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227.お兄ちゃん、チェックされる

「ふむ……」


 僕の抱える鉢植えを眼鏡越しに睨みつけるようにして見ているのは、コリック先生。

 白亜の塔のいつもの大広間で、苗のチェックを受けた僕は、特に何かあるわけでもないのにビクリとしていた。

 やはりコリック先生が試験官をしているというのには、なかなか慣れない。

 何を考えているかわからない、このブスっとした表情を見ていると、どうしても委縮してしまいがちだ。

 この世界の男性陣が変に優しすぎたから、それに慣れてしまっているだけかもしれないけど……いや、やっぱりこの人、高圧的だよ。

 と、心の中でそんなことを考えていると、まるでそれを見透かすかのように、先生がこちらを向いた。

 思わず、心臓がドキリと跳ねる。


「悪くない」


 ひょこりと芽を出したシーダの花。

 それをじっくりと観察し終えたコリック先生は、そう独り言ちた。


「お褒めにあずかり光栄です」


 一応そう返しておくものの、僕の言葉など聞いてか聞かないでか、今度はルーナが持つ鉢植えへと彼は視線を移した。

 彼と同様、僕もその鉢植えの方へと視線を向ける。

 すると、ルーナは少しだけ意気消沈した様子で、スッと頭をもたげた。

 それもそのはずで、僕の鉢植えとは違い、ルーナのそれにはまだ芽が出ていなかったのだ。


「こちらはまだか」

「す、すみません……」

「試験が始まって1週間だ。まだまだ、これから頑張ればいい」

「は、はい……!!」


 あれ、なんだか僕と違って、ルーナには優しくない?

 いや、確かに攻略キャラとしては、ヒロインに優しくて、悪役令嬢である僕に厳しいのが当然なんだけどさ。

 今まで他の攻略キャラ達があまりにも僕に優しくしてくれるから、本来なら当たり前の事すらもおかしく感じてしまう。

 いいんだよ。いいんだけどさ……。

 なんか釈然としねぇ。


「なんだその顔は。セレーネ・ファンネル」

「別に、何でもありませんわ」


 頬を膨らませ、プイっとそっぽを向く僕。

 まるで嫉妬しているみたいな反応になってしまったように感じて、それもまた僕をイライラとさせた。

 ああ、ルカード様のあの穏やかな笑顔が恋しい。

 それはともかくとして……。

 そっぽを向きつつも、僕は再びルーナの鉢植えをちらりと見る。

 ただただ土だけが盛られた鉢の中、芽が出る様子はまだ微塵もない。

 僕と同じようにルイーザから助言を貰い、僕と同じ時期に育て始めたわけだから、本来なら同じタイミングで芽が出てもおかしくはない。

 違いといえば、やはり白の魔力だろうか。

 ルーナは、まだ僕のように自在に白の魔力を操ることができない。

 これまで無意識的に魔力を発動していることはあったが、自分で制御することはまだ難しいようだった。

 とはいえ、この苗はあえて注ぎ込もうとせずとも、聖女候補本人が常に発している白の魔力を吸収していくため、必ずしも意識的に魔力を注がなければならないというわけでもない。

 となると、単純に白の魔力の力の強さが、苗の成長に影響を与えたと考えられる。

 自慢ではないが、3年間磨き続けた僕の白の魔力は、かなりのものだと思う。

 白の魔力の強さだけで言えば、現段階で、ルーナよりも僕の方が優れているのは間違いないだろう。

 ま、そうは言ってもね……。

 この状況はこれまでの試験の始まりと一緒だ。

 いつも、最初は僕の方が能力が高くても、試験の終わりまでには、僕に匹敵するか、それ以上にルーナの能力というのは急激な成長を見せた。

 剣もそう、乗馬もそう、演技もそう、学力もそう。

 必要に迫られれば、ルーナの能力は否応なしに伸びる。

 それこそが彼女だけが持つヒロイン補正に他ならない。

 心配せずとも、ルーナの苗もきっと順調に成長していくことだろう。


「最初のひと月だけは1週間毎に確認をする。翌週もここに来るといい」

「わかりましたわ」

「はい……」


 こうして、シーダの苗を育て初めてから、最初の定期チェックが終わったのだったが……。




「まだ、芽が出ていないようだな」

「はい……」


 翌週。2度目の確認の際にも、まだ、ルーナの鉢植えには芽が出ていなかった。

 さすがに1週間以上も発芽にズレがあるのは、おかしい。

 もしかして、何かミスしてしまったのだろうか。

 いや、でも、種まきはルイーザに教えてもらって、一緒にやったしな……。


「きちんと魔力は注いでいるのか?」

「お、教えてもらったようには、しているつもりです」


 シーダの苗は、特に何かせずとも勝手に聖女の白の魔力を吸収する。

 だから、朝晩、花に語り掛けるように愛でてあげることが成長につながると僕らは教えてもらっていた。

 その上、ルーナは最近では、学園に登校していくる時も、肌身離さず苗を持ってきていた。

 芽が出ないことに焦って、少しでも苗と一緒にいる時間を増やそうと考えたのだろう。

 だが、それでも、彼女の鉢植えにはまだ芽が出ていない。

 対して、僕の苗は、すでに子葉が出て、さらにそこから4枚の葉っぱが生えてきていた。

 成長は順調と言える。

 正直、ルーナとはかなり差が開きつつあった。

 ルーナにはヒロイン補正があるはずなのに、なぜ……?

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