたいな顔ではないか。

 先ほどの、何食わぬ顔で王族宝蔵を持っていったのはどうした。


「もしも私が敗れれば、残りはお前、()()にやろう」


 小さな声で族長から「そんな数百年前の風習を……よく調べたものだ」と言われた。


 薄っすらと笑いながら、続けた。


「今、私たちは同じ土俵に立っている。そうだろう?」

「貴様……頭のネジが外れているのか。負けることを考えていないのか!」


 負けること、か。

 いや、私が負けないなんてことは言わない。


 負ける時は負けるものだ。

 

「負けたら負けたで、良いではないか。お前は王子の命に等しい王族宝蔵を手に入れる」

「はんっ、貴様らの損害は計り知れぬな」


 バンッ、と族長が杖で大きな音を鳴らした。


「良いじゃろう、取れる宝は取っておこう。入れ替わりの儀式を受けてやる」


 やけにすんなりと受け入れたな……もう少しごねるものかと思っていたぞ。

 余裕から見ても何かあるな、これは。


「ただし、条件がある! 儂は高齢故に戦えん。代わりにダダパイを戦わせる!」

「ダダパイ?」

「死をも喰らう狂犬という意味じゃ」


 ほう、これまた物騒な名前だ。


「だ、ダダパイを⁉」

「あいつを解放するのか?」

「あんな化け物を……」


 視線をそちらにやると、怯え方からしてあまり良い評判ではなさそうだ。


 ニヤリ、と族長が笑う。

 まるで勝ちを確信しているような笑い方だ。


「ダダパイは我らが飼っている輩の中で最も強く、特に制御ができない戦闘特化の化け物じゃ」


 脅すように、族長が続けた。


「ある日、脱走して熟練の戦士を5人ほど殺しての……それ以来封印しておった」


 熟練の戦士1人につき 

 クローバー王国の一般兵20人に匹敵する。


 それを5人……ざっと実力だけ見ても、100人分の力はあるということだ。


 最終兵器と言っても過言ではないようだ。

 逆に、それくらい全力で来てくれる方が安心するというものだ。

 

「貴様、死ぬぞ」

 


 

【とても大事なお願い】

 これから毎日投稿していきます!

 ランキング上位を目指しています! 


『面白そう!』

『楽しみ!』


そう思っていただけたら下にある星『★★★★★』と

作品のブックマークをしてもらえると、大変励みになります!


よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