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ごちゃまぜ闇鍋

『餅つき大会のお知らせ

皆様におかれましては、ますますのご発展餅つき大会しまーす!

場所は月面───はギルマスに止められたのでギルド前!

参加費無料!手ぶらでOK!

材料はサミオイ産の上等なもち米だ安心しろ!

日時 明日夜 雨天決行 W○rd完璧に理解した お祭りハッピより』


そんな手紙が張り付けられた回覧板がお家(()小屋)に届いた。


いや今更回覧板て、私は誰にどうやって回せばいいのと、お届けしてきたカクカク動く人形にツッコんだが、お人形さんはその場でキラキラ輝く光となって消えた。ひゅー!ファンタジーだぜ!


まぁ最近も暇してるし行くに決まってるけどね。


そう心で思った途端、回覧板が機械的な音を立てはじめ、小さく畳まれたかと思うと最後にはメカメカしい招待状に変化した。ひゅー!未来的だぜ!


なお当然の如く手紙の印刷はズレ、バランスが悪く読みづらかった。W○rd完璧に理解して欲しい。



当日。


超大型台風が直撃していた。


「ひゃっはー!楽しいなぁ!やっぱ男はいつまで経っても雨に降られるとテンション上がるぜ!お前は大丈夫かぁスキンヘッドォ!」

「えっ!もしかして髪形崩れてるか!?」

「崩れるもんがねぇだろお前!」


「おお!神がお怒りじゃ!今すぐ贄を捧げねば!」

「もち米ならいっぱいあるけど」

「頭おかしい奴らも生贄として使えるぜ」

「神程度に恐れんな堕とし殺せ!」


こいつら人生楽しんでやるな。


体重ギリ40kg台の私が吹き飛ばされそうな風(何を思ったのか凧揚げをし始めた奴は飛ばされて行った)、3分放っておけば学校のプールが満タンになりそうな雨量、海外のディスコでもここまでの音量は出さないだろうという騒音。


まるでこの世の終わりのような天気だったが、それとは正反対に問題児達の頭は快晴だった。


「おやレイさん。傘もささず大丈夫ですか? ちょっと狭いですが、私の傘に入ってもいいですよ?」

「や、ごめん。私キル以外の人と相合傘するとこれ以上の地獄になるから」


というかこの地獄を傘一つでどうにかなるはずがない。

カンガルーがその手でどうやって傘を持ってるかも、どうやって傘をこの風の中保持してるかも、この強風の中で壊れない傘にも興味があるけど、問題はそこじゃないのだ。


というかカンガルー、傘に入りきってない尻尾が悲惨なことなってるよ。


「っしゃー!お前らぁ!もち米の準備できたから突き始めるぞぉ!」


おっと、この空気の中だが、ファンタジー餅つきはこのまま始めるらしい。雨天決行にも限度があると思う。


私の知っている餅つきは、例に及ばず木の臼に、大量のもち米が湯気を立て、横には水を加え混ざる人と槌で餅を叩く人がいる。


で、目の前はファンタジー餅つきはどうか。

木の臼。これはサイズが3m近くあることを除けば他に言うことはない。地球の通りだ。湯気を立てる大量のもち米。これも大雨の中屋根も用意されてないので、水に浸かっていることを気にしなければOK。臼に溜まった雨が沸騰し始めてるのは納得いかないけど。


横にいる人。まず水を加えて餅を回す係。この天から一生水が供給される中その係はいるのかと思ったけど、彼女(幽霊)はひと回しするたびに餅にはあらゆる名画が、私にはわからない超絶テクで描かれていた。次の一突きが来るその刹那、その一瞬だけ存在できる儚さこそが芸術だと言いたいのだろう。この係いらない。


横にいる人2。こちらは主催者であろうお祭りハッピの人だ。こんの騒音の4割は彼一人で出してるレベルで声を張り上げていた。なお持っている槌はピコピコハンマー。ピコっというかるーい音と似合わない衝撃波を出し、3mに広がる世界中の名画と化した餅を叩きつけていた。


「…ヨシ!日本伝統に則ったよくある餅つきだね!」

「グレネード…?」

「ついに脳まで調教対象にされたか…」

「そこ外野二人、うるさい」




最近私は格ゲーにハマった。

何かミスっても味方のせいにすることができる5対5のMOBAとは違い、怒りをぶつける対象が自分しかいないので私にできるかが懸念事項だったけど、これがまた意外と続いている。


