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ファースト・アウト

やぁ。

レイちゃんだよ。

あらすじから行こうあらすじから。私の中では一区切りついたからね。


私、兎刻零は、異世界でキルの奴隷になりました。まる。


………やばい詰んだこれ?


いやいやいや待って待って。簡潔過ぎて三行より圧縮されちゃってるからそう見える文になっちゃったんだそうだきっとそうに違いない。


今度はもうちょっと解凍して…。


地球にて死んだ私は異世界にチート級のステータスを持って降臨!しかし更なるステータスを持ったキルに屈服させられ、生涯逆らえない奴隷にされてしまった!


更に詳しく私の絶望的状況が描写されてんじゃん!三行でもないし!


いやまぁ、いいけどさぁ!キルちゃん美少女だし!


成したのだ。後悔などない!


はいもうあらすじ終わりー!閉廷!以上解散!


…というかいい加減私のキャラ固めないとやばいわ。キルは定まってるけどレイちゃんはふわっふわしてる。




「散歩行こうか」

「マジで!?」


隷属させられてから約三週間。今日も今日とて[れいのいえ]とクレヨンフォントの看板が引っさげられた人小屋(二畳間)で丸まって寝てたら、初めての外出のお誘いが来た。

ちなみにこの犬小屋、キルの屋敷の普通にそこそこ大きな一室の中で、オブジェクトみたいな感覚である。

キルは洒落みたいな感覚で用意したらしいけど、私は狭い方が落ち着くので普通にここで生活している。なおキルは犬小屋モドキで生活する私を愉悦の表情で見ていた。こわ。


「ほら、定期的に散歩させなとストレスが…」

「それはもういいよ犬じゃないって!」


犬以上の知性はあるよ!多分。


「まぁ散歩っていってもここ周辺で、誰かに会うとかはないけどね」

「それでもいいよ十分ありがたい」


インドアな私だったとはいえ、たまにはお日さま拝みたいね。運動もロクにしてないから太ったりしたらヤダし。

…唯一の運動でかなーり動いてるけどね。毎夜。


「じゃ、僕も準備してくるから、先行ってて。玄関には通じるようにしておいたから」

「はーい」

「モンスターが入れないわかりやすいバリアで線引きされてるから、そこで待ってて」

「はーい」




いつもは玄関と念じても繋がらず、繋ごうとしたお仕置きをされるんだけど、キルの言った通り今回は玄関に通じた。私のイメージを反映してるのか、日本の一軒家の玄関みたいな感じが再現されてる。靴棚に私の靴入ってるじゃん。相変わらず優秀。

この優秀な繋がれる部屋は基本なんだってある。キッチンとかリビングがあれば、宝物庫や国会議事堂もある。おかげで私は完璧で幸福です。

本屋を願えばいくらでも本が手に入るので、暇潰しには困らない。これ私が死んだあとのも入荷されてるんだけど…。


結構久々に外に出ると、まず見えたのは圧倒的な大自然だった。見上げても先端が見えないぐらい葉が生い茂っている大木がところ狭しと生えていて、自然の雄大さを知るとともに人間の小ささを思い知らされた。ちなみにこの大木達、直径2mぐらいある。やばい。

その大木達は、私が出てきたところをぐるりと囲むように生えている。後ろを見て出てきた所を見てみると、ただ扉があるのみだった。

その扉から5mぐらいで、ぐるりと明らかにバリアなバリアらしきバリアが見える。白い六角形が膜になって連なってるみたいなの。そこからまた5mぐらいで大木達。つまりこの直径10mが今の私に許された行動範囲内ね。


「んーにしても…じぇーぴーじゃ見られない光景だなー。景色とかあんまり何も思わない私すらこれはくるものあるねー」


感無量。

じぇーぴーはjp。つまり日本。私はじゃっぷって読んでる。差別用語らしいよ。知らんけど。


「これは深呼吸したら空気がおいしい奴では?というかほんと自然のみだー。動物とかおらんのですか」


ヌッ。

大木達の間から私のリクエストに応じティラノみたいな顔したのがでてきた。なお顔のサイズは2mぐらい。端的に言ってやばい。

スッ。


あっ、目があった。


……………………………。


「あー…本日はお日柄もよく…」


ヌッ。


…頭消えた。どっかいったのかな…。


………漏らしてないよね…?


「おまたせ」


恐怖で足がガクガクしたりするどころか指一本動かせない中、自分が漏らしたのかを心配しているとキルがやってきた。

待ってたんだよ…この時をよぉ…!(涙目


「きききっきるっ!何か私くらいの顔した奴が今こっちぬっってぬっって!」


キルが近くにいるという安心感から金縛りが溶けたので、キルに駆け寄り肩を揺する。

大丈夫。キルのそばなら安心だ。私の嫁ならだいたいなんとかしてくれる。


キルは涙目で焦っている私を撫でつつ、面白そうに見てきている。おーよしよしとか言いそう。余裕だな!


「んー多分スロースじゃないかな。草食だよ」


マジで!?あの顔面体格骨格で!?


「ほら、ここの木は幹が立派だからね」

「しかも草食ってあの大木食べるの!?」


幼少期どうしてるんだろう。はむはむして食べるのかな。そう考えると何か可愛いな。でもこないで。


「結構人懐っこいから慣れると可愛いけどね。さて、散歩、いこうか」

「顔すりすりされたら私の顔すりおろされそうなのに慣れはしない…。目的地とかあるの?」

「風の吹くまま気の向くまま」

「無計画了解」


キルがいつの間にか持っていたリードを引きながらバリアに向かい、これまたいつの間にか付けられていた私の首輪を引っ張る。待ってこれいつ着けたの。


「ここらへんは静かでお気に入りなんだ。肉食もそんなにいなくて平和だしね」

「へぇー…。でもそういうとこって人の手が掛かりそうじゃない?開拓だーって。肉食は目の前にいるけど」


キルは緩くリードを引きながら上機嫌な声で語りかけてくる。

確かに静かだけど、鳥のさえずりや木の葉が風で揺らめく音は聞こえる。心地よい静けさだ。

開発は…まぁ自分で言っといてアレだが無理だろう。この大木とかもこの世界の人間なら切り倒せるかもしれないけど、やばい管理者が目の前にいるし。


暫くキルのリードに従って歩いていると、水の流れる音が聞こえてきた。

眼を凝らして見ると、前方に若干小さい濁流が見えた。


「落ち着く場所でしょ。考え事とかをする時はたまにここに来るんだ」

「へぇ…キルが考える事とかあるんだ。実行する力だいたいあるからとりあえずやる!って感じだと思ってたけど」

「僕だって実行する前に考えたりするよ。夜の内容とか」

「考えないで!いやもっと考えてハード過ぎるよ今!」

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