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えくすきゅーとくっく

若干気怠い体を酷使しながら、夜の自然もまたいいものだーと思いながら屋敷に帰って来た。何で気怠いかって?そりゃぁもう自然の中で体を酷使したからよ。これ今夜あるのかな。ありそうだな。嫁の愛が強いと体がキツいぜ。


「晩御飯何食べたいー?」

「明石焼きときゅうりのビール漬けと酢昆布」

「僕は未だにレイの好みがよくわからないよ」


そういいつつしっかり出してくれるキル好き。猫舌な私に気遣って冷めた明石焼き用意してくれてるとことかポイント高いね。


「んーにしても弱ったなぁ」

「何がー?キルが出来ない事だったら私もできないけど」


明石焼きをすすりながら食べつつ聞く。実は私タコ嫌いなんだけど、明石焼きに入ってるのは許せる。


「僕は何気ない日常って好きなんだけどね。けど、何気ない日常って記憶に残りづらいからね」

「いいんじゃない?私も何気ない日常すきだよ?あと全然何気ない日常じゃない凄く濃厚」

「文にしづらいんだよね。全年齢用だから濃厚描写できないし」


急にメタいこと言い出したわねあなた。


「よし。僕は迷ったらサイコロを振るようにしてるからね。1d6で振ってそれで何するか決めよう。依存はさせてるからどんなイベントが起きても平気だしね」

「んんんんまぁもうキル以外には惹かれない」


私の言葉に満足したのか、キルはそんなにない胸部に手を突っ込み木製のサイコロを取り出した。毎晩見てるとはいえ若干服の隙間から見えかけて赤面。きゃっ///。…男子高校生かな?




「というわけで料理をしようか」

「思ってたより平和」


ころころーって心地いい音が聞こえるーと思ったら視界が急にキッチンになった。しかも私裸エプロンにお着替えしてる。…メイド服の方がよかったな。


「しょうがないよ。1は料理で2~5は町。6は侵略で1が出たんだ。メイド服はまた今度ね。ロング?ミニ?」


わーお急に6でやばいのぶっ混んでくるね。ダイスの女神が気まぐれで6にしなくてよかったよ。あ、ロングスカートでお願い。寒いから。


「完成品を出す事も出来るけど、たまに一から作ることもあるんだ。軽く趣味だからね」


料理できる女の子はポイント高いよ。私?…もやしを醤油で焼いたら美味しいんだよね(遠回しな自白)


「この世界も地球と食材はそんなに変わらないかな。一部ファンタジーっていうものも混ざってはいるけどね」


キルはまな板に色違いの各種野菜や脂身が全然見えない肉、そして最後に牛乳で人参を形したゼリーみたいなものを取り出して見せてきた。やば。ぷりんよりぷるぷるしてる。


「ちなみに私はカラメル苦いのでプリンが嫌い」

「誰に向かって言ってるんだい?」


自分がお子ちゃま味覚の再確認ってとこかな。


「そんなに料理の経験ないみたいだから、切って焼くだけの献立だよ。はい包丁」


両手に持って呪詛を唱えたら悪魔が出てきそうな禍々しい包丁を渡された。いやナイフじゃんこれ。


「そんな見た目でも初心者用のお助け機能がついた優秀なナイフだよ」


ふぇー。絶対に指切らない機能とか?


「呪文を唱えると悪魔が出てきて対価で手伝ってくれる」


それ対価としえ命要求してくるでしょ最後の晩餐になるやつじゃんそれ。


「まぁ、無理そうだったら僕が後ろから手を回して一緒にしてあげるよ」


そういうとキルはりんごを取りだし1chぐらいのサイズで皮を向き始めた。いいよねーあれ。できる人憧れる。

…しかし、無理そうだったらキルが手伝ってくれるのか。

私の背後からキルがぴったりくっついてきて、すぐ横にキルの顔があって私のうなじとかにキルの吐息が掛かって下半身も密着してキルが私の両手を取ってそれで───


私は自分の指を切った。




「いやぁ。煩悩に呑まれ過ぎてて面白かったよ」


私が悲鳴をあげてからキルが治療するまで約0.02秒。プロのFPSプレイヤーもびっくりな反応速度だ。世界狙える。

いや待て。もしかしたら0.02秒と見切った私の方が凄いのでは?ふぁーこれはレイちゃん実質キル越してるわ。敗北を知りたいわー。


「へぇ?」


一人でキル勝ち誇ってるとそれを察知したキルが不敵な笑みを浮かべて軽く睨んできた。

ぞくっとしちゃう。


「ごめんなさい許して許してください私が悪かったですすいません」

「ふふっ。僕だってその程度の冗談で苛めたりしないよ」


最も、今は機嫌が良いからだけどね。とキルが小さく呟いたのを私は聞き逃さなかった。やだ暴君。


「この程度が許されなくて最初どれだけ苛められた事か…」


調教され始めた頃は、どんな些細な事でも汚点にされて追加でお仕置きされたりしたもんなぁ。今みたいにちゃかしたり冗談なんて絶対言えなかったから、性格抑えるのが私にはキツかったなぁ。


「絶望と支配のためには必要だったからね。壊そうとした僕だから言うけど、よく人格壊れなかったね?」


壊そうとした僕が言うのもアレ、とか今は反省してる風なの言わないんですね。天下のキルにとっては全ての行いが許されるだろうからねそうだろうね。


「んーメンタルは私強い自信はあったよ?何があっても我を貫くぞーって感じで(※貫けませんでした)。一人に依存するなんてありえない、って性格は、徹底的にキルがいないと生きていけない、って感じになったけど、それ以外は今まで通りだよ」


変わったのはキル第一ってとこだけ。それ以外の人間として割とどうなのって性格はそのまま。…やっぱり一から再構築してもらったほうが良かった気がするなこの捻くれた性格。世界の半分を上げるから仲間になれって言われたら半分もらうし、私の命か全人類の命かって言われてら全人類を差し出す。私だけになったらどのみち生きていけないのでは?レイは訝しんだ。


「レイは今の人格でいいよ。だからこそ好きなんだから。…あぁそれと、さっきの冗談は許すけど、意識し過ぎで怪我したのは許してないからね」

「…ほわい?」

「僕が許可してないのに自身に傷を付けるとはいい度胸じゃないか。これはお仕置きだね」


にっこりと、満面の笑みでこちらに迫ってくるキルを。

私は涙目で、ひきつった笑みで迎えるしか出来なかった。


裸エプロンって普通に下着姿より恥ずかしいかもしれない。




「私も変わったなぁ。今までだったら、自分さえ生きてれば他はどうでもいいって感じだったのに」

「我が道我が信念を貫くってタイプだね」

「そーそー。学校とかでもグループに混じりにくくてさー。ルールを押し付けてくるリーダー格の人とは大体仲良くなれないしー。まぁ一人でも平気なんだけど」

「僕にもそんな時期があったね」

「今は違うの?」

「押し付けてくる人を殺すよ」

「なるほど怖い」

「そのための力だよ。欲しいものを手に入れるための、無頼の力さ」

「…キルってさー。それなりに長いこと生きてるよね?」

「そうだね。4ケタはいってるんじゃないかな」

「今までに愛した人っていなかったの?」

「何?嫉妬かな?」

「純粋な興味だよー」

「そうかい?…まぁいないね。レイが初恋だよ。最初で最後だろう」

「…普通に改めてきゅんってしちゃった」

「乙女だね。さ、休憩もここらへんでいいだろう」

「…もうちょっと休ませて?」

「だぁめ」

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