『フジヤマゲイシャ!クウソクゼシキ…一昨日カモーン!』


ふふふ、このエセジャポン忍者も中々使えるようになってきたな…。練習の成果が出る事はいつだって嬉しいものである。


となると、早速その練習したものを見せつけたいわけであるが…。


私はソファーに寝そべった体制のまま、私のお腹の上に腰掛けるキルをチラッとみる。


「きるきるー、格ゲーとかってやる?」

「付き合おうか」


そういうことになった。



私の本日の服装、ドレスアーマーのスカート部分からコントローラーを取り出したキルと通信して、試合開始。


私が使うキャラは練習の通りエセジャポン忍者。素早いスピード、高い攻撃性能。そして「えっこいつそんなに減るの?」というレベルでHPが低い紙装甲なキャラクター。


それに対してキルは──


「…えっちなキャラ使うじゃん」

「いやらしいをえっちというのは止めようね、レイ」


強力な遠距離攻撃を誇る銃キャラだった。これがどういう事になるかというと。


「近づけない!なんで永遠に銃撃てるのさそのキャラ!」

「読みあいだからね。ちゃんとリスク払ってリソース回復してるさ」

「あーガードの上から削られる!そのよくわかんないコンボも止めて!」

「レイはしたいことが分かりやすいからね」

「そもそも私の心読める相手に読みあいとかないじゃん!?!?!?」


その後スマ〇ラでアイテム爆弾オンリー吹っ飛び率200%のお祭りモードを、ラキも巻き込んで開催した。



この世界には遊園地があるらしい。もちろん、例によって頼もしきバカ(異世界人)の手によって作られたものだ。

そんな明らかなデートスポットがあるのならば、一般的リア充である私が向かわないワケがない。


「ふぅ~!テーマパークに来たぜ!テンション上がるな~!」

「はいはい。はぐれないように手は繋いでおこうね」


ぎゅっ。ただの恋人つなぎじゃなく腕ごと絡める奴だった。えへへ。


さて、当然のようにプレミアムチケットを(キルが)買い、どの乗り物だって乗り放題だけど、如何せん時間は有限()である。この遊園地だって、スタッフが気分じゃないと開いてくれないので、明日もやってるかはわからないのだ。よって乗るアトラクションにも取捨選択が必要となる。


「まずはやっぱりジェットブースターかな~!ここのジェットコースター、その名の通りジェットブースターを積んでいて、レールから外れて飛び回るコースがあるんだって!」

「ああ、今ちょうど上を飛んでいる奴かな?」


キルの言葉を聞き上を見ると、複数のジェットコースターの車両が空を飛んでいるところだった。うねりながら飛ぶその姿は、どこか西洋龍の姿を彷彿とさせた。あ、爆発した。


「乗り場はあそこかな? 待ち時間も少なそうだし行こうか、レイ」

「私はドラコンになるんだ。そう、あの空を駆け巡るジェットコースターのように…!」

「はいはい。帰ったら変身魔法覚えようね」



「へええコールドスリープワールド!北極をも超えた極寒の世界かぁ~!化かし魔式はぁ~見るものすべてがホラーなモノになると!ま私ホラー嫌いだからいかないけど…。キルは何か気なるものある?」

「この事前にプロテクトしておいた以外の性格が真反対になる反乱車が気になるかな」

「観覧車はデートの定番だね!最後に行こうか!…え~っと、とりあえずパラレルワールドの上映時間が迫ってるし、それかな!」


キルの手を引っ張り急かしてパラレルワールドの上映地へと向かう。


パラレルワールドは入口付近も凝っていて、観客席に近づくに連れて様々な環境、土地、動物などが入り混じるようになっていた。環境破壊や動物保護法に真正面から喧嘩売っている光景はとても面白く、世界を切り貼りしたみたいだよねとキルと笑い合う。



『よぅ、お前ら!俺は時空監視局所属のトレハンだ!今日は時空間で違法な行為をしようとしているらしい…!君たちにはそいつを捕まえる手伝いをして欲しい!』

『ふわーはっはっはっ!ぅ俺様は悪の帝王!エンペラーカイザーキングだ!今日は時空を飛んで、各世界の株を安い内に買い未来で売って孤児院に寄付をするぞ!』

『そんな事はさせないぞキング!国の命令は絶対だ!上位者と下位者の地位は生まれた時に決定付けられる!』

『うるさいぞ!俺様は俺様の好きにさせてもらう!お前らが他の世界にもヒエラルキーを作らなければ、俺様だって悪には堕ちなかったものを…!』


キャスト達の迫真の演技に、私はワクワクしっぱなしだ。途中、エンターテイメントのため私を誘拐しかけてふと隣に座るキルから何かを感じ、隣の子に急遽標的を変えるというアクシデントはあったが、終始私は楽しく参加できた。


「ふぁー!最後びしゃびしゃになっちゃったけど楽しかったねー!」

「どうせならってレイが言うから、僕もそれなりに濡れちゃったよ」


他の客と共に会場から外に出ながらキルと感想会。劇の最後はお約束というか、前列に人には水をぶっかけるものだった。それすらも楽しかったけど、まさかここまで濡れるとは思わなかった。


こういった時、普通の女子は下着が透けるかを心配するけど、私はそもそも最初からつけていなかったので何も問題がない。カバンの中身は心配なので脱水魔法っぽいものをKIAIで再現してどうにかした。


「友達と来る事はあったけどさ、あっテーマパークとかね?まさか私がカップルで来ることになるとは思わなかったなぁ。その頃から人に合わせるの若干嫌になってたし。…今も合わせてるわけじゃないけど」

「ふふ、現実は小説より奇なり、だからね。カップルらしくお姫様抱っこでもしようか?」

「家で散々されてるから今はいいや!また今度、夜にね?」

「レイも最初に比べて強かになったね」

「これだけ鍛えられたら、そりゃね?」




椅子に座るキルの上に、何とかいい感じに座ろうと姿勢を変える、変える、変える。お姫様だっこのように横たわっても。キルと同じように座り抱えてもらっても、はたまた抱き着くように座っても、今日はしっくり来なかった。

まるで猫が自分の寝床を決めるようにくるくると回り、それでもベストポジションは定まらない。これも全てラキのせいだと、この場にいないぐうたら天使に責任転嫁し始めた時、キルが立ち上がり、私を座らせてから私の上に座り直した。


「………!」


この温もり!この柔らかさ!この圧迫感!この視点!


なるほど…これが"ベスト"ってワケね。


満足した私は、今や古の遺産と化したウォアクマンを取り出して音楽を聴き始めた。

久しぶりに更新したぜ!

実はレイキルのノクターンを書こうとしてるんですけど、正気だと書けないので難航してる。

新しいシリーズ書いて出してた(別世界のレイの物語)んだけど、そっちも更新止まってるのは内緒。

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