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043.お兄ちゃん、碧の王子と出会わせる

 午後の授業を終え、放課後。

 僕とルーナは、2人で学園内の庭園を歩いていた。


「ぽかぽか陽気で、気持ち良いですね! セレーネ様!!」

「そうね、ルーナちゃん」


 小春日和はとはよく言ったものだ。

 温かな木漏れ日の中を、2人で歩いていると、なんだか本来の目的を忘れてしまいそうなほど心地よい。

 そう言えば、ルーナの声って聞き心地が良いんだよなぁ。

 たぶん、僕と同じで、元々は声優さんの声なんだろうけど、元気で可愛らしくも、決してキンキンはしていなくて、聞き心地がよいのだ。

「さすが、ヒロイン」と変なところで感心しつつ、歩いていくと、やがて僕らは学園の中央にある円形の湖へと辿り着いた。

 かなり整備された湖で、外縁はぐるりと一周石畳の道で囲まれている。

 ベンチなどもかなりあり、ホッとくつろげる空気感のある癒しスポットだ。

 見れば、野鳥の姿もかなりある。


「うわぁ、綺麗な湖ですね!!」

「ええ、せっかくですし、ぐるりと一周してみましょうか」


 妹の話では、放課後になると、エリアスはこの湖のどこかで、鳥に餌をやっているということだった。

 一周すれば、必ず出会う事ができるはず。

 他愛無い話をしながら、僕はルーナと連れ立って、湖畔の道を歩いていく。

 放課後、まだ、他の同級生達はあまり遠出をする余裕はないのか、姿はほとんど見えない。

 いるのは学園に慣れた上級生たち……それも、カップルが多い。

 女子学舎と男子学舎のちょうど中間に位置するこの湖は、恋人達が逢瀬を繰り返すにはちょうど良いスポットになっているようだ。


「皆さん、仲良しですね」

「そ、そうね……」


 きっと前世なら、リア充爆発しろ、なんて思うだろうそんな光景を見ても、ルーナの感想は"仲良し"。

 うーん、この娘の恋愛観大丈夫だろうか。

 僕らの年齢は今、14歳。

 前世で言うとプ〇キュアくらいの年齢になるわけだが、他の令嬢達と接していると、むしろ前世の同世代の少女達よりもかなりマセている節すらある。

 まあ、この世界では、僕が12歳時点ですでに王子と婚約していたことからも分かる通り、結婚の適齢期というのが早いのもあるだろう。

 貴族同士の政略結婚ともなれば、今の僕達の年齢で行われることもないことではなく、貴族令嬢ばかりのこの学園では、そういったことに敏感なのも致し方ないだろう。

 恋愛観や結婚観にも、貴族と平民の差があるのだなぁ、とルーナの様子を見るとしみじみと感じる……もっとも、ルーナが特別幼いだけかもしれないけど。


「あ、あそこに鳥が集まっています」

「あら」


 そこは、湖畔から飛び出した桟橋のような場所だった。

 大きく湖に突き出したそこには、制服姿の男子生徒が、鳥に餌をあげていた。

 

「行ってみましょうか」

「はい!」


 ルーナと一緒に、小道から突堤へと進む。

 しかし、近づいていく毎に、餌をあげている人物がやけに大きい事に気づいた。

 明らかにエリアスの体格じゃない。


「あ、あの……あなたは?」

「ん、僕は2年のルドルフだけど」


 ルドルフと名乗った糸目をした大柄の青年は、餌をばらまく手を止めながら、うっすらと微笑んだ。


「君達も餌やりに興味があるの?」

「はい!!」

「だったら、少し餌を分けてあげるよ」

「いいんですか?」

「うん、たまには鳥達も、かわいい女の子から餌をもらいたいだろうしね」


 にこにこ笑顔で餌を撒くルーナ、そんな彼女の元に、鳥達がわんさか集まって来る。


「あ、あのルドルフ先輩」

「ん、なんだい? えーと……」

「私、ファンネル公爵家のセレーネと申します。つかぬことお聞きしたいのですが、こちらにエリアス王子が来られることはありませんか?」

「え? ここで餌やりをしているのは、僕だけだと思うけど」

「そうなんですか」


 どうやら、エリアスは、鳥への餌やりをやっていないらしい。

 まだ、時期が早いのか? いや、でも、妹は1週間以内には、イベントが起こる……と言っていたし。

 エリアスが、餌やりをしない事情があるのか?

 たとえば、鳥の餌やり以上に優先順位の高い何かが……って、あっ。

 そうだ。そういえば……。


『エリアス様はね。動物が大好きなの。でも、過去に可愛がっていた猫が死んじゃってね。その時のショックから、新しいペットを飼えないでいるんだ。それで、ぽっかり空いた心の穴を埋めるように、学園の湖で、鳥に餌をあげているのよ』


 妹は確かにこう言っていた。

 エリアスは、愛猫の死のショックから、自分ではペットを飼わず、学園の湖の水鳥達に餌をあげることで、その心の溝を少しでも埋めようとした。

 だが、今のエリアスは、別に心を痛めていない。

 なぜなら、件の愛猫──シャムシールは、今も元気いっぱい生きているからだ。

 そう、僕が、白の魔法で、シャムシールを救っていたから……。


「あああーーーー!!!!」

「セレーネ様?」


 全身に鳥を乗せたルーナは、僕の叫びに、キョトンとした表情を浮かべたのだった。

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