賭けバニー
一週間後
「んんっ…んー…」
いつも通り、昨日の惨状なんてなかったかのようにキレイに整えられたベットの真ん中で私は眼を覚ます。近頃はキルの寵愛にもようやく慣れてきて、やっと昼頃には起きれるようになってきたのだ。うーん普段の休日に起きる時間だぁ。
いやぁ、プロポーズ受けてからの三日ぐらいは天国に見せかけた地獄だったね。事終わったら大体気絶するように寝るから、起きたら夜になってて、お風呂入ってご飯食べてまたベットへーなんてスケジュールだった。っふ。わからされたぜ。
お陰で私はもう完全にキルに依存していると言ってもいいだろう。ここで依存してるのが快楽じゃなくてキルなのが大きい。あの娘うまくやってんな。お陰で私は寝ても覚めてもキルの事が頭から離れずずっと心臓のドキドキが止まらない。これが恐怖じゃないんだったら紛れもない恋心でしょ。恋心だよ(ノリ突っ込み)
「っま、依存に悪い気はしないけどねー。生きがいって言い換えたら世間ウケもいいかもしれない」
ぴょん、とベットを飛び降り、ベットの側の机に置いてあったタオルで顔を拭いつつ扉に向かう。ベットの後片付けは気にしない。キル曰く、アレは魔法のベットだからほっといていいとの事。魔力を注ぐだけで清浄、整頓、整備、迎撃、索敵、録画、保存、全てをこなす便利な物らしい。ちょっと後半何言ってるかわからなかった。
扉を開け現れた銭湯で、適当に身体を洗い湯につかる。酷使された体の疲れが取れていくのがわかり気持ちいい。
「ふにゃあああぁぁぁ…潜って一息…先に行ってて…」
上がって手早く拭いて置いてあった服(バニースーツ。ステッキとお酒乗せた銀のトレイ付き。網タイツではなく生足魅せるタイプ。網タイツではない。網タイツ(ry))に着替えて扉を潜る。昼食の時間には間に合ったらしく、やっぱり黒づくめの格好をしたキルがフランスパンサンドイッチを頬張っているところだった。
キルの向かいの席は空いていて、私の好きな焼いただけのシンプルなお肉とご飯(ご飯の上にお肉乗せてないのがポイント)が置いてあったが、スルーしてキルの膝の上に乗る。…ステッキとトレイどうしよ。
「おはようレイ。お昼に起きたのは初めてだね」
「おはっよん。まぁ流石に少しは慣れてくるって。お酒飲む?」
私が膝に乗った事に対し、特に違和感覚えてなさそうなキルにトレイのお酒と思わしきものを勧めてみる。
「僕もそんなにお酒に強い訳じゃないから遠慮しとくよ。そっか。慣れてきたかぁ。今夜からもうちょとイジめてもいいかな」
「止めて下さい死んでしまいます」
快感でドロドロに理性溶けてると自分が自分じゃなくなってくるような気になってくるんだよね。そこで快感受け入れてキルに身を委ねたら最高な事になりそうだけどレイちゃんは意地っ張りなので我慢します。勝ち逃げは許さんぞ。ネクストゲームあくしろや。
「まぁそれはそれとして。折角お昼に起きたんだし、何かするかい?街に出るとかじゃなければ何でもいいよ」
「私としてはそれとしてって感じで軽い扱いにして欲しくないんだけど…まぁ置いとこう。折角お昼に起きた事だし、恋人っぽいこと色々としたいなー」
「恋人っぽいこと?」
「そそ」
だって恋人っぽいこと寝室しかしてないじゃん。その言葉は飲み込んだ。
レイちゃんは乙女なので。実は恋人っぽいあまあまな事に憧れてたりします。主人と奴隷な関係だとしてもそれを望んでもいいじゃない。だって女の子だもの。
「ふぅん…別に僕は構わないけど…恋人らしい事って言われても特に思い付かないかな。今までいたこともなかったし」
キル思案顔で私の頭を撫でながら言った。さてはこのバニースーツも感覚共有されてるな。頭が何か普通以上に気持ちいいぞ。
さて。キルの初めては私カミングアウト貰ったし、前世で蓄えたザ恋人ムーヴ。色々やってもらいますか!
1
定番テンプレ雛型お約束。膝枕。
「…何だろうねこの脚に負担掛かりそうな座りかた」
「正座だよ正座。ほら頭撫でて~」
キルちゃんの柔らかいお膝に頭を乗せた私は大変満足していた。キルが優しく撫で始めて更に上機嫌になる。
「はぁ~やっぱ一回はやらないとねー。これやらないなんてチュートリアルすっ飛ばすようなもんだよ」
「問題無いんじゃないの?」
「だからチュートリアルすっ飛ばすようなもんだって」
別にそれっぽいだけでなくてもいいし。というか普通にこれ寝づらいと思うんだよね。キル細身だからそんなお肉付いてないし。やっぱ普通の枕が一番では?
