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307/344

307.ヒロイン、大好きな人を取り戻す

 翌朝、日の出前にあの箱庭めいた泉を出発した私達。

 その後も時々小型の魔物に襲われることはあったけど、その全てをアニエス師匠が一瞬で撃退してくれた。

 順調に歩き続ける事2時間あまり、辿り着いた少し小高くなった丘の上からは、はっきりと黒の大樹の麓に聳える石造りの王城が見えていた。


「黒の大樹の根元にあんなお城があったなんて……」

「おそらくかつての黒の国の王城でしょう。しかし、まるで、大樹と同化しているかのようですね」

「何にせよ。あそこにセレーネがいるのは間違いない。すぐ助けに──」

「ま、待ってください!!」


 懐かしい感覚が背中に走り、私は視線を下へと向けた。

 白の魔力をちゃんと感じ取れるようになった今だからこそ、はっきりとわかる。

 これは……この感覚は……。

 私の考えを確信へと変えるように、木々の隙間にチラチラとどこかで見たことがあるドレスが閃くの見えた。

 そして……。


「セレーネ様……」


 一瞬、信じられなかった。

 だけど、間違いない。

 私達が助けに向かおうとしていた王城の方から、必死の表情で駆けてきたのは、セレーネ様だ。

 その姿を見た途端、我慢できなくなった私は、駆け出していた。


「セレーネ様ぁ!!」

「ルーナちゃん!?」


 誰よりも早くセレーネ様の胸に飛び込む私。

 驚きながらも、セレーネ様は、そんな私をしっかりと受け止めてくれた。

 懐かしいセレーネ様の柔らかな感触となんだか落ち着く匂い。

 そこにいるのを確かめるように、私はギュッと両手に力を籠めた。


「セレーネ!!」

「姉様!!」

「セレーネ様!!」 


 私の後ろから、レオンハルト様達の声がしたと思うと、次の瞬間には、みんながみんな私越しにセレーネ様に抱き着いていた。

 顔は見ずとも、みんな目に涙を滲ませているのがわかった。

 そう、私達はやっと会えたんだ。

 大好きなセレーネ様に!!


「セレーネ様、よくご無事でした」

「ルカード様まで。まさか、私を助けに」

「はい、教会として責任を果たすつもりで……というのは建前で、どうしても手ずから貴女をお救いしたかった」


 最年長のルカード様の声にも、万感の思いがにじみ出ていた。

 本当に、本当にセレーネ様が無事で良かった。


「ぴぽ!」

「あらあら、もぐぴーまで来てくれたんですか?」

「セレーネ、無事でいてくれて良かった……。身体は大丈夫なのか?」

「ええ、全く持って問題ありません」

「ところで、その男性は……?」

「えっ?」


 名残惜しくもセレーネ様から離れた私は、その言葉で隣に立っていた私達と同じくらいの歳の男の子の存在に気づく。

 少しくすんだ銀髪を後ろで括った凄く綺麗な男の子だ。

 どうやら、セレーネ様に会えた喜びで、彼の事がすっかり視界から外れていたらしい。


「この子は、私の息子です」

「へっ?」


 息子?

 それって、どういう……。


「とにかく、今はこの子も一緒に、黒の領域からの脱出を!! おそらく、そう遠くないうちに、メランが……」

「あの男か……!!」


 グッと拳を握りしめるレオンハルト様。

 メランというのは、白の泉でドラゴンに乗っていたあの男の人の事だろう。

 実質的な敵の親玉だと聞かされている。


「積もる話もあるけど、ゆっくりとしている暇は無さそうだね」

「急いで、ルイーザちゃんのところまで戻りましょう!!」


 こくりと頷いた私達は、来た道を急いで引き返す。

 セレーネ様の手を引きながら懸命に走っていると、ふと背後に視線を感じた。

 走りながらも振り返ると、反対側の手をセレーネ様に牽かれているあの男の子が、ジッと私の方を見ていた。


「何ですか?」

「あ、いや……」


 私が問いかけると、男の子は口ごもりつつも、そっぽを向いてしまった。

 息子、なんてセレーネ様は言っていたけど、いったいこの男の子は何者なんだろうか。

 見た目的には、私達と同じくらいの歳に見えるけど……。

 セレーネ様と同じく、黒の使者に拉致されていたんだろうか。


「ママの言うように、本当に女の子ってこんなに可愛いんだ……」

「何か、言いました?」


 聞き取れないほどの声量で何かを言った気がしたけど、彼は首をブンブンと横に振っていた。

 うーん、なんだかよくわからないけど、今はそんな事よりも、ここからできるだけ離れるのが先決だ。

 セレーネ様の手の確かな温かさを感じながら、私は必死にレオンハルト様達についていくのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] う、うーん、ヒロインだからなぁ……
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