「というか思ったんだけど」
「うん?」
「これって何で膝枕って言うの?腿だよね、使ってる部分」
「貴様、私が中学生の時喧嘩で友達止めた原因を軽々と…っ!」
マジで卒業まで口聞かなくなったんだよね。
「ほう。主人に向かって貴様と言う口はこれかな?」
「んあ"。じたひっはらないふぇ」
「…こっち進めるのもいいかもね」
「ほわ」
こわ。
2
「さては恋人っぽいことってあんまりないな」
「一個でもうストック切れなんだね」
いやあるにはあるんですよ。耳かきとかポッキーゲームとか。でも耳かきは人に耳弄られるなんて私が怖すぎて無理だし(舐められるのは慣れた)ポッキーゲームは企業戦略に巻き込まれた様で気に食わない。心狭いな私。あ、誕生石ってあるじゃん。あれも企業戦略で実際存在しないよ。夢がせまばりんぐ。
「マズい。このままでは作者が行き当たりばったりで書いてる駄目な人間だとバレてしまう」
「僕の前で別の男の話をするとはいい度胸じゃないか」
「反応するとこそこなの!?」
待って抱えようとしないでまだ夜じゃないから。
「っはそうだゲームだゲーム!一緒に遊んできゃっきゃうふふってのがあるじゃん!聞いてますかキルさん!」
「ふむ…まぁいいか。まだ明るいしね。一応一通り出せるけど何のゲームがいい?」
出せるんだ。というかわかるんだ。あ、いや記憶読んでるらしいから多分そこからでしょ。
何か二人で遊べるなおかつあんまりゲーム知らなさそうな人とでも楽しめるのってあったっけ。
思考しながらもキルが食べてるフランスパンサンドイッチを無許可だけど食べる。やだ、これって間接キス…(今更)
「っむ」
「何か決まった?」
「このフランスパン堅くない…」
「僕は柔らかいフランスパンも認めるタイプだからね」
なんで。あの顎持ってかれそうな堅さがいいんじゃないか。
まぁそれはそれとして。
「よし、チェスしよチェスー」
「チェス?ああ、これなら似たようなのこっちにもあるから簡単だね。…電子機器とかの方が大多数にとっては面白いだろうに、何でチェスを選んだのかな?」
「うん。チェスしてる女の子って理知的で可愛いじゃん?」
「やっぱりそういうことか」
「あっ私は結構できるんだけど、始めた理由はチェスできたらカッコよさそうだからだよ!」
「うーんレイらしいね」
なんだその反応は失礼な。いいじゃん。物事を始めるのに理由なんて些細な事さ。こういった好奇心で動かされた行動こそが後々何かに役立つんだよ。知らんけど。
持論にうんうん頷きつつ、キルが出したチェス盤の前に付く。わぁ木製チェスだ。手触りいいじゃん。
「折角だし軽く賭けない?」
「別にいいけど、何を?」
「一敗毎に服を一枚脱ぐ」
「へぇ…自信あるね。いいよ、乗った」
「あったりまえだよ。レイちゃんは常に自信の塊ですよ。ところでキル、ルールブック貸して。流石に最後にやったの昔過ぎて忘れた」
「どうしてそれで自信あるのかがわからない」
2時間ぐらい経過。現在私の0勝4敗…に、今プラス1敗。
「むぅ…紙一重だったな」
「0勝5敗でよく言えるね」
手で器用にコマを操るキルにそう言われる。敗北を知りたい。
私は五回負けてるので剥かれまくった。只でさえ着てるモノが少ないバニースーツだったのも災いした。しかもネクタイ剥かれた次の敗北をでニーソ片方脱ごうとしたら、それ脱がなくていいから次指示ってことになって、結果的に私の格好はウサギカチューシャに白手袋、ニーソのみだ。多分これ大事なところ守れてないと思うんですけど。
「ほら、流石にそれだと風邪引いちゃうでしょ。上着てね」
「これは気遣った優しさなのか服を返してくれない厳しさなのか」
「裸パーカーっていいよね」
「違った欲望に忠実なだけだこのご主人」
キルが私を見る目が完全に捕食者のソレになっている。私の格好的には結構あってる気がするこれ。
哀れか弱い兎のレイちゃんは、怖い狼のキルに食べられてしまいました。14へいけ。




